「学ぶ」という当たり前を脳科学が解明
「学ぶ」、という当たり前の行為は、脳の中でどういう仕組みで実現しているのでしょうか?
玉川大学の脳科学研究所がそれについて興味深い発表をしています。
専門誌への投稿はこちら。
ようは、
学ぶプロセスには、記憶と学習それぞれ別の脳部位での活動が重要、
という話です。
なんとなく自分の脳に収めてもしっくりくる結果ではありますが、きちっと解明したのは意義深いと思います。
特に若いころは、テスト直前に一夜漬けで記憶してしのいでいた思い出があるので、あぁやっぱり身についてないんだなぁといまさらながら自省します。(そもそもテストで追試にならないためなのでモチベーションの問題かもしれませんが^^;)
一応脳科学的な説明も砕いてしておきます。
そもそも脳の中で起こっていることは、ニューロンと呼ぶ神経細胞間をシナプスという接合部を通じて電気信号でつながった構造です。
それだけで知的な判断を行っているのはある意味驚くべきことで(しかも電気消費量もたった20W!)、それを模した脳コンピュータの開発も以前より行われています。1つだけ2015年の記事を引用しますが、個人的な印象としては中国が力を入れているように感じます。
おなじ電気信号を授受する、とはいえ脳の部位によって役割分担(とは緩くネットワークで連結)されていることがわかっており、今回の研究で登場するのは「運動学習」と「記憶」をつかさどる領域です。
発表記事が分かりやすく絵解きしてくれているので、引用しておきます。
ちょっとだけ意外だったのが、丸めると運動学習と記憶が両方必要、なのですが、初期と後期それぞれだけを見ると独立して閉じた活動を行っていることが分かりました。
つまり、リレーのように各部位毎に単体で走った結果を渡しているような動きをしています。
そしてもう1つ興味深いのは、スパイン(spine)というニューロン内にできる突起物の生成です。
要はこれがあると、より脳での神経細胞間活動が活発になる可能性があるわけです。
つい最近も、今回の逆で、アストロサイト(脳内のお掃除など運用を担う細胞)でスパインを除去することで痛みを和らげる動きを突き止めました。
「脳の活動はニューロン間の電気信号がすべてだ!」
と書くと、人類は機械であるという一面的な誤解を与えそうですが、この物理的な存在である「スパイン」の生成・消滅は生命らしさ(?)を感じさせます。
しかも、記憶の過程を経てこのスパインは伸縮することも分かっています。
つまり、脳での活動は、電気信号の授受だけでなくその回路自体も常に改修しているようです。
あえてデジタルコンピュータに例えると、ソフトウェアとハードウェアを常にバージョンアップ(またはダウン)していると見る事もできます。
このバージョンアップする仕組みが、機械と異なる生命の原理につながるのかもしれませんし、または我々がまだ知らない設計図があるのかもしれません。
話を冒頭の「学ぶ」に戻します。今回はマウスですが、とはいえ人類は大脳新皮質という一番外側の部位が異常に発達した生物です。
今後は実験と社会受容が進んで、ヒトでの学習プロセスが解明され、スパインやシナプスの発達度合いを見て「学んでいるか?」を数値化できる日が来るかもしれません。
そんな未来では、一夜漬けは一発でばれてしまいますね・・・。
さすがに脳の中までこじ開けられるのは勘弁してほしいですが、まずは謙虚に一夜漬けをやめて、学習と記憶を繰り返していきたいと思います。
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