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カーツワイルの「シンギュラリティ」最新版その4:生活は良くなっている

カーツワイルのシンギュラリティ本最新版の続きです。

前回の3章は、「意識」をテーマにその技術的可能性とアイデンティティの問題について触れました。

今回の第4章「生活は急速によくなっている(Life Is Getting Better)」を中心にお届けします。

まず、世の中の風潮はむしろ逆とふれます。確かに私も「個人的な感覚として」悪いニュースが増えているのでは?と感じます。

ただ世の中を数字でみると良くなっており、その原動力が収穫加速(または逓増)の法則にあるというのがこの章のメッセージです。

その例示として、教育、衛生、平均寿命、クリーンエネルギー、貧困、暴力、民主主義などの分野での具体的な数字をあげていかにこの2世紀で良くなっているのかを示します。

ただ、なかには例外もあり、輸送時間などは停滞したが、それはフィードバックループが働かないから、を理由に挙げています。

言い方を変えると、その仕組みが働いていれば収穫加速(逓増)の法則で加速的に正のフィードバックが循環するというわけです。

では、なぜ現代が悪くなっていると錯覚してしまうのか?

それは認知バイアスによるもの、と過去の実験も添えて断じます。著作内で何度も引用されているのがスティーブン・ピンカーの著作で、「暴力の人類史」「21世紀の啓蒙」です。

また、「ニュース」という速報性を求めるメディアの性質上、良いものより悪いほうが多い(良い変化は緩やか)ため、我々が目にする回数が多くなるという背景もあります。
この文脈では強く言及してないので補足すると、(広告を生業とした)SNSの普及も個人的には大きいかなと思います。裏のアルゴリズムで嗜好性を読み取り、いったん気になった投稿の関連がどっとタイムラインを押し寄せます。つまりバイアス拡声器の役割を担っているということです。

この負のノイズを取り除いてより良くなっているサイクルに目を向けると、その原動力は情報技術の進化で、これからはナノテクノロジー、VR、生命科学技術などが、収穫加速法則にのっとり、各社会分野での相互フィードバックが期待されます。

そしてなにより、これからの時代でさらに加速力を与えるのがAIです。

過去数十年間の大幅な進歩と、今後数十年間の大きな進化を伴う我々の加速する進歩は、今想像できる範囲をはるかに超えて、ポジティブな方向へと私たちを突き動かすと予測してこの章を締めます。

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