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生成AIと物理学の新たな境地:相転移と革新の交差点

生成AIは、LLM(大規模言語モデル。細かくはTransformerベースのもの)が従来の常識を覆すほどの性能を発揮したことから広まっています。

その1つが「スケーリング則」。従来は、学習しすぎると性能が落ちるとおもわれていたのが「多かろうよかろう」という不思議な結果となりました。細かくは、「トークン」「パラメタ」「学習量」という3要素さえ増やせば性能が際限なく上がる可能性を示しました。1つだけ紹介サイトを載せておきます。

水を冷やし続けるとどこかで氷になり、その物理的性質が急変します。

そういった現象を「相転移」と呼び、まさに今の生成AIがその言葉で比喩されるようになりました。

水→氷は日常でも観察できる汎用的な現象ですが、未知の相転移っぽくみえる現象は、そのメカニズムが研究テーマにされています。
それに対するアプローチは、なにがしかの数学モデルを作って、シミュレーション&検証するというやり方が一般的です。

ただ、この生まれ変わった新たなAIが、従来と別のやり方で解明に貢献しようとしています。1つサイトを紹介します。

ようは、
生成AIを使って新しい相転移解明への研究アプローチを拓いた、
というはなしです。

ざっくりいえば、生成AIがその状態遷移を自動的に生成するフレームワークをつくりました。しかも、事前学習不要なため、手間が相当削減できる可能性を秘めています。

記事ではその用途として、新しい材料の熱力学的特性や、量子システムのエンタングルメントを検出する手法として期待されているようです。

前者で有名な例を挙げると超伝導体です。過去に紹介した関連記事を載せておきます。

この新たな探索手法ですが、突き止めると、重要な「秩序パラメタ」をみつけることにあり、水→氷のケースでは「結晶構造の無秩序割合」がそれにあたります。

それを観測データからパターンを自律的に見出すのが今回のAIにおける役割です。従来はどうしても研究者の仮説に引きずれるため、超厳しく言えば主観的です。(人間だもの・・・)
それが純粋にふるまいだけから偏りを見出すというのはまさにAIが得意とする領域です。

もう少し内部の動きを記述すると、相転移する1つ1つのスナップショットをもとに、秩序パラメタをもとに分類することを行っています。

そしてこの振る舞いは、今の生成AIをけん引する(Transformerに加えた)もう1つの技術「拡散(Diffusion)モデル」ともやや似ています
拡散モデルについて解説記事を紹介しておきます。

つまり、今の生成AIと相転移研究はまさにお互いが相互成長しているような構図といえるかもしれません。

このランデブーがどこまで到達するのか、各分野または横断した研究成果を楽しみにしたいと思います。

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