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「人工脳」への挑戦とカオスの縁

再生技術で医療が進む中、最も難解な「人工脳」に取り組んでいる研究グループがいます。

ようは、
脳内細胞の動きを模した素子で省エネで近い動きを実現することが出来た、
という話です。

脳の中では、数千億のニューロン(神経細胞)が網状に繋がった状態で、電気信号でやり取りしています。

その電気信号も、ある入力基準を超えたら出力をする、というものでピーク(スパイク)な波形になります。

電気信号で反応して動作するイオニクス素子ですが、2021年には人工視覚を目指したデバイスとしても採用されています。

人間の視覚は、境界線を強調する機能があるといわれており、それがこの素子でうまく再現出来ました。これはこれで深堀すると面白そうな仕組みです。

ただ、脳は視覚内での画像処理とは異なり、時系列でも違う信号を受け取るため複雑な処理を行っています。

今回の実験では、脳の短期記憶をつかさどる動きを目指したようです。
記事内にある「リザバー計算」がそれを表しています。

ちょっとわかりにくいので、下記のサイトが参考になりました。

リザバーを貯水池に例えます。そこに石を投げこむと波紋が生じます。
その波紋の情報から元の石を推計しよう、という考え方です。複雑な時系列処理でよく活用されます。

1つの石を投げ入れるだけなら単純ですが、時間経過とともに複数の異なる石を投げ続けると複雑な波紋が出来、こうなってくると処理は複雑です。
今のAI(人工知能)は深層学習が主流で、その時系列処理としてRNN(Recurrent Neural Network)が有名です。但し、一般的には相当負荷がかかってしまうため、リザバー計算が選択されます。(あまり分類にこだわる必要はないですがRNNの1種類と見る事も出来ます)

そういったときに、このリザバー計算は精度だけでなく省エネ化も期待できるので、機械学習を使った技術実装方式で注目されています。

今回興味深いのは、計算方法もそうですが、結果として「カオスの縁」が生じた、とされている点です。

よく人工生命の分野で話題になる用語です。

ようは、
秩序だった領域と無秩序のはざまの領域をさし、これこそが生命であるという仮説も、過去にとある研究者に提唱されました。

スチュアート・カウスマンという方で、生命の起源をテーマに研究を進め、この不思議な均衡状態に注目しています。

あくまで仮説ですが、同じような表現をする研究者はちょくちょく見かけます。

そして、脳の中の神経活動でもカオスから秩序の臨界点で同じような現象が起こることが観測されています。この数年でも近い研究成果が発表されています。

勝手な妄想ですが、人工知能の技法でいうニューラルネットワークだけでなく、人工生命のアルゴリズムとの組み合わせ(または比較)も組み合わせると面白いと感じました。

複雑な脳がより技術的に解明されていくのが着々と進んでおり、今年も更なるブレークスルーを期待したいです。

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