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日本初の科学賞と史上最強の時計

ノーベル経済学賞の発表で、今年度の受賞がすべて終わりました。

ノーベル賞以外だと、最高額としてブレークスルー賞が話題になってきており、両者を併記するとより今の注目されている分野がおぼろげと見えてきます。今年度については概説を載せたので引用しておきます。

実は日本でも国際的な科学賞がいくつかあります。

1つは「日本国際賞(Japan Prize)」で、1985年に松下幸之助の寄付によって創立されました。

2022年の同賞ではmRNAワクチンを開発した開拓者をはじめ3グループが受賞されました。過去に投稿したので引用しておきます。

毎年授賞式には天皇皇后両陛下が毎回ご臨席される、という日本政府としての格式も意識したものです。

実は、それより早く1980年に、日本初の国際的な科学賞が立ち上がっており「本田賞」と呼ばれます。名前の由来は何となく想像できる方も多いと思いますが、本田宗一郎からとっています。
単なる科学技術への貢献だけでなく、「エコロジー」の観点も意識しているのが時代の先駆け的な特徴です。

つい先日、その2022年度の受賞内容が発表されましたので、今回は軽くその内容について触れてみたいと思います。

ようは、
光格子時計と呼ばれる相対性理論の原理を応用して、今の時計で標準となっている原子時計より1000倍の精度を実現した、
という研究成果です。

まず、今のセシウムを使った時間の測り方について復習です。既に解説サイトは多くありますが、時計のSEIKOが出してるのが何となく立場上面白かったので引用します。

ようは、安定した元素セシウムを使って、エネルギーを与えると安定的な周波数を放出するので、それを基準にする、ということです。
古典的ですが「量子論」が下敷きにあります。

光格子時計は、別の元素(ストロンチウム)を100万個の小さな箱(格子)に閉じ込めてその計測平均値をとることで高い精度を求めます。えいやでいえば、1個だけ長い時間をかけてたものを、100万個並列処理してしまおうというアイデアです。


卵の容器のような微小空間「光格子」の模式図(香取秀俊氏/本田財団提供)(タイトル画像も同様)

面白いのが、この性能を測る実験を2020年ごろになんとスカイツリーで行いました。

どういうことかというと、相対性理論によると、原理的にはそれぞれ運動をしている観測者は別の時間を持ちます。ただ、日常のスケールではその差があまりにも小さいため無視することが出来ます。
ただ、GPSのような数百万km以上離れた距離になると誤差が無視できなくなり、相対性理論による補正が行われています。

スカイツリーは約634mですが、この地上と展望台それぞれにこの光格子時計を設置し、1日に約10億分の4秒(4ナノ秒)速く進んでいることを明らかにしました。

ガリレオはピサの斜塔からモノを落下する実験をしましたが(但し著作にはのっておらず都市伝説っぽいです)、令和のそれに近い記念碑的な実験ともいえます。

さて、この光格子時計ですが、例えば地球内部の動きを察知することで火山の噴火や津波の到来観測にも応用が期待されています。

ぜひ今年の本田賞がさらに世界に飛躍するのを見守っていきたいです。

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