見出し画像

再生医療に一歩前進。世界初の脊髄損傷へのiPS移植

脊髄損傷へのiPS移植国内臨床例が発表されました。再生医療関係者は喜んでいると思います。おめでとうございます!

iPS細胞は基礎研究のニュース以外はあまり耳にしなかったので、久しぶりに臨床ニュースを知って素直にうれしいです。
特に、世界で初めて作製に成功した山中教授が、2022年3月末でiPS細胞研究所を退任するという寂しいニュースがあったため、未来が少し明るくなりました。(山中教授はiPSを廉価に提供する財団活動は継続予定)

せっかくなので、iPS細胞の基本を整理してみます。

まず、iPS(induced pluripotent stem cell)細胞とは、多能性のある細胞を特定の遺伝子を組み込むことで「人工的」に作られたものです。名付け親は言わずもがな、ノーベル賞も受賞した山中教授で、投稿時点でまだ所長を務めている研究所のサイトにその説明も載っています。

よく混同しがちなのは、ES細胞です。こちらは受精後6、7日目の胚盤胞から細胞を取り出し、それを培養することによって作製します。作製の手間もそうですが、iPS細胞は患者さん自身から採取もしやすいので拒絶反応がおこりにくいというメリットもあります。

再生医療に期待されている代表的な研究例を挙げておきます。(カッコ内は再生対象器官)

  • パーキンソン病(脳神経)

  • 網膜色素変性症(目の網膜)

  • 角膜上皮幹細胞疲弊症(目の角膜)

  • 重症心不全(心筋)

  • 再生不良性貧血(血小板)

  • 軟骨損傷(膝の軟骨)

  • 脊髄損傷(脊髄)

ただ、下記の記事を読むと、初めは患者本人から作製していたが、相当コストがかかり苦労を重ねているそうですね。
今回の臨床ニュースもその例ですが、ある程度他人からの細胞をストックする方針となり、むしろその品質管理に重きが置かれているようです。

関連でのトピックですが、細胞のデータ管理にブロックチェーンを採用しようとする研究所もでてるようです。

いずれにせよ、今までは山中教授の話題性もあったので、これからどう他の再生医療の研究と差別化するのかはまだ道半ばのようです。

特に再生医療は、ある程度の基礎研究費用を要するため、国家からの補助は必須です。
今回の臨床例がさらに増えて、患者への新しい選択肢として気軽に提供できる社会が到来することを望みます。

最後に、山中教授をはじめとして日夜この新しい研究分野に取り組まれている方に、感謝とエールを送りたいと思います。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?