未来の味覚革命:ナノポア技術とAIが切り拓く「人工舌」の可能性
以前に、味覚をハックする話題を取り上げました。
ようは、
20世紀後半になってようやく味の原理が解明され、それを人工的に表現した試みもすすんでいるよ、
というはなしです。
まだ勃興段階ですが、いずれは他の五感(特に視聴覚)のように人間の能力に近づくか超えるでしょう。
「人工舌」に近づくブレークスルーが最近発表されたので紹介します。
ようは、
ナノテクとAIでアルコール探知を容易にする検査機を開発した、
というはなしです。
ナノテク、と書きましたが、具体的には「ナノポア技術」と呼ばれているもので、次世代のDNA配列技術として期待されています。ちなみにナノは10のマイナス9乗、ポアとは「穴」を意味します。
今回は、細胞膜にナノサイズの穴を持つ生物を遺伝子編集で設計します。そこに電気を流すと特定の物質(分子レベル)だけがこの微細な穴を通過することが出来る仕掛けです。
次に、2つ目の関門として、その穴を通過した物質成分をAI(機械学習)で検知します。
特定の物質をどう絞り込むかで、その液体の添加物・毒・甘さなどを検知できるため、この新しい仕組みを「人工舌」と呼んでいます。
実用面で期待されているのが、「アルコール検知」です。
日本だと警察による検問チェックが有名ですね。従来型の装置は結構重厚で、個人が気軽に持ち歩くことは困難です。
それを今回開発されたキットでパーソナル化が可能になります。
アルコール検査なんて警察以外使わないのでは?と思うかもしれません。
それはそうなのですが、今国際的に問題になっているのが「メタノール中毒死」です。最近もニュースになっています。
アルコール効果を高めるために業者が混入することもあるようで、これを検知する用途としても期待されています。(今回の1stバージョンではまだ×)
社会実装へのフィードバックでその基礎技術の評価も変わってきます。まずは実用面でこのユースケースが良い結果をもたらすことを願っています。
後はそれ以外でこの人工舌をどう活用するかですが、まずはCPG(消費者向け)メーカでの開発効率化が思い浮かびます。
従来のアンケートもよいのですが、甘さなんてきわめて主観的なのでどうしてもブレが出ますが、それを物質の量、つまり定量化出来るとプラスになるかもしれません。
個人的には、人工舌もよいですが、その要素技術であるナノポアの横展開を期待しています。すでに市場としては既に期待されています。
まずはDNA配列解析としての期待が中心ですが、この不思議な穴を使った新しい用途を、今回のように異業種の方が参入して発明してくれることも期待しています。私も思いついたらまた発信してみたいと思います。