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プレスリリースを書く前にして欲しいこと

大手マンションメーカー広報15年、地方の小さなPR会社経営16年のPRプランナーが中小企業の広報PRに役立つ情報を発信しています。

■「プレスリリースの書き方」を教わる前に

先日、初めてお会いした某中小企業の方に「社長から、広報に力を入れるように命じられたので、プレスリリースの書き方を教えてください」と依頼を受けました。

ご存知の通り、「プレスリリース」は自社の情報を広く伝えて知ってもらう目的で発信する公式文書で、企業の広報活動の最重要ツールです。

しばらくこの方の話を聞いていましたが「私は何もわからないんですが社長が言うので・・・」「景気が悪くて・・・」「ネタにできるような話があるかどうか・・・」など消極的な発言ばかりで気が滅入りました。

「社長から命じられたので、プレスリリースの書き方を教えて」という話の展開も変ですよね。普通は「わが社の○○という新しい取り組みを広く知ってほしいので、プレスリリースの書き方を教えてください」と言いませんかね。

具体的な目的(戦略)が不明なまま書き方(戦術)を覚えても意味がありません。何かと後ろ向きなこの会社の広報に私が関わっても、うまくいかない予感がしたので、通り一遍の受け答えをして、やんわりとお断りさせてもらいました。

「プレスリリースの書き方」を覚える前に、「プレスリリースの役割」をしっかり理解してほしいと思います。

■プレスリリースは、完成した料理

プレスリリースというのは、たとえばレストランでいうと完成した料理の段階です。

レストランのシェフがひとつの料理をお客様に提供するまでには、レシピづくり⇒素材探し⇒調理方法の検討⇒味付け・食べ合わせ等の工夫⇒調理⇒盛り付け⇒完成、という工程がありますね。

広報も同じで、プレスリリースを書く以前に、広報戦略の策定⇒情報収集⇒情報分析⇒情報加工という準備工程をひとつずつ踏まなくてはなりません。

■プレスリリースができるまで

「広報戦略の策定」は、経営目標達成のために、広報活動どのように進め、何を得るかを決めることです。中長期的な経営計画や年度計画の中でマーケティングやブランディングの方針を決定されるもので、ぶれることはありません。

「情報収集」はニュースになるネタを探すことです。社内から発掘するのと、社外の動きから探る、ふた通りがあります。

社内では、経営会議や幹部会など重要な会議に広報担当者が出席するか、広報担当役員の権限でその議事内容を把握できるようにしておくこと。また、社内の情報が広報に集まる流れを作っておくことも大事です。良い話も悪い話も、新規商品開発の話もクレーム情報も、あらゆる情報が早めに広報に入ればタイムリーな対応が可能になるからです。

社外の動きからというのは、広報担当者が日々のメディア報道やインターネットの情報に目を通し、消費者の嗜好や競合他社の動きなど社会の情勢をいち早く把握しておき、今、あるいは今後、どんなネタがニュースになるのかを察知しておくことです。企業は社会との関係性の中で存在しているものなので、社会の状況に照らして、自社の情報を社会が求めるニュースとして発信していく必要があります。

「情報分析」とは、そのネタのニュース価値や情報の取扱い方を検討し、発表の仕方やタイミングを考えていくことです。緊急に記事にする必要があるものは「攻め」、極秘に進んでいる案件は漏えいがないよう慎重に「守る」。そのネタはテレビ向きか新聞向きか。地域限定か全国なのか。それぞれの案件を、ニュース価値やタイミングという判断基準に照らして「いつ、だれが、何を、どこで、どのように」発信していくのがベストかを検討していきます。

「情報加工」は、分析した結果に基づいて、よりインパクトが強く、ニュース価値が高まるようにすること。プレスリリースの切り口を工夫したり、画像や映像を加えたり、裏付けのデータを集めたり、専門家のコメントをもらったり、他社情報を参考資料として加えるなどして、ひとひねり、ふたひねりを加えることで、よりメディアに取り上げられやすくするのです。

■周到な準備なしで、おいしい料理は完成しない

こうした工程を経て、準備が整ったところでようやく、プレスリリースづくりが始まります。

「○○月○○日に新しい商品を発売する」といった直球リリースでは、よくてベタ記事にしかならないものが、情報の分析と加工に力を注ぎ、プラスアルファの価値を加えることで、想定外のメディアで紹介されたり、より大きなニュースとして全国に波及していく、そんな可能性も高まるのです。

レストランの料理に話を戻すと、何も工夫しなければただのおいしいハンバーグに過ぎないけれど、ニュース価値が加わると「幻のハンバーグ」「伝説のハンバーグ」「行列のできるハンバーグ」としてお客様を惹きつける看板メニューにもなる。そんな可能性があるわけですね。

広報に取り掛かるときにはまず、自社の経営戦略に則した綿密な広報戦略を立てることをお勧めします。

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