プレスリリースは準備が9割
大手マンションメーカー広報15年、地方の小さなPR会社経営16年のPRプランナーが中小企業の広報PRに役立つ情報を発信しています。
■いきなり書き始めるべからず
自社の新商品や新サービスに関する情報が入ってくると、いきなりパソコンに向かってプレスリリースを書き始める広報担当者がいるんですよね。
何の前準備もなく、ただ入手した商品概要だけを見て書いてもプレスリリースの体裁はつくれます。でもそれを発信しても、多くのメディア取材を獲得し、世の中に情報が拡散するという満足な結果は出しづらいです。
いきなり、リリースの文章を書き始めてはいけません。プレスリリースは、それを書き始めるまでの準備しだいで結果に雲泥の差が出るものなんです。
■プレスリリースは料理の仕上げ段階
A４用紙に印刷する、または記者宛てのメールに添付するプレスリリースは、レストランでいうと、料理をお客様に提供する前の仕上げ段階です。
レストランで、ひとつの料理をお客様に提供するまでには「レシピづくり」⇒「素材選び・素材探し」⇒「調理方法の研究」⇒「味付け・盛り付けの工夫」⇒「調理」⇒「仕上げ」という準備工程がありますよね。
企業の広報も同じように、あるひとつの案件のプレスリリースを書いてメディアに配信する前には「広報戦略の策定」⇒「情報収集・分析」⇒「情報加工」という工程をていねいに、ひとつづつ踏まなくてはなりません。
■「戦略の策定」から「情報加工」まで手を抜かない
「広報戦略の策定」は、自社の経営方針に沿ってどのように広報活動をしていくかを決めることです。会社の中長期的な経営計画や年度計画の中で決定されるものですからぶれることはありません。
「情報収集」は、社内の情報を効率よく集めることです。情報は社内から発掘するのと、社外の動きから探るという二通りがあります。社内からは、良い話であれ悪い話であれ、トップや社内の主要部署から広報へ情報が集まる流れ（ルール）を作っておくこと。社外からというのは、広報担当者が日々のマスコミ報道やネット上の情報から社会の動きをいち早く把握して、今、あるいは今後どんなネタがニュースになるのかを察知しておくことです。
「情報分析」とは、その案件のニュース価値や取り扱い方を検討し、発表の仕方やタイミングを考えることです。早急に記事にする必要があるものは「攻め」、極秘に進んでいる案件は漏洩がないように「守る」。そのニュースはテレビ向きか新聞向きかネット向きか。地域限定なのか全国向けなのか。それぞれの案件をニュース価値やタイミングなどの判断基準に照らして「いつ、だれが、何を、どこで、誰に向けて、どのように」発信していくのがベストなのかを検討していきます。
「情報加工」は、分析した結果に基づいて、よりインパクトが強く、ニュース価値が高まるようにすること。プレスリリースの切り口を工夫したり、画像や動画を準備したり、裏付けのデータを集めたり、専門家にコメントを依頼したり、他社の情報も参考資料として加えたり・・・・など、ひとひねり、ふたひねりを加えて、よりメディアに取り上げてもらいやすくなる工夫をすることです。
■リリースを書くだけなら1時間もあれば足りる
こうした工程を経て、準備が整ったら、ようやくプレスリリース作成が始まります。ここまで準備が整えば、リリースを書く業務だけなら1～2時間もあれば足りるはずです。
「○○月○○日に新しい商品を発売する」といったストレートなプレスリリースでは、業界紙のベタ記事が関の山です。それが、情報の分析や加工に力を注ぐことによって、想定外のメディアで紹介されたり、より大きなニュースとして全国に波及していく、そんな可能性も高まるんです。
■「美味しいハンバーグ」を「行列のできるハンバーグ」にするために
レストランの料理に話を戻すと、何も工夫しなければただの「美味しいハンバーグ」に過ぎないけれども、ニュース価値が加わることによって「行列のできるハンバーグ」「幻のハンバーグ」「伝説のハンバーグ」「日本一のハンバーグ」として、お客様を惹きつける看板メニューにできるわけですね。
「新商品発売」の情報が入ったら、それをいかにニュース価値の高いネタにしていくか、考えに考え抜いてから、書き始めるようにしましょう。何の工夫もないストレートなプレスリリースばかりを量産していても広報担当者としての評価は上がっていきません。
プレスリリースづくりは準備が9割です。広報の知力と腕力が試されますよ。ご健闘を祈ります。
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