酒向浩二「アジアビジネス研究所長の教科書」(元メガBKシンクタンク主席エコノミスト,Ph.D.)

メガバンクシンクタンクを経て、2022年春にアカデミック界に転じたのを機にアジアビジネ…

酒向浩二「アジアビジネス研究所長の教科書」(元メガBKシンクタンク主席エコノミスト,Ph.D.)

メガバンクシンクタンクを経て、2022年春にアカデミック界に転じたのを機にアジアビジネス研究所を立ち上げました。 アジアの政治経済動向とそれを踏まえた企業対応を長年研究してきましたが、引き続き国際情勢をフォローします。 ビジネス実務とアカデミックの結節役を担えましたら幸いです。

最近の記事

ドル高についていけなくなってきたアジア諸国・・・どうなる?

円安フォーカスが続きますが、周辺国を見回すと、短期金利は、米国の5%近傍よりも低い国が目立ちます。つまり、放置すれば、通貨安になる国が増えてきています。 利上げに踏み切ったインドネシアは、例外的と言えるでしょう。 その他の多くの国・地域は、利上げせずに通貨が適正水準で耐えられるか正念場といえます。 円安に続き、アジア通貨全面安、人民元にもプレッシャー、通貨戦争という論調も、大げさではなく、否定できない状況です。 アジアを俯瞰的にみると、円独歩安という構図は続くも、周辺国

    • 円安は続くのか?中国減速でも、アジア経済は底堅いのか?

      GW明けましたが、みなさんいかがお過ごしでしょうか。 おかげさまで、学会の査読論文は掲載許可となり、ほっとしております。また、複数学会に入っておりますので、査読者としての責務も全うし、こちらもほっとしております。 他方、入門用の「アジアビジネス研究所長の教科書」の書籍化は、円安で紙代が上がり、インフレで人件費も上がる中で、諸条件が合致せずに難航しておりまして、ここ3年度なんとか掲載許可されてきた査読論文をベースにした、プロビジネス用で、経済安保×サプライチェーンを別の企画を

      • 書籍化作業のためにしばらくの間更新度低めになりますが、ご容赦ください。

        桜満開に季節、素晴らしいですね! ようやく、新学期が始まります。 おかげさまで、なんとか査読論文が掲載可となりましたので、少しだけ安堵した気分で、新学期を迎えらえます。 続いて、本NOTEで足掛け2年間書き溜めてきた内容を、テキストとして出版する計画を進めています。機関の出版助成が得られるかどうかはわかりませんので、受けらない場合は、kindleで自主出版のつもりです(表紙はあくまでイメージです)。 当面その作業に時間がかかるため、本NOTEの本格再開は、しばらくの間お待

        • 新NISAは、国際・アジア経済を学ぶ機会になりそう

          さて、ようやく後期授業が着地しました。 都内は昨日大雪でしたが、予めリモートに切り替えられた方はよかったとして、かなり物流網が遮断されましたので、対面必須の方や、急増中の外国人観光客、はたまた受験生のみなさんなど、本当にお疲れ様でした。今月中は、しばしお気をつけください。 都内での雪の中での昨晩の雷は自分には記憶がなく、よく北陸は、冬の雷が多いと聞いていましたが、なるほど、これなのか・・・という感慨と、なんだかんだで、子供たちが作った雪だるまは各所にあって、やっぱり、雪も必

          やっぱり、あの人なのか

          今週、参加した識者会合の中で、話題となったのは、やはりあの人には勢いがあり、11月に勝ってしまうのではないか・・・ということでした。米国通も、あの人が有利では・・・という感じでした。 私の元上司のジェトロ元理事で、関西学院大学の前教授をされていた鷲尾先生は、より深い洞察をされています。 実際、当選してしまったら、足元絶好調の日本株は暴落するのか・・・ それとも、FRBに強い圧力をかけて、利下げを急ぎ、米国株は高騰、むしろ、日本株絶好調に追い風か・・・ 他方で、ゴルフで懐

          台湾選挙について思う事

          概ね予想通りと言えるのでしょう。 民進党の頼清徳氏が激戦だった総統選を制しました。 これまで8年で政権交代となっていましたが、今回は、野党が候補の一本化すると一旦合意するも結局合意できず、国民党が民衆党を取り込めなかったことが、敗因でしょう。実際に台湾の大手紙、聯合報のアンケートでは80%超が、野党が統一候補に失敗したことを挙げています。 いずれにろ、今後4年間、民進党の総統の時代が続きます。 頼清徳氏は、中国が、蔡英文氏以上に、独立色が強いと警戒しているとされており、習

          アメリカ株はどうなる?

          新年が始まりましたが、被災された方々には、心よりお見舞い申し上げます。地震は日本に住む限り避けられず、二次災害という見方もできる羽田の事故も本当に心苦しく、とにかく三次災害を回避すべく、自身の持ち場を認識してやるべきことをやって、何かしらの支援をしていければと存じます。 そして、元旦に、資産運用ではご高名な山崎元さんが、亡くなられました。新NISAが始まったばかりでまだまだご活躍されると思っていましたが、残念です。合掌。 その山崎さんの遺言となったのが、オルカン一択・・・

          来年は為替がカギを握る1年になりそう

          さて、クリスマスも終わり、年末年始に入りますね。 まだお仕事が残っている方が多いでしょうし、私もまだ授業を残しており、年初には、期末テストもあり、全くもってまだまだ終わってないのですが、皆様、一足早く、よいお年をお過ごしくださいませ。 来年気になるのは・・・やはり、為替になりそうです。 今日も図書館で顔見知りの学生さんに、「来年1月に日銀がゼロ金利解除したら、急激な円高になって、株価は大きく下がるんでしょうか・・・」と聞かれてしまいました。 日本においても、米国においても

          2024年のリスクシナリオを考える

          かってシンクタンクに勤務している頃、年末は来年のとんでも予想のための会議が開催されてていました。 とんでも予想は、いわゆるテイルリスクで、これが起きたらヤバい!という予想で、2015年には、2016年の米大統領選挙でトランプ政権誕生をとんでもで出したところ、まさかの当選・・・になったこともありました。 もう、事業再編で研究所はなくなり、研究員・エコノミストも三々五々となり、後継会社からとんでも予想は発表されなくなりましたが、引き続き、大胆予想という名称で発表しているところに

          フィリピンとデジャブ感のあるインドネシア大統領選

          12月7日(木)が、書籍の刊行日で、都内の官庁とメディアなどで既知の方を回らせていただきました。お時間を頂いた方はどうもありがとうございました。 その中で、静かに、日本において新移民ともいえる高学歴外国人が増加、それが、日本国内で受け入れられており、もしかすると、いずれ、東京都知事が外国人になる?なんて、まるで、イギリス張りことが起きるのでは・・・などの話もありました。このあたりのネタは、また追ってフォローしたいと思います。 さて、インドネシアですが、ジョコ政権が2024

          本日、中国の産業振興策に関する学術単著を発行いたしました。

          皆様お元気でしょうか。気がつくとすっかり、寒くなってしまいました・・・。マスク姿も増えてまいりましたが、よい師走をお迎えください。 ようやく、学会に査読論文を提出し、NOTE再開の運びとなりました。これから、非常に厳しい査読者の先生方からのご指摘をコテンパンに受けながら、それを冷静かつロジカルに押し返せるか、長い、長い、押し相撲が始まります。果たして寄り切れるのか・・・、寄り切られるのか、うっちゃりか、毎回、物凄いエネルギーを費消しますが、春が来るまで、長い長い校正期間が続

          25年後の日ASEAN関係を考える その3

          前回の続きです。 第五に、現在多くのASEAN諸国が抱える、国内における大都市と地方農村部の格差の是正は、25年後も遅々とした進展が続く状態にとどまると予想します。 大都市圏の既得権益層は、地方振興に全面的に熱心とは言い難いためです。それでも、この25年で中国が実現したように、地方都市まで高速鉄道の整備は進み、教育・医療へのアクセスも改善するとみますが、格差是正のための財政調整は不十分なままではないでしょうか。 第六に、ASEANは、EUのような完全な経済統合は目指さな

          25年後の日ASEAN関係を考える その2

          前回の続きです。 第三に、ASEAN大陸部(図表2)は、中国経済との一体化を強めていくと予想します。筆者は、米中対峙は超長期化するとみており、25年後、相当程度デカップリングは進展しているとみています。 米中デタントも一時的にはありえますが、ASEAN大陸部は、民主化の遅れもあって、地理的に隣接する中国との経済的な一体化をより一層強めると見込んでいます。 そのことは、ASEAN大陸部が世界の工場の地位を得るうえでは、必ずしもマイナスとはならないでしょう。インドもまた、A

          25年後の日ASEAN関係を考える その1

          今年は、日ASEAN友好協力50周年です。 我々は先人の尽力によって、素晴らしい遺産を受け取ることができていますので、それを踏まえて、本来はこれからの50年について考察すべきすが、やや長期に過ぎます。 先般、小職より25歳年上の大先輩と共にASEANの政治・経済動向に関するセミナーに東京都内で登壇する機会がありました。50年後は不可能ですが、25年後の考察であれば、予想が当たったのか否か、健康に留意することで自分自身が確認できます。そこで、50年後の半分の25年後の日AS

          経済安保の影響を、基礎ミクロ経済学の視座で考える

          後期から、本業のアジア経済論はそのままに、基礎マクロ経済学、基礎ミクロ経済学も担当していますが、これらのベーシックな部分が、経済安保の時代でどう変わるのか、頭を悩ます日々が続いています。 まず、基礎ミクロ経済学では、生産可能性曲線という概念が出てきます。これは、無人島に2人(Aさん、Bさん)が漂流、魚か椰子しか食料がない状態で、食料の最大化を図ろうとすれば、Aさんが魚取るのが比較的得意で、Bさんが椰子を取るのが比較的得意なら、Aさん、Bさんが、自前で魚と椰子をそれぞれ取るよ

          タイとベトナムの競合、勝者はどちらなのか?

          先週、東京で講演させていただく機会がありました。NNAさんの主催で司会をThe Daily NNAタイ編集部編集長の小堀栄之氏が務められ、タイ政治を、元大阪外国語大学の学長を務められた赤木攻先生、アジア経済を小職がお話させていただきました。 東京の会場には40名、オンラインでは400名の方の申し込みがあり、アジア駐在の必須アイテムであるNNA主催とあって、多くの駐在員の方にもご参加いただきました。この場を借りて、厚く御礼申します。 小職の内容のエッセンスは、こちらの通りで