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:妄想歳時記:さぶイボたてて、 炎天下の平野。

残る暑さは、秋の知らせとは裏腹に長く続く。
地上には、カラカラに乾いたセミの脱け殻。
地中の出来事をすっかり忘れたセミは、
朝から手加減なしに今だけを鳴き続ける。
うつせみの世は短い。

平野の大念佛寺。
広い境内に大阪府下最大の木造建築。
「万部おねり」では、人があふれていたけれど、
普段はひっそり。
炎天下では、なおさら所在ない。
8月、年に1度、幽霊画の特別公開。
さぶイポ立つほど、ゾッとする。
幽霊は、人間臭い執念でドロドロと、
この世の出来事が忘れられない、人間の抜け殻。

寝苦しい夜、深夜のテレビは怪談番組。
さぶイボと寝汗を繰り返し、ダラダラと眠れない。
ただ真っ暗は恐いから、つけっぱなしのテレビ
やがて音声は消え、やっと眠れたと思う間もなく、
手加減なしのセミの声で、もう起こされた。

月刊誌「大阪人」/2009年8月号 掲載
おおさか絵暦
イラストレーション&文⚫︎中田弘司

発行:大阪都市工学情報センター


2009年の掲載情報なので、改めて平野の大念佛寺HPを確認すると
2022年はTVで紹介はあったが幽霊画の公開はなかったようです。

現在は、年に1日だけ開館する幽霊博物館にて幽霊画を公開しているようですね。


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