後継者のみなさん。家業だからこそ、家業外の世界を経験してください。そこで得たものや、そして外から客観的に家業を見た経験は大きな糧になり、自身が経営者になったときに必ず生きてきます。

こんにちは。KM Pacific Investments Inc.の枡田耕治です。本記事をお読みくださりありがとうございます。

過去の記事ではカナダとアメリカの高校教育大学教育について話してきましたが、ここでは社会人になった後の次世代リーダー育成はどのようにするべきなのかについてお話ししたいと思います。
過去の記事「家業のリーダーとして次世代へ繋いでいく」でも、家族、地域や業種により多数の育成方法がある事についてはお話ししました。この点については私の著書の中でもお話しさせて頂いています。

著書「家業を継げなかった3代目、継がなかった3代目」

次世代育成について考える時のポイントは、各ご家族の価値観や今後の方向性だと思います。各企業における習慣や歴史が浅い場合、そして各市場や国の経済が著しく変化する中では、どの様に次世代リーダーたちを教育するかと言う問題は大きな課題です。また、各家業の業界によっても多少の考えの差は存在すると思います。例えば伝統工芸などでは業界の習慣や伝統の継承が重んじられているかも知れません。しかし、個人的には継承プロセスや遂行方法には差がないと考えています。

経営権継承には幾つかのマイルストーン(クリアすべき点)が存在していると思います。1)家業について学ぶ、2)経営について学ぶ、3)業界や世界の方向性について学ぶ(世界のトレンドを含む)が一般的かも知れませんが抑えるべき点だと思います。

家業について学ぶ

これは家業でも一般企業でも同じ事ですが、経営権を獲得するのであれば家業についてを学ぶのは尚更だと思います。家業には歴史や習慣や創設者の考えや思いが満載です。そして、それを理解して汲めるのが創業者に一番近いご家族だと思います。私は家業が家業であり続ける為には、家業の「色」が深く滲み出ている必要があると思っています。そして各世代の経営者とその補佐部隊(取締役、番頭役)は各家族の色を明確に理解している必要があると思っています。よって、経営者が必ずしも血縁家族である必要はないと思います。例えば婿養子や嫁入り娘でも同じ家族の立ち位置になると私は考えますが、その場合には家業の意味や目的を深く理解し、その考え方に反映した経営が必須になると思います。

経営方法も各経営者によって異なると思います。手法はあくまでも方法であり、家業の価値である意味や目的を脅かす物ではありません。しかし、経営手法が変わる事で、家業の価値提案が変化するのであれば、その手法は正当な方法とは言えないと思います。

そして家業を学ぶ上では、創業の由来と社員を第一の資産として考える経営が必須になります。伝統と価値観の継続こそが特殊な企業(家業)たる所以だからです。そして一般的な上場企業と非上場企業(家業)の違いは、上場企業においては社訓や価値提案は二の次で、第一の服従は株主に対してであるという事です。よって、家業の中でも未公開株式会社になっている企業は多いと思いますが、その多くは家族関係者によって経営権が握られており、服従先は創業家族になっている事です。ですから、私は創業家族が株式公開などにより経営執行権を継続出来なくなった時点で、家業でなくなると考えています。

家業を存続させる上で、後継者が創業の由来を学ぶ必要性があるということは素直にご理解いただける事だと思います。社員を一番の資産と考えるのは、実は家業だけでなくどの企業でも共通すべき点だと私は考えます。それは会社は社員が動かして存続してくれているからです。社長の経営権にも偉大なものがあります。しかし、社長は銀行の口座番号や取り決め、各業者との関係状況について常に把握出来ているでしょうか?全て把握している社長がいれば、それは人材のミスマッチで非効率的な経営がされている会社だと思います。

経営について学ぶ

企業のトップに君臨するのであれば、経営について学習するのは必須です。私個人的には、丁稚奉公の様な「人様の釜の飯を食べる」研修には大きな価値があると思っています。自分の家業の習慣や経営方法はトップがご健在であればいつでも学べます。しかし、他社の経営方法を学ぶ時間は限られています。そして経験は多ければ多いほど、選択肢を与え将来の判断材料になります。

また外で学ぶ場合にも、御家業の交友関係にない企業で学ぶ方が経営方法や業界も異なり、習得することが多いと思います。そしてその場合にも、出来るだけ成長中の中小企業が良いと思います。大企業に行けば、大きな仕事はできます。でも経営見習い時には取引の大小は関係ありません。それ以上に大切なのは、社員の動かし方や、会社としての成り立ちです。コミュニケーションの発信と伝達方法、社員間の相乗効果の向上方法、企業の成長エネルギーの源などを勉強する事が丁稚奉公する目的です。ディールのサイズは丁稚奉公を始める前に片付けておく事だと思います。

業界や世界の方向性について学ぶ

これだけ時間と距離が縮まった世界で継続して成長する企業の経営を行なっていくには、自分の環境以外の理解が必須です。もっと言ってしまえば、日本国内だけを考えた経営では今後生き残り、成長し続けるのは難しいと思います。もちろん日本国内の活動だけでも、事業の継続は可能かも知れません。しかし、国外で発生する事例(2008年の金融危機や2020年のCOVID-19)にも目が向いていなければ優れた対応が出来ないのが現状です。

以前YouTubeでもお話ししましたが、国内企業が卸先であっても組み立てが中国などであれば中国での政治状況や経済摩擦(対中国関税引き上げなど)などのリスクが存在し、それを把握出来ていなければ生き残るための経営リスクヘッジを立てる事も不可能になってしまいます。日本は輸入に完全に頼っている国です。その中で、原油価格規制やコロナ初期の様に米国やカナダで検討された大型輸出規制から日本が受ける打撃は日常生活が完全に止まり、企業の継続などという問題以上の影響をもたらします。もちろん、コロナの初期対応はどの国も分かりませんでした。でもリスクヘッジと言うのはその様な分からない状況に対して備えておく経営案です。

現状においても、多くの方々が日々の経営に対して苦難されている状況だとお察しします。だからこそ、今後益々地球の裏側で起こっている事は他人事ではないと言う事です。そしてその為にも、経営者としてその実感を持つべきだと思います。

では具体的に、どの様にグローバルな視点や感覚を学ぶかと言う事ですが、それは上記でお話しした丁稚奉公先の厳選です。海外に精通している企業での経営研修であれば海外に行かなくても、考え方は経験できるかも知れません。日本国内でも複数の勉強会は存在すると思います。その様なチャンスを生かすのも方法の一つかも知れません。また、現状では困難ですが、以前は企業研修や業界研修などが組まれ、各邦人協会が海外研修に出向いていました。

弊社においても短期(3〜6ヶ月)企業研修を開始し、現在某不動産企業と商談中です。しかし、この研修は不動産を学ぶものではないので業種は関係ありません。いかに海外の視点(国内、世界)や企業経営が行われているのか、また現地の人々やメディアの考え方がどの様に異なるのかを把握するのが目的だと考えています。

次世代の後継者やリーダー達が、世界の舞台では価値観や考え方の違いがあることを身をもって経験することは、次世代の人材を育成する際の重要ポイントになります。そして彼らがそれをただの経験として位置付けるのではなく、それを基に今後何十年先も企業が存続するためのシステムをどの様に構築するかがその次の課題だと考えます。


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