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やってる感だけのコロナ対応(5)

これは(5)です。まだの方は(1)から読むのをおすすめします。

渋谷での若者のワクチン接種

 これには、自分だけではなく、数多くの人が怒り心頭だったと思う。

 2021年8月、若者のみを対象に、渋谷で予約なしでワクチン接種をすると大々的に発表された。発表したのは小池都知事である。若者のコロナ感染が多いという背景があり、ワクチン接種にあまり積極的ではない若者もいるため、接種をしやすくする、ということであった。しかし、これは完全に的外れである。

 このプランが8月18日の都議会で小池知事によって得意げに大々的に発表された後、テレビでは、インタビューを受けた大学生が、「予約なしで気軽に打てるのはありがたいです。」と答えていた。

 しかし、最初から、気軽にふらっと立ち寄ってワクチンを打てるような状況になるはずはなかったのである。

 接種開始の8月27日の朝、多くの若者が深夜から、会場の渋谷区立勤労福祉会館に並び、午前7時半には300人分の接種枠が埋まった。このために他県からはるばる来た人もいたようだ。

 希望者にワクチンが広く行き渡り、残るはワクチンを受けてくれない若者だけになった、という状況ならこのプランはある程度有益だろう。

 が、8月時点で、64歳以下の多くの人たちが、ワクチンを打ちたくて打ちたくてたまらないにも関わらず、ワクチン不足から自治体がワクチン接種の予約枠を制限せざるをえず、みんな、泣く泣く打てない状況であったのである。30代以下の若者も状況は同じであった。

 この状況で、ワクチンが打てる機会があるなら、そこに若者が殺到するのは簡単に予想できる(東京在住・通勤・通学をしている若者でワクチンを打ちたくても打てていない若者は数百万人単位で存在していたのである。)。1日1万人ならまだ意味があるが、たった300人って…。

 翌日の8月28日は、先着順をやめ、抽選券を配って抽選する方式に変えたが、真夏の暑いさなか、2000人の若者が渋谷から原宿まで駅付近まで1kmにも渡って並んだ。「抽選券をもらうためにわざわざ渋谷に集まって密を作って、でも、多くの人は接種できないで帰ることになる。最初から、オンラインで予約できるようにしてほしい。」という若者の声が紹介されていた。もっともな意見であるが、都はそうするわけにはいかなかった。小池都知事が「予約なしで若者が接種できるようにする。」と自慢げに打ち出してしまったためである。予約はなしで接種できなければいけないのである。

 こんなバカげたやってる感のために、多くの若者が渋谷で密を作り、時間を無駄にし、交通費も無駄にしたのである。このバカげたプランのために、多くの都職員が計画を立てるのに時間を使い、会場設営をし、医師や看護師たちがそこに駆り出されたわけである。

 ワクチンは足りないのだから、他で使用されるはずのワクチンが、このために300人分減らされたはずである。無駄な労力をかけてこんなことをするより、粛々と自治体のワクチン接種を進める方が、はるかに効率的だったはずである。こんなバカげたことのために、多くの人が時間や労力を無駄にしたのだ。

 この責任は重大である。小池都知事は、若者に感染者が多いのは国民はみんな知っているから、こういうプランを打ち出せば、私にリーダーシップがあると見せつけられるし、注目を浴びるだろう、と思ったのだろう。小池都知事が考えそうなことである。しかし、くだらない思い付きでこんな政策を実行した小池都知事の辞職案件であると自分は思う。合理的な政策立案能力のない人間に都知事を担う資格はない。

 そもそも、30代以下の若者の接種を、40代、50代より早くすべきかどうかも、データに基づいてしっかりした議論をする必要があるだろう。確かに感染者は20代、30代で多いが、重症化しやすく死亡につながりやすいのは40代、50代である。ワクチンが足りないのだから、30代以下に優先的に摂取するということは、40代、50代が打てる分が減るということなのである。これによって、40代、50代で亡くなった人もいるかもしれない。そして、20代以下の若者よりは、40代の方が子どもを持って家族数人で生活している可能性が高い。家庭内感染が多いのだから、40代の方が緊急性が高いのではないだろうか、とも思う。しっかりした科学的根拠があって実行するならいいが、自分はこの件について、科学的な理由を聞いたことはない。

 やってる感をだすために、思いつきでこんなことをすべきではない、と自分は強く思う。

 もう一度言うが、希望者にはワクチンが行き渡った段階で、未接種の若者が渋谷で気軽に打てるようにするのはある程度意味があると思う。が、打ちたいのに予約ができない若者がたくさんいる状況でこんなプランを立てるのは本当に愚かだし、無能力が示されてしまった都知事の責任問題である。


 また新しいことが出てきたら書きますので、続きをお楽しみに!


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