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サッカーワールドカップ、日本が勝つとうれしいのか?(2)

これは(2)です。まだの方は(1)から読むのをおすすめします。


なぜ日本を応援するのか?

 日本人が日本を応援しないことを非難するような人も一部にいるようだ。しかし、日本人だからと言って、日本を熱心に応援するのは別に当然でも何でもない。

 日本人みんなで応援…、などという言葉も何度も聞いたが、そもそもそんな必要は全くない。

 まず、そもそも全然関心がなくたっていい。

 仮に関心があったとしても、日本人だからと言って、別に自動的に日本チームを応援する必要もない。

 自分自身がプレーをしていれば、自分自身のチームが勝つことを望むのはまあ自然と言っていいかもしれない。しかし、同じ国の国民とはいえ、サッカーをプレーしている選手たちは、自分たち自身ではないのはもちろんのこと、別に知り合いでも家族でもないのだから、そのチームが勝っても負けても、別にどうってことないではないか。

 むしろ、同じ国のチームだからと言って、自分たち自身と選手を勝手に同一視して、その選手たちに勝ってほしいと思うことの方が、かなり短絡的な感情にも思われる。

 日本人全体も日本を応援して当然、なとどいうのは、あまりにも視野が狭いし、心も狭い。

 それに、対戦相手国のチームの中に好きな選手がいたとすれば、対戦相手国のチームに勝ってほしいという感情をもつのも自然だろう。どのチームを応援したいと思うのかは完全に個々の自由なのだから、別に他人からとやかく言われることでもないだろう。

 さらに言えば、例えば、今回の2022年ワールドカップでは、ドイツの選手たちは、カタールの同性愛者への差別などに反対するため腕章をつけられなかったことに対し、試合前の写真撮影で、手で口をふさぐしぐさをして抗議の意思を示した。一方、日本人選手は一切、そのような意思表示は行わなかった。カタールの国民の人権に思いをはせるドイツの選手たちと、それは全くせず、そんなことに関心もなさそうに見える日本の選手…。過酷な状況にいる誰かに思いをはせ、抗議するような心を持つドイツの選手を人間として尊敬し、好きになる人も当然いるはずである。そういうことに思いをはせる人たちを応援したいという気持ちは自然なものである。何もなければ日本を応援したかもしれないが、こういうことを背景にしてドイツを応援することも当然あっていい。
 

自分自身のことに自信を持っては?

 そもそも、日本のサッカー選手が勝つと自分のことのようにうれしいという感情は、あまりにも他者に依存した感情ではないだろうか?日本のサッカー選手は日本を代表しており、自分自身は日本の国民だから、それが自分のことのようにうれしいということなのだろうが、そもそもこれは、自分たちに無関係な人たちの他愛もないゲームである。もうちょっと、自分自身に自信をもって、自分自身で何かをすることに価値をおいた方がいいのではないか。赤の他人であるサッカー選手が、ゴールにボールを入れたかどうかではなく、自分自身が何かを達成したかどうかの方がずっと大事だし、そちらにもっと関心を持ってはどうか。赤の他人の活躍は、あくまでも赤の他人の成果なのであって、それ以外の人にはほとんど関係ない。選手たちが直接の知り合いでもなければ、全然関係ないと言っていいだろう。

 また、ワールドカップのサッカーの試合で負けたりすると、選手や監督に非難が向くこともある。本当にバカげている。負けたからと言って、そもそも全く大した問題ではない。また、自分自身よりよっぽどサッカーがうまい選手たちや、自分自身より確実にサッカーの指導の経験を豊富に持っている監督を責めたりするなど、本当に的外れにもほどがある。中には暴動を起こす人たちがいる国まであるが、行動が完全にとんちんかんである。そんなことに必死になるくらいなら、他に一生懸命になるべきことが山ほどあるだろう。
 
 

もっと応援したほうがいいことがあるのでは?


 別の観点で、サッカーで日本を応援したくない、または、応援している場合ではない、と思う人もいるだろう。

 日本がサッカーに勝ったところで、単に金属の枠の中にボールが入っただけである。

 これを応援するくらいなら、日本人がノーベル賞を取ることの方が、日本にとってははるかに重要なことに思われる。日本は資源がない国なのだから、科学技術で生きていくしかない。ノーベル物理学賞やノーベル化学賞、ノーベル生理学・医学賞などを受賞する日本人がいることは、日本が技術的な国力を持っていることの一つの表れと言えるだろう。だから、これはそういう観点からは大いに喜んでもいいだろう。このことは、日本が裕福であることとつながっており、そのことは、日本の社会福祉の水準が高くなることにもつながっており、日本国民に少なからぬ幸福をもたらす要素になる。
また、オリンピックの柔道や水泳で日本人が金メダルを取ると、喜ぶ日本人は多いが、国際物理オリンピックや国際化学オリンピックで日本人ががんばってメダルを取っても、ほとんどの人は気にも留めない。だが、そうした若者たちがいることは、日本の将来にとって大いに有益である。なぜ、そのことは気にも留めないで、柔道や水泳の金メダルにばかり熱狂するのだろうか。柔道や水泳の選手たちもがんばっているだろうが、物理学オリンピックや地学オリンピックを取った若者たちたちだってがんばっているのであり、そうした若者たちをもっとほめたたえたほうがいい。


(3)に続く!


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