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サッカーワールドカップ、日本が勝つとうれしいのか?(3)

これは(3)です。まだの方は(1)から読むのをおすすめします。


日本は危機的な状況にあるのに…。

 さらに言えば、日本は今、どんどん凋落して行っている。世界の企業ランキングのトップ50位以内に、1989年には日本企業がなんと32社入っていたが、2021年にはわずかにトヨタ1社しか入っていない。引用数が上位10%に入る注目論文の数は、日本は20年前には世界第4位だったのが、どんどん落ち続けており、2022年現在、世界で第12位である。1位の中国には遠く及ばず、なんとスペインや韓国にも負けている。一人当たりGDPは、1995年に世界第3位だったのが、2022年現在、世界第27位である。平均賃金は、30年前には、日本が韓国の2倍近かったのが、2015年に韓国に抜かれてしまった。

 こんなふうに、日本はどんどん落ちぶれて行っていて危機的状態なのに、サッカーで勝って喜んでいる場合なのだろうか。もっと真剣に日本社会の行く末を考えたほうがいいんじゃないか。サッカーで勝って喜んでいる人たちが、同時に日本の危機的状況も大いに憂えていて、それに対して何らかの手を打とうなどと考えているなら、あまり問題はないかもしれない。でも、サッカーで日本が勝って、日本すごい、などと本気で思って浮かれているだけで、他の問題に関心もないとすると、これは相当まずい。そんなことをしている間に日本はさらに競争力を失っていくだろう。いずれ、サッカーでしかプレゼンスを示せない貧しい国になってしまうかもしれない。

 ワールドカップで日本が勝つと、テレビも新聞もそんなニュースばかりになり、国民の多くも浮かれた状態になる。本当に考えなくてはいけない問題がなかったかのような浮かれた風潮になってしまうのを懸念して、むしろ、日本が勝ってほしくないと思う立場もあるだろう。

 2022年のワールドカップでは、新しい景色、新しい時代、などと言っていたが、サッカーでたかだか数試合に勝つことが、そんな大げさな言葉に値することとも思えない。日本は、今後、これまで経験したことのないような衰退の時代に突入し、これから過酷な新しい景色、新しい時代に直面しなくてはいけないだろう。そうした新しい景色を見なければいけなくなることに真剣に目を向けたほうがいいと思う。
 

終わりに


 自分が、ワールドカップで日本が別に勝ってほしいとも思わない理由を挙げてきたが、ここまで読んでもらって、サッカーが好きな人も含めて、どこか一部でも、確かにこの部分はそうだと思ってもらえれば自分としてはうれしく思う。

 そもそも、ワールドカップなんて、大したことでもない。スポーツ観戦全体がそうだし、そもそも、人間の趣味などというものは、全てそんなものである。

 サッカーワールドカップで一喜一憂し、負けたら抜き差しならない喪失感を覚える人たち、選手や監督を批判・避難するコメントを送りたくなる人たちもいるかもしれない。だが、この文章を読んで、これまで試合やその結果にこだわりすぎていたが、まあ、確かにそんなもんだよな、と気が楽になってもらえれば、それも本望である。


 自分は、ワールドカップのサッカーで日本を応援するな、と言っているのではない。自分が言いたいのは、日本を応援しない人たち、日本が勝っても特にうれしいと思わない人たちには、いろんな見方や背景があり、そうした人たちをおかしな人たちのように考えるのはやめよう、ましてや非難するなどということはあってはならない、ということである。

 個人がどのように考えようと、当たり前だが、それは個々の自由である。

 日本チームを応援したい人はもちろん応援すればいいし、しようと思わない人はしなければいい。日本を応援しようと思う人がいるのも自然だし、思わない人がいるのも自然である。日本が勝ってうれしい日本人もいるだろうし、日本人が勝って残念に思う日本人もいるだろう。日本が勝ってうれしい外国人もいるだろう。誰もが、好きなように生きればいい。それは尊重されて当然だろう。
 
 それが伝われば自分としては満足である。
 

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