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セッション定番曲その13:Stormy Monday (Call It Stormy Monday)

ブルースセッションイベントでの定番曲。いつもの3コードではなく少し変則的なコード進行の箇所があるのも人気の理由かもしれませんね。
(歌詞は最下段に掲載)

和訳したものはあちこちのWebサイトに掲載されているので、ここではポイントだけ説明します。


ポイント1:(通称)ストマン進行

G7のスローブルースなので、通常ならばG7, C7, D7の3つのコードだけで構成されている曲が多いのですが、このStormy Mondayだけは7-9小節目の進行が凝っていて、G7の後はマイナー7で上下してD7に繋げていきます。Bm7→B♭m7→Am7と半音ずつ下がっていくところが気持ちいいですね。9-10小節目はAm7→D7と「Ⅱ-Ⅴ」になっています。

よくブルースセッションでギタリストがこの曲をリクエストして、「知らない」という参加者がいるとその場で口頭で説明して曲を始めようとする場面を見かけますが、それでうまくいった演奏を見たことがなく、大体グダグダになるか、途中で諦めて普通の3コード進行に変更してしまうかのどちらか。手書きメモでもいいので、コード進行を書いたものを用意しておいて配るのがいいと思います。(なんかブルースセッションで譜面やコード譜を見ながら演奏するのはカッコ悪いみたいな雰囲気がありますが、グダグダになっては元も子もないので・・・)

そして、ブルースセッションに参加しようとする人もこの曲の進行は練習しておいた方がいいと思います。やはりその場でいきなり出来るものでもないし、意外とリクエストされる率は高い曲なので。

こうやってコードを動かしてハーモニーを複雑にしようとするのはジャズっぽいですが、このアレンジはカバーしたボビー・ブランドが行って定番化したようで、後のオールマンブラザーズ・バンド(のライブ録音)などもそのコード進行を採用しています。

*進行について説明したWebサイト例


ポイント2:T-Bone Walker様

原曲を作ったT-Bone Walkerは、それまでアコースティックギターで弾かれていたブルースをエレキギターで弾き始めた先駆者のひとりと言われています。おかげでブルースをドラムに負けない音量で鳴らせるようになり、バンドで演奏することも可能になったし、ギターソロを思い切り聴かせることも出来るようになった訳で、現代のすべての(ブルース)ギタリストは感謝しなければならない存在です。


ポイント3:They call it stormy Monday

月曜日から始めて1週間の暮らしを歌った歌詞ですが、月曜日は荒天、火曜日も水曜日も木曜日もサイテーと、とにかく景気が悪い日々が続きます。読んでいるだけで暗い気持ちになるのだから、ここを歌う時はあまり力強く明瞭に歌うのではなく多くのブルースシンガー達がやっているようにぶつぶつと呟くように、愚痴るように歌うのもアリかもしれません。この辺りが「歌ウマさん」の世界とは違うブルースの面白さかも。色々あって落ちぶれてしまった人や人間的にあまりよろしく無い人が歌うブルースがとても魅力的に聴こえることがあるように、ブルース=その人の生き様 が表れてしまうということかもしれません。

とにかくどの日もサイテーという内容なので、曜日はちゃんと区別が付くように発音しましょう。特に「Wednesday」と「Thursday」が難関。前者は「W」の音がちゃんと出ていなう人が多いので、口笛を吹く時のように唇を尖らせて発音しましょう。後者は「th」も「s」も摩擦系の音なので、そこをちゃんと出すようにしましょう。

ポイント4:The eagle flies on Friday, and Saturday I go out to play

色々な解説に書かれているように「The eagle=お金、給料」だと思います。米国札の裏面には国鳥であるBald Eagleが描かれており、これを例えに使ったと。金曜日は週払いの給料日で、現代の米国だと金曜日の午後からもう「週末」みたいな雰囲気ですが、昔は金曜日もみっちり働いてようやくお給料をもらっていたんでしょうね。

そして、土曜日になるとようやくなけなしの金を持って遊びに行く、と。酒、タバコ、オンナ、音楽、ダンス、賭け事とか「遊び」といっても限られたもの。そしてすっからかんになってまた次の週がやってくる。

ポイント5:Sunday I go to church, I kneel down and pray

どのくらい真剣に信心深い主人公なのか分かりませんが、日曜日にはちゃんと起きて、たぶん正装して、教会に行きます。教会って昔は地域コミュニティみたいな役割も果たしていたので、そこで近所の親戚や知り合いと顔を合わせて世間話をして過ごす場所でもあります。そこで遠くに行った友人の消息なんかも聞けるのかも。教会があることで人との繋がりを保てて、孤独(ブルース)から少し逃れることが出来る人もいるのかもしれません。

話は脇道に逸れますが、米国でも欧州でも教会に通わない人も増えてきていると聞きます。笑い話のようですが、週末に知り合いに会いたいなら近所のショッピングモールに行った方が会える確率が高いとも言われます。そのモールもオンランショッピングの影響で下り坂気味とも言われ始めていますが・・・。

ポイント6:Lord, have mercy

この「Lord, have mercy」というフレーズは色々な歌に出てきますが、実感としてはどんなニュアンスなんでしょうかね。よく「神よ、お慈悲を!」と訳されますが、それってどういう意味なのか、分かったようで分からないですよね。

Give me back my baby, please send her home to me
去ってしまった恋人をもう一度取り戻したい、とお祈りしていますが、そんな現実的なお願いを神様が聞いてくれるとは思えないですよね、神様も色々と忙しいので。この神様はキリスト教の神様だと思うので、現世のことは自分で頑張ってねというのが基本。「天国が待っているよ」というエサがあるので。

この「Lord, have mercy」は「Give me a break!」と同様に「ああ、もう勘弁してよ!」という意味で使われることもあるので、そっちの気持ちの方が近いかもしれませんね。自分のパッとしない状況を嘆いていて、でも誰かがそれを助けてくれるとも思っていないし、誰かに八つ当たりしても仕方ないし、神様に頼っても解決にはならないことも知っている。でも気持ちを言わずにいられないので、「Lord, have mercy」と。

この辺はあくまでも解釈のひとつなので、色々考えてみてください。

ポイント7:色々な演奏を聴いてみよう


Bobby Bland、意外と優しい歌声


The Allman Brothers Band、ブルースセッションではこのイメージで演奏されることが多いですね。


Freddie King


B.B. King, Albert Collins
Call It Stormy Monday - YouTube

Albert King, Stevie Ray Vaughan


Lou Rawls、軽快なシャッフルになっています。
[They Call It] Stormy Monday

Etta James
Stormy Monday

Eva Cassidy
Eva Cassidy - Stormy Monday

Marlena Shaw
Stormy Monday

Renee Olstead
Renee Olstead - Stormy Monday

以下はロック系

Mountain


Colosseum


Cream
Stormy Monday (Live)

Gary Moore


Chris Farlowe & Alvin Lee
Chris Farlowe & Alvin Lee,  Rick Wakeman - Stormy Monday Blues

Chuck Brown、GoGoになってる・・・
Stormy Monday

■歌詞

They call it stormy Monday, and, baby, Tuesday's just as bad
Call it stormy Monday, and, baby, Tuesday's just as bad
Wednesday's worse, Thursday's oh so sad

The eagle flies on Friday, and Saturday I go out to play
Well the eagle flies on Friday, and Saturday I go out to play
Sunday I go to church, I kneel down and pray

Lord, have mercy, oh well it's Lord have mercy on me
Lord, have mercy, oh well my heart's in misery
Give me back my baby, please send her home to me


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