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セッション定番曲その96:I'll Close My Eyes

ジャズセッション人気定番曲。歌モノでも、インストでも演奏されます。親しみやすいメロディとソロの取りやすさが人気の秘密ですかね。特に日本人に人気があるのではないかと思います。
(歌詞は最下段に掲載)

和訳したものはあちこちのWebサイトに掲載されているので、ここではポイントだけ説明します。


ポイント1:Blue Mitchell

1960年録音。なんといってもこの演奏が有名ですね。
ジャズは即興演奏が命だ、録音物なんて味気ない」と本気で言っているコアなジャズマニアもいますが、我々庶民はジャズクラブに頻繁に通える訳でもないし、たまたま観に行ったライブでの演奏(アドリブ)が絶不調ということもあり得るので、こういうアドリブまでコンパクトにまとまったスタジオ録音の演奏をいつでも繰り返し聴けるのはありがたいですね。

イメージよりも意外とテンポの速い演奏。歌詞の内容に沿ったロマンチックで明るい音選びでのソロ。Wynton Kellyの軽やかなピアノもいいですね。Blue Mitchellのトランペットの音色は後の「スムースジャズ」的な伸びやかなもの。まずはこれを100回聴きましょう。

Blue Mitchellはモダンジャズ(業界)から、1960年代終わりにはRay CharlesやJohn Mayallなどとに活動に移行してソウル、ブルースロック、ファンク、方面にいってしまい、その後ジャズに復帰したものの1979年には亡くなってしまうので、後期の印象が薄い人ではあります。

同じ時期のDizzy Reeceの演奏。ピアノは同じWynton Kellyですが、曲の印象はかなり違います。

Hank Mobleyのサックスがいい味出していますね。Dizzy Reeceのトランペットの音色はいかにも「ジャズ」という感じの渋めのもの。

ポイント2:I'll Close My Eyes

「私は目を閉じます」
なぜ主人公は目を閉じて、視覚をシャットダウンしようとするのでしょうか?

I'll close my eyes to everyone but you
And when I do, I'll see you standing there
「貴方以外が見えないようにね」

I'll close my eyes and see you with my heart
「(離れていて会えない時には)心の目で見ます」

なんかゾッコン(死語?)ですね。その気持ちを伝える為に敢えて「私は目を閉じます」と「なぜ?」と思わせるフレーズから歌い始めます。

I'll lock my heart to any other caress
I'll never say yes to a new love affair

I'll」が頻出しますが、発音しやすい言葉ではないので、歌の中で自然に発音/発声出来るように練習しましょう。

この曲は英国で作詞作曲されて、それとは別の歌詞が米国の作詞家によって付けられました。前者の内容が「失恋/後悔」だったのに対して米国版は「強い愛情表現」だったので、そちらが人気になって一般化しました。

オリジナル版も歌いにくい歌詞ではないので、敢えてこっちで歌うという選択肢もありますが、その場合には表現の方向性が少し違ってきますね。

ポイント3:Bing Crosby

1947年録音。この歌い方のスタイルからもこの曲の古さが分かりますね。

いまジャズボーカルを聴こうという時にわざわざBing Crosbyを選ぶ人は少ないと思いますが、 米国で長らく人気のあった人です。リラックスした感じで中〜低音域を中心に聴かせる、いわゆる「クルーナー唱法」。(ある程度年配の)米国人の「ジャズボーカル」のイメージはむしろこっちかもしれません。変にメロディを捻くりまわすのではなく、素直に破綻なく歌うスタイル。当時の流行歌ですね。

ポイント4:Peggy Lee

上記のBing Crosbyが冒頭で言っているPeggy Leeの録音がこれ。

可憐な女性の気持ちが伝わってきますね。過剰にならない適度な色気(いろけ)がいいですね。歌う時にはこのくらいのテンポが歌詞に合います。


ポイント5:コード進行の解析

この方のブログが詳しいです。

https://jazzsounds.net/ill-close


ポイント6:様々なバリュエーションを聴いてみましょう

Sarah Vaughan
コブシの効いた、かなりクセの強い歌唱。ビブラートも強烈。安易に真似しない方がよさそうです。


Diane Schuur
1984年録音。これは流行った記憶があります。


Eden Atwood
2011年録音。


Mark Murphy
1999年録音。現代的な8ビートで歌い上げています。


Kenny Burrell
1957年録音。ギター演奏が似合う曲でもあります。


Horace Parlan

1998年録音。


◼️歌詞


(Verse)
Heaven sends a song through its doors
Just as if it seems to know, I'm exclusively yours
Knowing this, I feel but one way
You will understand too, in these words that I say

(Chorus)
I'll close my eyes to everyone but you
And when I do, I'll see you standing there
I'll lock my heart to any other caress
I'll never say yes to a new love affair

I'll close my eyes to everything that's gay
If you're not there, to share each lovely day
And through the years, those moments
When we're far apart
I'll close my eyes and see you with my heart

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Original version

(Verse)
Happiness is passing me by
Can it be that once again I was reaching too high
Love was mine, you gave me a chance
But my heart was not content and I lost my romance

(Chorus)
I'll close my eyes
And make believe it's you
If other lips
Should speak of love divine

The stars were mine
But I just reached for the Moon
And found all too soon
It was not to be mine

I'll close my eyes
If you should pass me by
With someone else
Maybe who loves you too

I may be lonely
But when I see the Moon tonight
I'll close my eyes
And make believe it's you


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