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『演技と身体』

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東西の哲学、解剖学、脳神経学、古典芸能(能)の身体技法や芸論を参照しながら独自の演技論を展開しています。実践の場としてのワークショップも並行して実施していきますので、そちらも是非… もっと読む
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2022年7月の記事一覧

『演技と身体』Vol.31 自律神経の話②

『演技と身体』Vol.31 自律神経の話②

自律神経の話②前回に引き続いて自律神経の話をしたいと思う。
前回はポリヴェーガル理論を紹介し、自律神経のモードを〈交流モード〉〈闘争/逃走モード〉〈自閉モード〉の三つに分けた。
今回はそれらをいかにして使い分けることができるかを検討してみたい。

自律神経は不随意

まず言っておくと、自律神経は自律的に働くものなので筋肉のように直接的に操作することはできない。
そこで間接的な働きかけが必要になるの

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『演技と身体』Vol.30 自律神経の話①

『演技と身体』Vol.30 自律神経の話①

自律神経の話①現場は普通じゃない

芝居をする時というのは、カメラがあったり、観客やスタッフがいたり、強い照明やマイクを向けられていたりする。つまり、普通じゃない。
そんな普通じゃない状況の中で例えば“自然な演技”を心がけようとしてもそれは“自然風”でしかなく、表面的には成立しているように見えても、意図していないニュアンスや緊張が乗ってしまっていることが多い。
よくあるのは、呼吸が浅くなっているた

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『演技と身体』Vol.29 問答条々

『演技と身体』Vol.29 問答条々

問答条々今回は、『風姿花伝』の「第三問答条々」の真似をして、これまでにワークショップの参加者から頂いた質問に答える形式で書いていきたいと思う。

イメージとのギャップ

答。この問題には色んな側面があるので、一概には言えないが、考えられる解決策をいくつか挙げてみたいと思う。
一つには、「ボディ・スキーマ」を開発していくことだ。「ボディ・スキーマ」については第6回の記事で詳しく書いたが、改めて説明し

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『演技と身体』Vol.28 世阿弥『風姿花伝』を読み解く③ 秘する演技

『演技と身体』Vol.28 世阿弥『風姿花伝』を読み解く③ 秘する演技

世阿弥『風姿花伝』を読み解く③ 秘する演技「秘すれば花なり」。非常に有名な言葉であり、「芸術は爆発だ」「人には人の乳酸菌」に並んで僕の座右の銘でもある。今回はこの言葉から派生させて“秘する演技”について書いていこうと思う。

花伝書における秘する花

まず風姿花伝の中でこの言葉がどのように使われているのか見てみよう。

観客にとって「ここが花だな」とはわからないことが役者にとっての花であり、観客に

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『演技と身体』Vol.27 世阿弥『風姿花伝』を読み解く② 実用編

『演技と身体』Vol.27 世阿弥『風姿花伝』を読み解く② 実用編

世阿弥『風姿花伝』を読み解く② 実用編前回の記事では、世阿弥『風姿花伝』の中から芸道者の心構えについて述べられた記述をピックアップして解説したが、今回はより実用的な部分にフォーカスしたいと思う。

強き・幽玄、弱気・荒きを知ること

演技には〈強い演技〉・〈優美な演技〉、《弱々しい演技》・《荒っぽい演技》があるという。〈強い演技〉・〈優美な演技〉は良い演技で、《弱々しい演技》・《荒っぽい演技》は戒

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