Kohei ARAYA

科学教育研究者? 2024年は毎週1本何かについての記事を書きます。

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最近の記事

再帰性(4):樋口(2010)の感想

今回の記事では,樋口(2010)を読んだ感想をまとめておきます。 読んだ論文はこちら: 樋口直人(2010):第5章あなたも当事者である—再帰的当事者論の方へ, 〈当事者〉をめぐる社会学—調査での出会いを通して—, 87-103, 北大路書房. 『〈当事者〉をめぐる社会学—調査での出会いを通して—』は,少し前にオートエスノグラフィー研究を進めていたときに目を通した本でした。 そのときはまだまだ不完全にしか消化できなかったものを,今回はもう少しだけ理解できるのではないかと

    • 再帰性(3):Pillow(2003)の感想

      今回の記事では,Pillow(2003)を読んだ感想をまとめておきます。 簡単ではありますが,論文の概要を整理した後に,私のたんなる感想を列挙しておきます。 読んだ論文はこちら: Pillow, W. (2003). Confession, catharsis, or cure? Rethinking the uses of reflexivity as methodological power in qualitative research. International

      • 研究者のアイデンティティ(2):Inouye & McAlpine (2019)の感想

        今回の記事では,研究者のアイデンティティ(Researcher Identity)にかかわって,執筆活動とフィードバックに関するレビュー論文を紹介します。 紹介する論文はこちら: Inouye, K., & McAlpine, L. (2019): Developing academic identity: A review of the literature on doctoral writing and feedback. International Journal o

        • 研究者のアイデンティティ:Castelló et al. (2021)の感想

          研究者ってなんだろう。 研究者としてどうやって生きていこうか。 研究者やそれを志す人なら,一度は思い悩んだことがあるのではないでしょうか。 しかしなかなか答えは出ません。 今回の記事では,答えを出すための一つのヒントになるのではと,研究者のアイデンティティ(Researcher Identity)に関するレビュー論文を紹介します。 紹介する論文はこちら: Castelló, M., McAlpine, L., Sala-Bubaré, A., Inouye, K., &

        再帰性(4):樋口(2010)の感想

          再帰性(2):Berger(2015)の感想

          今回の記事では,Berger(2015)を読んだ感想をまとめておきます。 簡単ではありますが,論文の概要を整理した後に,私のたんなる感想を列挙しておきます。 読んだ論文はこちら: Berger, R. (2015). Now I see it, now I don’t: Researcher’s position and reflexivity in qualitative research. Qualitative research, 15(2), 219-234. 論

          再帰性(2):Berger(2015)の感想

          再帰性(1):教育学の参照基準

          大学で学生を教えるとき,私の中で聞こえてくる声があります。 「じゃあ,お前はどうなんだよ?」 大学生の頃,私は決して褒められた学生ではありませんでした。 しかし,大学教員として,学生に一丁前に教えならなければいけません。 私は大学生だったとき,どうだったのだろうか。 大学教員の私が言うように,大学生のときの私はきちんと勉強していたのだろうか。 そして,大学教員の私はそれを隠すことなく今の教育に生かしているのでしょうか。 こうして私は,私が辿ってきた道をもう一度歩み直し,

          再帰性(1):教育学の参照基準

          質的研究のための学術論文執筆基準(7):修辞スタイル

          はじめにアメリカ心理学会(APA)から公表されている「質的研究のための学術論文執筆基準」(Journal Article Reporting Standards for Qualitative Research,以降,「質-JARS」とします)について紹介します。 今回紹介する本はこちら Levitt, H. M. (2021). Reporting Qualitative Research in Psychology: How to Meet APA Style Jour

          質的研究のための学術論文執筆基準(7):修辞スタイル

          質的研究のための学術論文執筆基準(6):考察

          はじめにアメリカ心理学会(APA)から公表されている「質的研究のための学術論文執筆基準」(Journal Article Reporting Standards for Qualitative Research,以降,「質-JARS」とします)について紹介します。 今回紹介する本はこちら Levitt, H. M. (2021). Reporting Qualitative Research in Psychology: How to Meet APA Style Jour

          質的研究のための学術論文執筆基準(6):考察

          質的研究のための学術論文執筆基準(5):知見/結果

          はじめにアメリカ心理学会(APA)から公表されている「質的研究のための学術論文執筆基準」(Journal Article Reporting Standards for Qualitative Research,以降,「質-JARS」とします)について紹介します。 今回紹介する本はこちら Levitt, H. M. (2021). Reporting Qualitative Research in Psychology: How to Meet APA Style Jour

          質的研究のための学術論文執筆基準(5):知見/結果

          質的研究のための学術論文執筆基準(4):データ収集・分析

          はじめにアメリカ心理学会(APA)から公表されている「質的研究のための学術論文執筆基準」(Journal Article Reporting Standards for Qualitative Research,以降,「質-JARS」とします)について紹介します。 今回紹介する本はこちら Levitt, H. M. (2021). Reporting Qualitative Research in Psychology: How to Meet APA Style Jour

          質的研究のための学術論文執筆基準(4):データ収集・分析

          質的研究のための学術論文執筆基準(3):研究参加者

          はじめにアメリカ心理学会(APA)から公表されている「質的研究のための学術論文執筆基準」(Journal Article Reporting Standards for Qualitative Research,以降,「質-JARS」とします)について紹介します。 今回紹介する本はこちら Levitt, H. M. (2021). Reporting Qualitative Research in Psychology: How to Meet APA Style Jour

          質的研究のための学術論文執筆基準(3):研究参加者

          質的研究のための学術論文執筆基準(2):タイトル・アブスト・序論

          はじめにアメリカ心理学会(APA)から公表されている「質的研究のための学術論文執筆基準」(Journal Article Reporting Standards for Qualitative Research,以降,「質-JARS」とします)について紹介します。 今回紹介する本はこちら Levitt, H. M. (2021). Reporting Qualitative Research in Psychology: How to Meet APA Style Jour

          質的研究のための学術論文執筆基準(2):タイトル・アブスト・序論

          質的研究のための学術論文執筆基準(1):方法論的整合性

          はじめにアメリカ心理学会(APA)から公表されている「質的研究のための学術論文執筆基準」(Journal Article Reporting Standards for Qualitative Research,以降,「質-JARS」とします)について紹介します。 今回紹介する本はこちら Levitt, H. M. (2021). Reporting Qualitative Research in Psychology: How to Meet APA Style Jour

          質的研究のための学術論文執筆基準(1):方法論的整合性

          良い質的研究とは?:Tracy(2010)の紹介

          良い質的研究とは、どのようなものなのでしょうか? 量的研究に比べて、質的研究の良さ、品質、クオリティを判断する基準は曖昧であるように思います。 今回は、良い質的研究とはどのようなものなのか?について考えるための一つの手がかりとして、Tracy(2010)を紹介します。 Tracy, S. J. (2010). Qualitative quality: Eight “big-tent” criteria for excellent qualitative research.

          良い質的研究とは?:Tracy(2010)の紹介

          ゆく年くる年,書く年読む年

          あけましておめでとうございます。 2024年は書いて読む年にしたいと思います。 noteで毎週土曜日に1本の記事を書きます。 多くは研究に関するものになるかもしれませんが,日々の色々なことについて書ける範囲で書いていきます。 以前,日記をつけていたことがあったのですが,それを少しオープンな形でやってみようという取り組みです。 日記,エッセイ,自叙,戯言,メモ……どうなるかはわかりません。 最も大事なことなのに最も難しいことは,「続けること」でしょうから, 無理のない範囲で,

          ゆく年くる年,書く年読む年

          理科教育学についての私見:拙稿の反省から

          静岡県の片隅で 静岡市は静岡県中部に位置する政令指定都市で,日本で最も深い湾である駿河湾に面している。 気候はとても温暖で穏やかで,雪が殆ど降らず,一年を通して晴れ間が広がり,日本最高峰の富士山を眺めることができる。 筆者の所属する大学の研究室からも,年中富士山や駿河湾を眺めることができた。 研究に疲れた時には,夕方に研究室を飛び出して,駿河湾に沿う国道150号線を自転車で走り抜けた。 その最中,砂浜に転がる流木に腰を下ろし,富士山や駿河湾と自分自身を重ね合わせて,私自身の無

          理科教育学についての私見:拙稿の反省から