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7月が始まった|「青と夏」が呼び起こす思い出
七月が始まると、決まって車の中で「青と夏」を聴きたくなります。時々大声で歌ったりして、まるで子供のように無邪気な気分になります。
そうすると、不思議なことに、忘れかけていた昔の記憶が鮮明によみがえってくるのです。メロディーが流れると、まるでタイムスリップしたかのような感覚に包まれるのは、私だけでしょうか?
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思い出すのはいつも、中学や高校時代の甘く切ない風景。その頃、あの瞬間がどれほど大切で貴重だったかなんて、全く気付かずに過ごしていました。
青春時代、クラブ活動に熱中し、友達と無邪気に笑い合い、恋の話に胸をときめかせた日々。そんな日々が、今でも心の奥深くに刻まれています。
中学・高校時代の夏といえば、何よりも陸上のハードル競技に全力を注いだ日々が思い出されます。暑い日差しの下、汗を流しながら繰り返しハードルを飛び越えた特別な夏の日々。いくつもの試合に出ては一喜一憂し、また次頑張ろうと励みにしたものです。
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そんな中でも、特に忘れられない試合があります。女子百メートルハードルの決勝戦の日です。
あの日、私の集中力は研ぎ澄まされていました。スタートラインに立ち、選手の紹介をされる時にいつも緊張感に包まれているのに、この日は不思議とリラックスしていたように思います。
いつもと違う、そんな感覚は他にもありました。
「位置について」
と言われた瞬間、ピタッと周囲の音がすべて消えたように感じたのです。まるで周りの世界が静止したかのように。
「よーい」「パン(ピストル音)」
この音だけが耳の中を響き、そして私の体はすーっと自然に前へ前へ進んでいきます。聞こえてくるのは、ただ自分自身の鼓動だけ。集中力は驚くほどで、呼吸さえも忘れるほどでした。
2台目、3台目とハードルを飛び越えていくうちに、私はトップに。「このまま一位でゴールしたい」という気持ちもなく、体だけがどんどん前に進んでいきました。意志がそこにあったのかどうか、当時も今も分かりません。
しかし、なんとも言えない出来事が起こりました。
5台目のハードルを越えた瞬間、審判の先生方が手を振って駆け寄ってくる姿が見えました。
なんで?なんで先生、こっちに来るの?
一瞬考えましたが、すぐに気づきました。誰かがフライングしたから、やり直しをしなければならないのです。
うわー、やめてくれー。
ああ、そういえば、右隣の選手が早く飛び出していたなあ…。フライングがあればやり直しは当然です。
でも、この不思議な感覚を抱えながら、最後まで走り切りたい。
いつまでも走ろうとしている私に、観客席から友達の声が突然、飛び込んできたのです。
「やり直しやで!止まって止まって!」
その後、同じような体験をすることなく、私の陸上生活は静かに幕を閉じました。
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大人になってもきっと
宝物はあせないよ
大丈夫だから 今はさ
夏に飛び込んで居よう
長女が来年には高校生になります。彼女の成長を見守りながら、今年の夏は何をしようかと手帳に書き込もうとしましたが、娘の夏期講習の送迎があるため、どこにも行けないことに気づきました。
きっと今年の私の「青と夏」は、長女の成長を手伝うことになるのでしょう。
どんな形であれ、夏はやってきます。そして、娘の夏の中に私も一緒にいることが、とても大切に思えます。特別なことをしなくても、一緒に過ごすこと。それが、今年の夏の一番の楽しみかもしれません。
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娘にも、キラキラした青と夏を思いっきり経験してほしい。そう願わずにはいられない私はすっかり50歳のいい大人。でもこのタイムマシンに乗っていつでもキラキラしたあの時代に戻れるってのは、とっても素敵なことのように感じます。
だから、今年もたくさん、50歳なりのキラキラの思い出を作りたい。
そしてまたいつか「青と夏」のようなタイムマシンの曲に乗って、この夏の日々を懐かしむことができるのを楽しみにしています。
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