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開始1分で60分が決まる インタビュアーのアイスブレイク術

仕事をしていると、緊張する相手と会話をしなければならないシーンが必ずありますね。僕もタレントさん、経営者さん、政治家さんなどなど、メディアの仕事をしていなければ関わることがなかったであろうBIG、VIPな方たちをインタビューする機会が多々あり、前日からとても緊張したりしています。

しかし、緊張しているからといって、現場でパフォーマンスを発揮しなくて良いわけでは、もちろんありません。そこで、僕が少しでもリラックスするために大切にしているのが「アイスブレイク」です。これまで数百人のインタビューを行なってきた経験上、現場の限られた貴重な時間(平均60分程度)のムードは、最初の挨拶から1分以内にこの「アイスブレイク」ができるかどうか、つまり場の緊張感をほぐすことができるかどうかで決まってしまうと感じています。

きっとこれはインタビューに限らず、クライアント相手の商談やプレゼン、上司との面談、さらには恋人へのプロポーズやご家族への挨拶、その他カミングアウトなどのシーンでも同じことが言えるのではないかと思います。

そこで今回は僕自身の「アイスブレイク」経験を、いくつかご紹介してみますので、少しでも何かの参考になれば嬉しいです。

case.1 加藤綾子アナに「1年ぶりにめがさめました」

数年前に『R25』というメディアで、フリーアナウンサー・加藤綾子さんにインタビューをしました。初のご著書を出版され、その記念イベントが行われていた格式高い館の一室で、多くの関係者の方々が見守る中でのインタビュー。緊張しながら待つ僕らのもとに、加藤さんが入室してこられました。当時はちょうど加藤さんが『めざましテレビ』を卒業して1年が経った頃。僕は、太陽のように眩しいオーラを放つ彼女に、

「毎朝見ていたのでお会いできて嬉しいです。1年ぶりにめがさめました」

とご挨拶しました。加藤さんが少し笑うだけで、場の雰囲気は信じられないほど明るくなります。取材はそこから15分ほどの短い時間でしたが、なごやかな空気のなかで落ち着いて言葉のキャッチボールができたと記憶しています。もちろん、日々テレビや雑誌で活躍されている加藤さんが、僕からのインタビューを受けるときに緊張するはずがありません。誰のためのアイスブレイクかというと、完全に僕自身のためのものでした。みなさんも、アイスブレイクにチャレンジする際は「まずは自分の緊張だけでも解ければOK」だと思って取り組んでみてください。

case.2 金子恵美元議員に「かくしごとをしていてすみません」

これは昨年に『週刊プレイボーイ』で元衆議院議員・金子恵美さんにインタビューをしたときのこと。テレビでコメンテーターとしてご活躍する姿なども見ていて、頭脳明晰かつハッキリと意見をおっしゃる方だと認識していたので、正直「浅はかな質問をしたりしたら怒られるのでは…」とかなりビビっていました。でも、媒体は週プレ。切り込みが甘いと逆に編集部から怒られるし、やるしかありません。そこで、名刺をお渡しする際に、

「すみません、著書の中で『隠し事は許さない』と書かれていましたが…かくしごと代表の黄と申します」

とご挨拶。「確かに私はそう書きましたね」と言いながら、大きく笑ってくださいました。著書はもちろん、お仕事や作品、SNSでも構わないので、お相手が手掛けたものをチェックした上で、その内容に絡めてアイスブレイクをするのは、誠意も伝わりオススメです。ちなみに、その後金子さんは「今日はグラビアでしたっけ? 水着になりましょうか?」とリップサービスで返して場を盛り上げてくださりました。政治家として様々な立場の方々と真剣勝負をしてこられた百戦錬磨の金子さんですから、アイスブレイクの効用も十分に理解してらっしゃり、そのスキルは僕より数段、数十段上だったのです。

case.3 森山未來さんに「井上尚弥戦、ご覧になりました?」

最後はファッション誌『UOMO』で俳優・森山未來さんにインタビューをしたときのこと。日本を代表する役者さんであることはもちろん、映画では迫力あるキャラクターを演じられることも多く、そして素顔は謎に包まれている方。取材時の雰囲気が全く読めない不安があり、最初に少しカジュアルなコミュニケーションが取れたらと思っていました。そこで、森山さんがボクシング映画を撮り終えたタイミングだったので、ご挨拶の直後に

「昨日の井上尚弥の世界戦、ご覧になりました?」

と聞いてみました。すると、真剣に考えながら、静かかつ熱心に試合の感想を話してくださり、僕もボクシングが好きなので勝手に心の距離を縮めつつ「こういう間、リズム、ボリュームで話す方なのか」と知ることもできました。お相手が興味を持っているかという事前リサーチは必須ですが、スポーツの話題は初対面でも盛り上がりやすいので、重宝しています(応援するチームなどで意見が対立しないようにだけ要注意)。

アイスブレイクの大前提


…と、ここまでアイスブレイクの言葉がその場で自然に出てきたかのように書いてきましたが、実際は事前にしっかり準備しています(笑)。強く緊張するような状況で気の利いた一言などまず出てこないので、「頭が真っ白になってもこれだけは言おう」というくらいの気持ちで言葉を持っておく方が良さそうです。

なお、アイスブレイクが目的になって、本題と無関係な世間話を長々としてしまっては本末転倒。アイスブレイクは長くて数分。すぐに「この流れで本題に入りますが」と繋ぎ、緊張がやわらいだムードの中で、貴重な時間を最大限活用するよう意識してみてください。

もし需要があれば、今後は別のライターさんの「アイスブレイク術」も聞き出しながら、ご紹介していけたらと思います!

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