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学生服リユースショップさくらや研究【創業ヒストリー編その4】

 キー局のゴールデンタイムのバラエティ番組を制作するテレビディレクターが、女性社長を特集した回で「馬場さんのVTRがスタジオで一番評判が良かった」と太鼓判を押す「さくらや」の馬場社長。そんな馬場さんの創業ヒストリーの完結編です。

(↑馬場さんがVTR出演したバラエティ番組の裏話は14:38から出てきます。コメント欄には「美貌」「美人さん」「結婚して」など…)

あの番組でフェーズが変わり・・・

 受賞歴やブログでの情報発信などをきっかけに、テレビや新聞、雑誌などのメディアの取材も増えました。知名度が上がるにつれ、広島県や徳島県など香川県外を含めて「さくらやのお店を出したい」という問い合わせが舞い込むようになりました。

 2013年、(現在のパートナー制となる以前の)フランチャイズ形式での1号店「さくらや宇多津店」が開店しました。当然ながら多店舗展開のノウハウなどなかった馬場さんでしたが、宇多津店のオーナーは一緒に取り組み、ビジネスに対する姿勢など親身になって叱咤激励してくれたそうです。宇多津店に続く仲間がなかなか現れず、自分のふがいなさに涙することもあったそうですが、それでも「自分らしい取り組みは何か?」「子育て中の自分でもできる全国展開とはどんなことか?」と考え抜いて、「さくらやパートナー」という独自の全国展開の仕組みを2年かけて作り上げました。

 パートナー店を開きたいとの相談が劇的に増えたのは、2015年12月にTBS系列で全国放送された、あの番組に出演したことがきっかけでした。

 「がっちりマンデー」の反響はすさまじく、放送後は問い合わせの電話が鳴りやまなかったそうです。全国からお母さんたちが「自分もやりたい」「馬場さんの話を聞きたい」ということで、香川県のさくらやまで見学に殺到しました。お店のカウンターは、全国のお母さんからのお土産が山盛りになったと馬場さんは笑います。

 しかしなぜ、地方の一商店であるさくらやが全国ネットのテレビ関係者の目に留まったのでしょうか

 番組からの最初の問い合わせはメールでした。馬場さんはいたずらメールだと思って放っておいたそうです。そうしたら今度は電話がかかってきて、驚いた馬場さんは「なんでウチみたいな小さいお店を見つけたんですか?」と聞ききました。電話口の相手は、女性起業家大賞のHPで受賞者の紹介をずっと見てきて、馬場さんの仕事がおもしろいと思った」と答えたそうです。

 女性起業家大賞は、全国商工会議所女性会連合会が主催する女性起業家向けの賞です。かがわ産業支援財団の大賞を受賞してもなお、香川県外のパートナーができない状況に思い悩んだ馬場さんは「次は全国の賞だ」と考えて申し込んだのだそうです。そして2014年10月に「スタートアップ部門優秀賞」を受賞していたのです。地道な努力が報われたというわけです。

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 それでも、馬場さんはさくらやが「がっちりマンデー」にふさわしいものか疑問に思ったそうです。そしてこう言いました。

 馬場さん「ウチ、全然がっちりじゃないですけど。赤字ですけど」
TBS「馬場さんの仕事を全国に紹介することが大事です」

 電話でそう聞いた馬場さんは、「めちゃめちゃ嬉しかった」と目を細めます。

 放送から既に5年弱ですが、いまだに「がっちりマンデーを見ました」と言って連絡してくる人がいるそうです。子育てや勤務先との兼ね合いで実現まで期間がかかりながらも、「さくらや」をやりたいという思いをずっと温めてきた人がこんなにもいるのかと、馬場さんは嬉しく思っています。

 ちなみに、がっちりマンデーに登場した会社の中から厳選された40社を掲載した「がっちりマンデー!! 知られざる40社の儲けの秘密」にもさくらやが登場します。

さくらやパートナー制度の概要と理念

 さくらやの出店希望者は開業時に170万円(税別)、その後は商標使用料や相談料として月会費6500円を支払うことで、「さくらや」のロゴマークなどの使用権が得られるほか、研修や備品提供などの開業支援を受けます。パートナー制度を取り入れた当初は在庫・販売管理システム(POSレジシステム)の導入とセットで募集していたのですが、開業したいお母さんにとっては高過ぎるということで、POSレジシステムの導入は任意の扱いにしたのだそうです。

 売上高に応じてフランチャイズ料を取るフランチャイズ制ではなくパートナー制としたのは、売り上げ拡大を目指して営業時間を延ばす店舗が出てきて、子育てしながらの経営が難しくなってしまうと考えたからだそうです。売り上げ拡大だけを重視するのは、馬場さんの望む形ではないと言います。月会費のパートナー制なら、売り上げ一辺倒でなく地域のためになるお店にできます。「さくらや」は、「地域に密着した共感型ビジネス」として、共感を大切にしているのです

 パートナーを考えている人のための説明会は、月に一度、東京で開催するほか、高松で行うこともあります。広告宣伝などはせず、馬場さんのブログで告知するだけですが、毎回満員になり、申し込みを断ることもあるそうです。

 起業を目指す子育て中のお母さんや、副業しながら地域に貢献したい女性、女性従業員のために場所を作りたい法人など、様々な人が説明会に来ます。地域の制服専門店が「少子化が進む中で、新品の小売りだけでは、これからは難しい」と相談しに来たり、ボランティア活動をする人が「収益を見込むためにはどうすればよいのか」という問題意識を持って見学しに来ることもあるそうです。

 開業から約10年、2020年9月現在で「さくらや」は全国で54店舗となっています。地域の学生服を地域で循環させるニッチなコミュニティビジネスですが、多くの子育て家庭に必要とされ、成長し続けています。捨てるしかなかった制服や体操服を再利用できる仕組みを作り全国に拡大していることが評価され、2017年10月には「循環型社会形成推進功労者環境大臣賞」を受賞しました。

 また、がっちりマンデー出演のきっかけとなった、全国商工会議所女性連合会の「女性起業家大賞」では、「スタートアップ部門」(2014年10月)に続いて、「グロース部門」(2018年9月)でも馬場さんは優秀賞を受賞しました。二部門での受賞は全国初だそうです。

 起業家として注目される馬場さんは、地域の高齢者、障がい者、お母さん、誰もが役割を持てるコミュニティを、「さくらや」を通じて全国に広げていきたいと考えています。

この編おわり


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