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高熱にうなされながら考えた言葉のチカラ

約二年ぶりに一念発起してnoteを再開して3週目。早くもかつてないトラブルに見舞われる羽目になった。突如として39度越えの高熱に見舞われてしまったのだ。
発熱したのが三日前。体温計に表示された38度の数字を見て、「すわインフルエンザかコロナか?」と勇んで病院に駆け込んだが、どちらも陰性。医者から解熱剤を処方されるも、次の日には39.5度と尋常ではない高熱。
もしかして前日は検査を受けるのが早過ぎて偽陰性だった可能性もあると思い、再度病院で検査を受けるも…やはり陰性。
医者も完全にお手上げ状態。
今もなお床に伏せっております。

週一で記事を上げようと誓ってはみたものの、流石にこれでは更新どころではないとほぼ諦めておりましたが、何とか力を振り絞って記事を書いています。
今回はある意味高熱にうなされたからこそ改めて考えさせられるとことなった、「言葉が持つ力」「言葉を持つ有り難さ」について書いてみようかと思います。
※以外、乱文が続くかもしれませんが何卒ご容赦を。


病名のない辛さ

今回の発熱そして全身の倦怠感の原因は分かっていません。よって「とにかく寝る!」が現時点で取りうる方策です。
今回感じたのは、病名を付けてもらえることの有り難さです。

インフルエンザになりたかった訳でも、コロナになりたかった訳でもない。でも原因不明で体調悪いというのは中々にしんどいものです。
一つには、会社を休むのに「体調不良」と言い続けるのも何だか収まりが悪いということ(ま、そう言うしかないんですけどね)。普段会社を休まない分、「あの人が体調不良で休むなんて、余程何か公表しづらい事情があるんじゃないか」と勘繰られても面倒だし。
病名がつかないと自分も周りも何だか余計な気運を醸成してしまいます。

もう一つは、自分の体の苦しさと心が折り合いを付けられないということです。
インフルエンザやコロナであれば、これからの身体の状態はある程度推測がつきます。「多分、今日乗り越えれば明日には…」みたいな。でも原因不明だと一体自分がどうなってしまうのか皆目見当がつきません。まぁ、死ぬ訳じゃないでしょうが。

医学の発展により原因不明の奇病というのは随分減りました。科学の発展というのは有り難いものです。
しかし、逆に私たちはあらゆることを因果関係でしか捉えられなくなっているのかもしれません。
今の私がまさにそう。
これだけ苦しいのだから、何か医学的に、特に西洋医学的に説明できる理屈があるはずだと無意識に考えています。
でも、それが通じない時もある。
そんな時人間に確実に行えるのは、ただ「うめく」「苦しい!と叫ぶ」それだけです。そうすることによって、痛みや不安と折り合いをつけていくしかない。

言葉の発生の起源について。小林秀雄の考察

昭和の時代に批評の神様と言われた小林秀雄の著作「本居宣長」に、次のような記述があります。言語がいかにして生まれたのかということについて、歌(万葉集あるいはそれよりさらに前の古代の和歌)と絡めた考察なのですが

「私達の身体の生きた組織は、混乱した動きには堪えられぬように出来上っているのだから、無秩序な叫び声が、無秩序なままに、放って置かれる事はない。
私達が、思わず知らず「長息」をするのも、内部に感じられる混乱を整調しようとして、極めて自然に取る私達の動作であろう。其処から歌という最初の言葉が「ほころび出」ると宣長は言うのだが、あるいは私達がわれ知らず取る動作が既に言葉なき歌だとも、彼は言えたであろう。
いずれにせよ、このような問題につき、正確な言葉など誰も持ってはいまい。ただ確かなのは、宣長が、言葉の生れ出る母体として、私達が、生きて行く必要上、われ知らず取るある全的な態度なり体制なりを考えていた事である。言葉は、決して頭脳というような局所の考案によって、生れ出たものではない、この宣長の言語観の基礎にある考えは、銘記して置いた方がよい。

言葉はツールではない

"グローバルな時代で生きていくための必須のツール"として、英語教育が叫ばれるようになって久しいが、そういう言説を見るに付け思うのは総じて言語のながらを甘く見過ぎだということです。昔どなたかが書いていましたが、私たちは「壁」という言葉がなければ、目の前に壁があることさえも認識できない。壁という言葉によって壁を対象として捉えた時に、ようやくその壁を乗り越えるという発想が出て来る。壁という言葉がなければ、血みどろになるまで、その壁に頭を打ち続けるしかない。
言葉によって私たち人間は、この世界という混沌の中を捉え、対象化し、その中から何かしらの秩序を見出し、何とか生き抜く道を編み出していく。まさに言葉とは私たちがこの世界で生きていくための縁(よすが)なのです。
39度を超える高熱の中そんな取り止めもないことを考えていたのでした。


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