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古賀慎一郎
2022年12月5日 12:29
前回からのつづき また、ちあきなおみは、「譜面(楽譜)が読めない歌手は歌手ではない」と語ったが、これはどういう意味なのだろうか、と私は考えてみる。 その言葉どおり、ちあきなおみは歌う前には常に譜面を凝視し、歌詞はノートに自ら書き込み読み返していた。それはドラマの収録現場でも変わらず、カメラリハーサル、ドライリハーサル、ランスルー、そして本番直前に至るまで、この場では譜面であるところの台本を離
2022年11月29日 10:33
規制を飛び越え、のっけからオールスタンディング状態となった客席に、薄暗がりのステージから天空に突き抜けるような歌声が響き渡ってくる。 視線の先にはっきりと映り、鼓膜を圧してくるのは、私を郷愁へ導いてゆくひとつのシルエットだった。その中には、幾人ものフォークシンガー、ロックスター、そして、伝説の歌姫が幻影のように付帯して見える。と、四方からのライトがステージセンターを照射すると、あいみょんがギタ
2022年10月29日 11:36
二〇二〇(令和二)年十二月九日午後、私はうららかな冬日を満面に浴びながら、自宅近くにある千種公園へと歩を進めていた。昨夜はファンタスティックな昂ぶりを覚え睡眠不足ということもあり、私の歩きぶりは緩慢にして重かった。 住宅街を抜け公園が迫ってくると、歩きしだいに視界が広がり頭も澄んできて、いくらか足取りも軽くなってくるような気がしてくる。私は子供の頃に返り、タップを踏むように軽快にステップを進め
2022年7月20日 17:24
いつものように幕が開き 恋の歌うたうわたしに 届いた報せは 黒いふちどりがありました あれは三年前 止めるアナタ駅に残し 動き始めた汽車に ひとり飛び乗った ひなびた町の昼下がり 教会の前にたたずみ 喪服のわたしは 祈る言葉さえ失くしてたつたがからまる白い壁 細いかげ長く落として ひとりのわたしは こぼす涙さえ忘れてた 暗い待合室 話すひともないわたしの 耳に私のうたが 通りすぎてゆく い