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小説『サイコロシアン・ルーレット』を読もう

先日、『サイコロシアン・ルーレット』が完結した。

餅辺=サンによる連載小説だ。

※メモ※
餅辺=サンは逆噴射小説大賞に2年連続で参戦しているパルプスリンガーで、ワシは去年末~年明けに連載された『開拓星のガーデナー』も好き。

『サイコロシアン・ルーレット』、全19話。

「エッ!? 19話もあるの? 年末だしちょっと忙しくて……」
そこのアナタ。
ちょっと待ってほしい。安心してほしい。話を聞いてほしい。
本作は1話が2,000~2,500文字で、ガツガツ食べられる。
先が読めず手に汗握る展開と、満足de満足de見事なラスト。
トータル45,000文字のHARA-HARA体験がアナタを待っている。

タイトルからして物騒な香りがするが、内容も物騒だ。当然、人が死ぬ。だがドンパチ的なガンアクションは無い。凄腕のガンマンも、能力者も出てこない。おふざけも無し。至ってシリアス。ゴイスーでハードなサスペンス。


ワシはコーフンしながら読んだ。チョー面白かった。

※あらすじ※
アメリカの田舎町。昔気質のマフィアと新興ギャングの争い。互いに5人ずつ選出。5回戦。1戦につき1対1。2人はテーブルに向かい合って座る。テーブルの上には1丁のリボルバーと、弾丸。命を賭け、自らサイコロを振る。出目の数だけリボルバーに弾をこめる(シリンダーの穴は6つだ。つまり出目が6なら……)。自らのこめかみにあてる。引き金を引く。生き残った方の勝利。両者ともに死ぬか、両者とも生き残ればドロー。


(以下に続くワシの文はそっちのけでいいから、読んでみてほしい)
第4話、いや第5話。そこまで読み進めてみてほしい。



……本編を読まずにスクロールしてきた、とな?
じゃあもう少し語るから、付き合ってほしい。
そして、少しでも気になった人は、ぜひ本編を読んでみてほしい。

1話目。
いきなり勝負の最中からはじまる。勝負のテーブルについたエリックは、どうやらマフィア側の男。捨て駒ではなく、ファミリーにとって重要な人物らしい。エリックはビビりまくって、ハーハー言って、汗ダラダラ。やっぱやめたいですボス…… みたいな態度だ。ギャング側のボス(若い)がニヤニヤしている。
マフィア側のボス(ジジイ)は、エリックに言う。
「……だが、もう始めちまったし、お前もあの日、やると言った。今さら引き下がるってわけにゃァいかねえ。だから、やってくれるな?」
エリックはサイコロを振る。
そこで1話目が終わる。


「なんでそんなことしてんの?」

あらすじや1話目を読んだ人は、そう思うだろう。
少なくともワシはそう思った。なんだか腑に落ちない。

(抗争にしても、他にやり方があるんじゃないの?)

(やるとしても、サンシタにやらせればいいのに)

(もしや…… ”サイコロ×ロシアンルーレット” を書きたいだけでは?)

ワシはそう思った。疑ったのだ。
今思えば、ヒドイ・シツレイで、切腹ものだ。
ワシは謝罪しなければならない。「SORRY...MOTIBE-SAN...」と。

どうか、皆さんは安心してほしい。
疑う必要などない。

理由とその結末は、作者によって明確に語られる。

そう……『サイコロシアン・ルーレット』は、ただサイコロでロシアンしたいってだけの作品じゃあない。一見シンプルなようで、実は複雑。いくつもの思惑と駆け引きが絡み合い、(なにそれどういうこと……)とワシをじらしておいてからガツン! ガツン! ホレもういっちょガツン! と答えを提示する。ワシはシビれる。これが面白い。もうひとつ、「命を賭ける人間たちにはそれぞれ大なり小なりの背景があり、引き金を引く前にそれが明らかにされる(後で明らかにされてバビるパターンもある)」というやり口も面白い(というか大好き)。
背景を知ってしまったワシは、祈る。毎勝負。
「死なないで……!」「死ね……!」
しかしその祈りは虚しく、銃は淡々と命を選別する。
1勝負ごとの結末が読めず、引き金を引くその瞬間のHARA-HARAがヤバイ。そして全体として物語がどう転がってゆくのか気になって、やめられない。

このあたりの ”スゴイ・面白さ” を身体で感じるようになるのが、5話目あたりからだ。だからワシはさっき、第4話、いや第5話。そこまで読み進めてみてほしい。と述べた。
2-3話目はマフィア側の人物描写で、勝負が始まる前の話。
4話目はギャング側の人物描写で、勝負がはじまる前の話。
※2-4話目も重要なシーンなので油断してはならない

でもって、理解が深まってきた5話目で1話目のシーンに戻って来る。
そこから先は未来の話だ。

未来で読者を待ち構えている驚きの展開と締め括りは、本当に「お見事!」としか言いようがない。

45,000字でこんな濃密な物語を書けるなんて……
しかも、見事にまとまりまくっている……
ワシは愕然とした。

パルプらしさ満点の乾いた文章と魅力的な語り口で進む命懸けのストーリー。作者の餅辺=サン曰く「後半グイッと来る感じを大切にしたかった」とのことだが、それがもう本当にその通り。ぜひ自分の目で確かめてみてほしい。


冒頭で1話目のリンクを貼ったが、念のためマガジンも。

餅辺=サン、めちゃんこ面白い作品、ありがとうございました。

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