見出し画像

複数拠点でチームワークを高めるためにデザイナーができる仕事術、すべて話します。

「最近のインドの状況はどうですか?」「福岡にも今度行きますね」。マネーフォワード東京オフィスのデザイナー席では、よくこんな会話が聞こえてきます。

マネーフォワードではサービス拡大に伴い、組織の拡大も急ピッチで進んでおり、グローバル化にも拍車がかかっています。2019年にベトナム・ホーチミンに初の海外拠点をつくり、2021年にハノイにも拠点を設立。さらに2022年はインドにも拠点を設立しました。

日本国内においても、プロダクト開発を担当する拠点は東京以外に、京都・大阪・福岡・名古屋など全国各所に点在しています。

マネーフォワードの拠点

多くのプロダクトを抱えるマネーフォワードでは、プロダクトごとにチームを構成し、それぞれPdM、エンジニア、デザイナーなどの職能のメンバーが所属しています。プロダクトによっては、職能ごとに在籍する拠点が分かれています。離れた拠点でもチームワークを重視し、日々プロダクトのサービス価値を高めるため切磋琢磨しています。

本記事では、請求書・経費関連のプロダクトチームに所属するデザイナーを対象に、拠点の異なるプロダクトチームでデザイナーがどのように価値を発揮しているかをご紹介します。

クラウド請求書Plusの場合

『マネーフォワード クラウド請求書Plus』は、中堅エンタープライズ・成長企業様向けに提供している請求書サービスで、CRM(Salesforce)と連携して請求業務と債権管理をワンストップで行います。

このプロダクトチームのデザイナーは水谷 芽美さんと町田 翔さんの2名、いずれも東京オフィス勤務です。しかしプロダクトチームは、デザイナー2名を除き、PdM・エンジニア全員がインドの拠点に在籍しています。PdMの藤永 旺二郎さんは、インド拠点の立ち上げに尽力しました。

PdMとデザイナー間のコミュニケーションは日本語ですが、インド拠点のエンジニアとはすべて英語でコミュニケーションをとっています。設計情報の共有、開発時のフォロー、開発後のデザインレビューまですべて英語です。

グローバルチームで行うプロダクト開発は、​​習慣や法律の違いなど、その国には存在しない概念があるため、ドメイン知識の共有が容易ではありません。

実際にスクラム開発する上で、海外拠点にいるPdMとどのようにコミュニケーションをとることを心がけているか、課題をどのように解決しているかをデザイナーの町田さんに伺いました。

プロダクトデザイナーの町田さん

”PdMと設計の方針を決める時は、まずプロダクトの今後のロードマップを確認しながら、次に必要な施策や追加機能・改善のトピックをラフに話し合います。それから、それぞれのトピックに対して、進め方を合意して設計・開発を進めます。

トピックごとに最適なタスクの流れが違うので、進め方はしっかりとPdMと議論します。「今回は事前にユーザーインタビューが必要?」「先にプロトタイプをさっと作って検証したほうがよさそう?」「どのタイミングでエンジニアに実現性や開発コストの確認をする?」などを話します。

こういう話をするにしても、インドにいるPdMとの拠点の時差は3時間半あるし、聞きたい時に気軽に聞ける状況じゃないことも多いです。ですから、なるべく協議したい内容の論点を丁寧にドキュメントに残したり、曖昧なやりとりをしないように心がけています。

特に、Slackでのコミュニケーションも何度もやりとりが往復するような投げかけをすると、それだけで物事の決定が遅くなったり、結論も見えにくくなります。一問一答で解決できるような問いかけとか、キャプチャも貼って視覚的に論点がわかりやすくなるように配慮してますね。”

同じ拠点にいない中で、オンライン上でとっている丁寧なコミュニケーションの工夫について聞くことができました。

一方、エンジニアとのコミュニケーションはどうでしょうか。エンジニアのほとんどは現地採用です。その状況で、開発中のやりとりや、海外拠点メンバーを中心としたチーム運営に、デザイナーがどのように関わっているか、デザイナーの水谷さんに伺いました。

プロダクトデザイナーの水谷さん

”インドにいるエンジニアの皆さんとは、日本のデザイナー側で設計した情報の連携で関わることがほとんどです。すぐそばにエンジニアがいれば、画面のイメージと併せて口頭でコミュニケーションができるし、それで事足りることが多いです。ですがインド拠点は、場所も違えば文化もネイティブ言語も違うので、それなりの工夫が必要です。

例えば、口頭コミュニケーションが気軽にできない分、Figmaなどのデザインデータには、画面イメージだけではなく、挙動に関する仕様、背景などを英語で細かく残して、デザインデータだけみれば完結できるようにしています。

一度、画面イメージのみ共有して実装をお願いしたら、挙動のイメージが伝わらずエンジニアが調査にかなり時間をかけてしまったことがあり、これはまずいと思ってやり方を見直した結果です。

このやり方にしたことで、仕様が伝わりやすくなっただけではなく、実装後のテストもスムーズになりました。インドのエンジニアはかなり丁寧にテストしてくれるのでデザイナーが改めてチェックする箇所が減り、とても楽になりました。”

デザイナーは、プロダクトのチームビルディングでも大きな役割を担っています。拠点が立ち上がったばかりのインド拠点のエンジニアとどのように信頼関係を築いたのでしょうか。

”主なコミュニケーションはSlackですが、チーム感を演出するために絵文字やスタンプをフル活用してフランクなやりとりを心がけています。

あとはマネーフォワードの良さでもある賞賛とリスペクトの文化を根付かせるため、できたことに対するインセンティブとしてグッズのデザインなどもしました。Tシャツやステッカーにして配布し、チームワーク作りに生かされていると聞いているのでとても嬉しいです。”

チームビルディングのためのクリエイティブ
グッズのTシャツとステッカー

プロダクトデザイナーといえば、プロダクトの設計やユーザーリサーチが主な仕事と思われがちですが、チームビルディングとしての役割にも大きく貢献していることが分かりました。

マネーフォワード Pay for Businessの場合

『マネーフォワード Pay for Business』は、これまでマネーフォワードが提供してきた『マネーフォワード クラウド』のデータを活用したFintechサービスです。現在は主に個人事業主・法人向けの事業用プリペイドカード『マネーフォワード ビジネスカード』を提供しています。

このプロダクトのデザイナーは松永 奈菜さんです。『マネーフォワード Pay for Business』は昨年グッドデザイン賞を受賞しました。

デザイナーの松永さんは東京オフィス勤務です。しかし、PdM・エンジニアのプロダクトチームは、松永さんを除き、全員が福岡開発拠点に在籍しています。特に『マネーフォワード Pay for Business』は福岡開発拠点発でゼロベースから創ってきた新規事業でもあります。

松永さんはそんな環境下にいながらも、プロダクトのチームメンバーとの丁寧なコニュニケーションを日々欠かすことなく、設計から実装に至るまで深くプロダクトに関わり、誰よりも広い領域でデザインの価値を提供しています。

ここでは主にデザイナーの活躍領域とチームビルディングについて松永さんに話を伺いました。

プロダクトデザイナーの松永さん

”プロダクトでの取り組みは、毎月ロードマップの共有会を開催して、PdM・デザイナー・開発リーダー陣で次のアクションを決めています。大きな新規機能開発の場合は、要件定義フェーズを入れた精緻な計画を立てますが、細かな改善はすぐにデザイン制作をして、実装まで進みます。トピックの数が多いので優先度づけが重要です。

拠点が違う場合に難しいのは、要件定義が必要になるような大きな機能開発の認識合わせです。私たちのチームでは、プロジェクトゴールやユーザー要望の根拠をチームの中で正しく共有できるように、インセプションデッキというアジャイル開発でよく使われるキックオフの手法を活用しています。

インセプションデッキは10の決まった質問に答えることでプロジェクトのWhyとHowの認識合わせをする方法ですが、その中で特に必要な7つの質問に限定して全員でオンラインワークショップをして情報共有をしています。

  1. 我われはなぜここにいるのか:
    開発チーム・メンバーの存在意義や目標の設定

  2. エレベーターピッチ:
    誰に向けた、何の開発で、どんな価値を提供するかの発表

  3. やらないことリスト:
    ​​プロジェクトでやらない事の明確化

  4. ご近所さんを探せ:
    プロジェクトのステークホルダーの把握

  5. 技術的な解決案:
    実装に関するアーキテクチャ・ライブラリ構成などの共有

  6. 期間の見極め:
    開発期間とリリース予定時期の共有

  7. トレードオフスライダー:
    問題が起きた時の優先事項(スコープ・期限・予算・品質)の合意

インセプションデッキ以外にも、プロジェクトの途中でゴールがずれていないか、狙った価値提供ができているか、開発上の懸念がないかなどの振り返りタイミングを設けています。

具体的には、画面のラフな情報設計ができたタイミングで、プロジェクトメンバー全員で読み合わせをします。そして、読み合わせの場で出た疑問や懸念をすべて書き出して、解消のアイデアを出すワークショップをしています。

設計確認ワークショップの様子

こうすることで、効率的に設計を進められたり、後々起こりがちな設計漏れを防ぐことができました。同じ場所での作業であれば口頭で解決するような内容でも、しっかり認識共有の場を設けることが、オンラインコミュニケーションでは大切になると思います。”

実際に筆者も、プロジェクトチームとのミーティングに何度か同席をしていますが、ひとり拠点が異なる状況でも、デザイナーの松永さんが上手く場をファシリテートし、メンバーの議論が活性化して、良い一体感が生まれていました。プロジェクトの様々なタイミングで、デザイナーとしての価値を発揮している様子を伺うことができました。

さいごに

マネーフォワードのプロダクトデザイナーは、今後もメンバーの所属する拠点に限らず、プロダクトデザインの責任を担う機会を増やしていく予定です。プロダクトの数が多い分、プロダクトの成長フェーズや業務内容も様々です。そのため、求められるデザイナーの役割も少しずつ変わります。

このような組織は、デザイナーが考えるキャリアパスや、求める機会提供に柔軟に対応できる環境と言えます。拠点の違いにより成長機会を逃すようなことが起きないよう、オンラインでも価値提供ができる仕組みを作っていくことが重要です。

現在は、その仕組み作りのために、あらゆる状況下で起こる課題の解決策を模索している時ですが、数年後には当たり前にデザイナーが「マネーフォワードにいればどのような成長機会でも得られる」と感じられる組織づくりを目指します。

マネーフォワードではプロダクトデザイナーを積極採用中です。プロダクトの価値を高め、より良いサービスを一緒に創っていきませんか?

マネーフォワードのデザイン組織がどのようなものか知りたい方、興味がある方、現段階で採用応募するか迷っているが話だけは聞きたい方、まずは気軽にカジュアル面談をしましょう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?