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美をつくし―大阪市立美術館コレクション:2 /サントリー美術館

承前

 大阪市立美術館の収蔵品は、他の公立館のそれとはやや異なる趣をもっている。
 他館の多くが特定の収集方針を定め、それに従って作品を集めていったのに対し、大阪市美では各個人が集めたコレクションをまるごと引き受け、収蔵品を拡充してきた。
 もちろん、受贈じたいはどこの館にもあることだが、これほど多くの個人名を冠した「~コレクション」があり、ジャンルが程よく分散し、かつそれぞれの質が高い公立館は大阪市美くらいだろう。
 最もよく知られるのは中国美術で、絵画の阿部コレクション、石仏の山口コレクションは世界レベルといわれている。日本の仏教美術や近世絵画は田万コレクション。近世工芸はカザールコレクション。尾形光琳の下絵や資料類もまとめて入っているし、住友家からは美術館の土地だけでなく、近代日本画の一群の寄贈を受けている。最近では、石仏を集めた小野薬品工業の小野コレクション、鍋島の逸品ぞろいの田原コレクションを受け入れている。

 小野コレクション、田原コレクションが含まれないという違いはあるにせよ、上記の記述によって収蔵品の概要、本展の構成のどちらもをおおむねカバーすることができる。
 本展では、これら収蔵品のなかでもとりわけ知名度の高い名品はもちろん、人目を引きやすい、ちょっとおもしろい作品に関しても意識的に選ばれているように思われた。
 前者・名品の数々については本展の公式サイトや各種紹介ページ(以下リンク)などで堪能いただくとして、ここでは主に後者の、「なにコレ」というコピーにふさわしい作品をいくつか挙げてみたい。


 まずはコレ。
 ご当地大坂の絵師・関蓑洲の《象図屏風》。象の像である。

 二曲一双がこんなに大きく感じられたのは、初めてかもしれない。窮屈そうに画面の幅に収まるさまがいじらしい。

 同じく大坂の絵師・上田公長の《蟹子復讐之図》は、猿蟹合戦の絵。百鬼夜行よろしく、擬人化された道具たち……

 上田公長は、府中市美術館「動物の絵」展で、そのあまりに適当な愛らしいことで話題を呼んだ《子犬図》の作者。このように、かっちりめの画風もお手のものだ。
 ご覧のとおりにおもしろい絵を描く人なので、今後、どんどん注目度が高まっていくことだろう。

 同じくおとぎ話シリーズ、舌切り雀の根付。

 根付はじめ小品の集められたコーナーは、すべて撮影可となっていた。
 下の写真の箱は、どれも親指の爪ほどの大きさ(当社比)。小さいからといって、描きこみ・つくりこみは甘くならない。いくらつぶさに観察しても、粗が見えてこない……これぞ、超絶技巧。

黒光りする犬っころは陶製。金彩の焼き付けで、ぶち模様が入っている


 中国美術のセクションには、なぜか朝鮮陶磁が1点だけ混じっていた。高麗青磁の水注である。
 しかしまあ、そうまでして展示作品に選びたくなるのもわかるような、すこぶる上がりのよい、すぐれた翡色(ひしょく)の優雅な水注だったのだ。小さな蓋や破損しやすい把手、注口も完存。象嵌で表された文様のなかには、えっちらおっちら餅をつく今年の干支・うさぎの姿も。


 原在正《猫図》!
 前期のみの展示だったため拝見は叶わなかった。いつか、ひと目でも会いたい猫さんである。
 この毛並みの表現、写生ともいえようが、どちらかといえば南宋の院体画のほうに近いだろう。


 ——名品あり、小品あり。笑品も、あり……
 こうして作品写真をながめていると、実物が観たくなってくるのではなかろうか。
 幸い、まだ巡回先が残っている。
 3月21日から5月21日まで、福島県立美術館で開催予定。
 ご興味のある方は、ぜひ。

大阪市美の正面玄関を背に立つと、通天閣が見える


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