「なんでもない日常の仕事風景」がお金になる時代
コロナで窮地に立たされた飲食店の料理人が、YouTubeを始めて成功している事例があるそうです。
成功の要因は、価値ファースト・収益セカンド。
つまり、料理人がレシピを動画で紹介するという形で先に価値を提供し、それを見たお客さまが来店してくれて収益につながる、という形です。
一方で、なんでもない日常の仕事風景をひたすら配信し、収益を上げているお店もあります。
お店の新しい稼ぎ方
最近よくテレビで見かける、亀戸のキッチンDIVEさんっていうお店をご存知でしょうか。
キッチンDIVEさんはデカ盛りが売りの弁当店。今どきでは珍しい24時間営業のお店です。
このお店、実は店内に定点カメラを設置して、その様子を絶えずYouTubeで配信しているのです。お店いわく、お客さまが弁当の在庫を確認してから来店できるようにするためだそう。
私が気になったのは、果たしてこのチャンネルを見る人って、在庫確認だけが目的なのかなということです。
何しろチャンネル登録者は亀戸の店舗だけでおよそ3万人。
東京という大都市に位置するとはいえ、たった一軒の弁当店のYouTubeのフォロワーにしては多すぎる気がします。
Twitterで少し調べてみると「なんかわかんないんだけどずっと見ていられる」っていう人が一定数いることがわかりました。
そういえば少し前に〇〇ルーティーンっていう、一般人のなんでもない暮らしを撮影した動画が流行りましたよね。あんな感じでしょうか。
もちろん視聴者の中にはお店のファンの方もいると思いますし、お店に行ったことがなくても、店内を生配信しているという話題性から眺めにきている人も多そうです。
あとこれも完全に私の予測なんですが、この3万人の中には、飲食とか、小売とか、なにかお客さま商売を始めたいと思っている人がけっこういるんじゃないかなと思ったんですよね。
なぜかって、よそのお店の日常の風景が見られるなんて、経営のヒントの宝庫じゃないですか。
1時間にどれぐらい来客があるのかなぁとか、どんなお客さんが買いに来てるのかな、何が売れているのかな、店員さんはどんな動きをしているのかなとか。
視察で他店を見に行くことはあっても、なかなかそこまで凝視することはできないですよね。
私もちょっと確認するだけのはずだったのにまじまじと見てしまいました。
本当に、ただただ店内の様子をひたすら流しているだけなんですが、たしかにこれ、けっこう価値があるなと思いました。
閲覧者数の多さからか、youtubeの広告とは別でスポンサーまでついていました。新しい稼ぎ方ですよね。
モノがタダになる時代が現実味を帯びてきた
このやり方をちょっと別の視点からも見てみます。
「プロセスエコノミー(幻冬社)」によると、これからはアウトプットではなくプロセスの時代なんだそうです。
つまり「出来上がったもの」じゃなくて「そこまでの過程」が商品になる時代。
そしてアウトプット商品はどんどん無料化が進むとも言っています。
もはやオカネを取る必要がなくなるぐらい、モノやサービスの価格がことごとく安くなる。生活必需品はタダで配れる時代がやってくるのです。
キッチンDIVEさんのyoutubeの収益は月20〜30万だそうで、これだけでアルバイトの給料が賄えるそうです。
同店は激安が売りでもあります。このように商品以外からの収益があることも低価格を維持できるひとつの要因なのでしょう。
まさしく「アウトプットは無料に近づき、プロセスで儲ける」の良い事例です。
この先モノはタダになるかもねって話を最近よく聞きますが、なんだか現実味を帯びてきた気がします。
成果物としてのモノにお金を払うのではなく、モノを作る過程を一緒に見て楽しんだり、モノ作りに一緒に参加してしまう。プロセスとストーリーを共有する見返りに、おカネを支払うようになるはずです。
キッチンDIVEさんの場合、モノづくりというよりはお店づくり、入ってくるお金は広告主からによるものですが「共創」で収益を得るという意味では同じようなことが行われています。
同店に関するTwitterでのつぶやきををもう一度見てみます。
キリ番(キリのいい来訪客数)を踏むとお店から拍手され、生配信でその様子を見ている人たちからも温かいコメントが送られる。なんだかひとつの世界が出来上がってますよね。
たとえキッチンDIVEの隣で似たような弁当店を出したとしても、世界観まで同じものはそうそう作れない。それが「共創」の凄みです。
こうして店も顧客も一緒になってひとつの活動を盛り上げていくような運営方法が、これからあらゆる事業でメジャーになっていくのでしょう。面白い時代です。
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