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ローカル5Gの明日はどっちだ!④|ICTと社会

前2回に渡って、株式会社リックテレコム主催「ローカル5Gサミット2020」の午前セッションを聴講した内容についてご紹介した。

私は率直に言って、ローカル5Gがうまくいくとは、あまり思っていない。しかしながら、もしかしたら今回のセミナーで、ローカル5Gがビジネスとしてうまくいく可能性が見つけられるかもしれないと期待して参加した。だが、残念ながらというか、やっぱりというか、そのような可能性は見つけられなかった。

私がローカル5Gに懐疑的な理由は、大きく2つだ。

一つは「ローカル」という考え方自体が通信ビジネスに馴染まないこと。通信はどこでもつながることが第一条件。エリア限定でうまくいった例は、あまり思い浮かばない。何か別に広範なネットワークを持っており、その一部にローカル5Gを使うということなら分かるが・・・。

もう一つは、ローカル5Gが目的のための手段になり得るのかという問題だ。

第1回の記事でも掲載した総務省のローカル5Gのイメージ図によると、農業や防災などの地域課題にも活用したいようなことが描かれている。

ローカル5Gの利用イメージ

左側の工場内といった限定的な場所はまだ良いとして、右側に描かれた農業や防災などへの活用の場合、広大な範囲をローカル5Gでエリア化する必要がある。前にも書いたとおり、5Gで使用される周波数は面的なエリア化には向かないため、数多くの基地局を整備する必要があり、ものすごくコストがかかることになる。

また防災にも使いたいとなると、高い信頼性も求められる。大手全国キャリアは、いざというときに使えるインフラを維持するために、設備の二重化や運用体制の整備などを行っており、ローカル5Gでも同様のレベルを求めるとなると、それもまたコストがかかることになる。

つまりローカル5Gによって解決したい課題と、ローカル5Gのスペック(エリア、コスト、信頼性など)との間に重なり合う部分があるのか、ローカル5Gが地域課題を解決する手段・方法になり得るのかが、いま一つピンとこないのである。

役に立つのか

広いエリア化が必要なら、大手キャリアのネットワークを利用したほうが良いのではないか。またそこまでのコストをかけずとも、Wi-Fiなどをうまく使えば良いのではないか。そもそも4G-LTEでもかなりのことができるので、本当に5Gほどのスペックが必要なのか。この辺りがどうもよく分からない。

実は10年ほど前にも地域BWA(地域WiMAX)というのが、一時期盛り上がった。当時の高速モバイルサービスであったWiMAXが使う2.5GHz帯を利用し、誰でもが参入できるというローカル5Gとそっくりな仕組みだ。BWAとはBroadband Wireless Accessの略である。

当時、話題としては盛り上がったが、無線免許をとり、コストをかけて事業参入するケースは少なく、地域のCATV事業者が加入者アクセスライン(ラスト・ワンマイル)の一手段として使うというのがメジャーな利用用途となった。こういった過去の例も見ているので、ローカル5Gも同じ途をたどるのではないかという予想が出てくる。

可能性があるとすれば、執念を持ってローカル5Gにこだわり続け、これを普及・拡大させようとする「誰か」がいるかどうかだろう。前回記事で紹介したBBバックボーンはsXGP(旧ウィルコムのPHSをベースにしたプライベートLTEサービス)にこだわり、これを磨き続けている。通信技術のスペックで言えば、4G-LTEや5Gのほうがけた違いに優れているが、お客様の要望に沿い、お客様をつかんで離さないソリューションを提供できているから、いまだに利用され続けているのだと思う。

これからローカル5Gに参入するプレーヤーが、sXGPのように、仮に世の中の関心が無くなったとしても、地道にしぶとく普及・拡大に取り組んでいくかどうか。

単にブーム的な流れに乗って、マスコミの注目を集めたいだけなら、止めたほうがいいというのが私の意見である。

【ローカル5G関連終わり】

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記事は以上です。お読みいただきありがとうございました。

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