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うつ病体験記21:こんなに話せないんだ、自分となる日々

転職に向けて応募活動を始めたわけだが、とても苦労した。
そもそも前提として、主治医は転職活動についてどう思っていたのか。

意見としては、このような感じだった。

・すぐに働けるとは思えない
・まずは体も心も頭も休息することが重要だ
・でも無職になることへの不安はあると思う
・その不安でさらに不調になったら本末転倒だ
・だから転職活動することで気晴らしや安心につながるならしてもよい

実際に、無職となり、無収入になってしまうことへの不安感や抵抗感がとてもすごく強かった。

妻(当時は彼女)から「収入がなくなってもいいよ、大丈夫だよ」と言われていたが、正直大丈夫と思えなかった。

堅実に貯金してきたタイプなので、お金が底をつくわけではない。
でも、もともとお金が増えることに喜びを感じ、なくなっていくことにとても不安を覚える性格であったので、不安は増すばかりだった。

そのため、結局転職活動をすることにした。
しかし、お金とはまた別のショックを受けることになるのであった。

それが、論理的に話せないことである。
復職期間中もよく論理的に話せなくなっていた。
いわゆるパニック症候群的なやつで、ちょっとでも戸惑うと頭の整理が追いつかなくなる。


もともと論理思考は強かったし、臨機応変な対応は得意だった。
それだけに、できていたことができないとショックだ。

それが面接となると、相手は初対面。
さらに質問もたまに予測できないものがくる。
そうなるとパニック症候群が出てしまうのだ。

臨機応変な対応が得意だったなんて恥ずかしくて言えないくらいパニックマンになる。

幸いなことに、コロナ禍ということもあって面接はほぼオンラインだった。
そのため、カンペを見ながら受け答えができる。

とはいえ、読んでいることはすぐバレるだろう。
だから入念に準備をすることにした。

そうすれば、臨機応変な対応をしなくてすむ。

極力パニックにならないために準備としてやったことは、以下のようなことだ。どれも転職活動においては基本的なことだが、他の人の何倍も努力して準備したであろう。

1、自己分析

「自分が何をしたいのか」という基本的なことから、業務の棚卸し、自己PR、強み弱み、成果を出したエピソードや失敗談などを洗い出した。
そして、よく聞かれる質問に対して、それぞれ300〜400文字程度の文量で回答をまとめた。

自己紹介も200〜300文字程度でまとめておいた。

2、企業分析

求職者として知りたいことをヒアリングシートとしてスプレッドシートに項目をまとめた。

そして事前にホームページや求人票などからわかることを記載した。
転職の口コミや社員インタビュー記事などにも目をとおし、気になった点はメモしておく。

そして逆質問もいくつか考えた。
1社に対して、事前準備だけで1時間はかけていたと思う。

休職中で時間があったことは幸いだった。
考えをまとめる能力や書いてあることを理解する能力が落ちていたのでかなり苦労したが・・・。

3、話す練習


話す練習をひたすらした。
自己分析でまとめた、よく聞かれる質問に対する答えを声に出し、面接を受けているときのように身振り手振りを交えながら練習した。

鏡に向かって笑顔でやっていたので、人には見られないようこっそりと。
そうしていくうちに、実際の面接でも自然な受け答えができるようになっていった。

さらりと書いているが、実際にはそれぞれ結構時間をかけて入念な準備をしている。


その甲斐もあって、調子のよいときは話せる。
しかしそれでも、調子の悪い日やパニックに陥りそうな日はダメダメだった。

毎回の面接で個人的に振り返りをしていたのだが、特に難しかったのが仕事内容の説明だ。

企画職だったので定型的なものがあまりない上に、ビジネスモデル自体も説明が少し難しい。

相手に理解してもらうために丁寧に説明しようとすれば説明が冗長になってしまうし、長くなると論理的に話せなかった。

何回、話の迷路に迷い込んだことか。
そんな気持ちだった。


あるメガベンチャー企業を受けたとき、超ロジカルマンと面接があった。
ものすごく淡々とドライで、成果を出したいという思いが強い優秀な人だと思う。

自分がうまく話せなかった論理の穴を見事に突いてきて、とにかくパニックになった記憶がある。

嫌われたくないという性格もあるので、こうなった面接のあとは地獄のように落ち込んだ。

面接は面接官との相性や面接官のその時の気分も影響している。
そのため、不合格だったからといって人間性を否定されているものではない。

自分だって、合格をもらっていても「なんか違うな」と思ったら辞退するだろう。

焦って合格にしがみついて入社してもミスマッチで入社後に不幸な結果となる。

しかし、このような考えは頭ではわかっていても、心が追いつかなかった。

面接合格したい!
内定がほしい!

焦れば焦るほど自分を追い込むため、うつの症状は良くならなかった。

しかも、親身なエージェントは、アドバイスやフィードバックもちゃんとしてくれるが、機械的なエージェントはひたすら応募させようとしてくる。

転職業界の闇な側面もあるが、「この人に合うだろう」「こっちは合わなそうだな」というスクリーニングもなかった。

自分もうつの症状と合格ほしさに判断力が鈍っているので、闇雲に応募してしまった。

先述のとおり準備をしっかりしていた自分は、闇雲応募により面接準備に追われ、休息どころではない日もあった。
これまた本末転倒である。

焦らず、まずはゆとりを持つこと。
そして、とにかく脳を休ませること。
ちゃんと自分をケアしないとうつ病はまた長引いてしまうから。

たくさん応募してしまい、それなりに面接をしたが、たくさん落ちてしまった。
職務経歴書的にはそれなりの仕事をしてきたし、準備も入念だ。

「いい人」、「優秀だとは思う」という評価の一方で、体調の件で落ちることが多かった。

しかし、ありがたいことに、最終的には3社から内定をいただいた。

1社は、割と有名で上場もしているがゴリゴリベンチャー。
直接スカウトが来て、話を聞いたところ新規事業の立ち上げで、とてもおもしろそうだと思った。

しかし病み上がりの身だ。(いや、上がっていないのだが)
元気だったらここに挑戦したかったが、諦めた。

1社は、社会貢献性が高そうなベンチャー。
エージェントから紹介を受けた。
社会福祉系の事業をしていて、社会貢献性が高そうでいいなと思った。

しかし、職種が新設の職種だった。
病み上がりでいきなり一人でやる職種は結構メンタル削られると思い、諦めた。

1社は、いわゆるホワイトな中堅企業。
友人が人事をやっていて、リファレンスだった。
この企業は昔ながらのIT企業で、残業時間はほぼないと言っていいほど。

世間一般でいうホワイトだろう。
社員も人当たりのいい柔らかいタイプが多い。

親や妻、自分のうつ病の事情を知る仲の良い友人や先輩に相談し、ここに決めた。

2月過ぎてから内定をもらい、3月に入社だ。
この間、1月21日で前職が退職となっていた。

内定が決まるまでの期間は本当に怖かった。
収入がないのは、いつぶりだろう。

存在しちゃいけないんじゃないかと考えることもあった。

しかし、よき友人の縁に恵まれて、無事また働けることになった。
自分は本当に人に恵まれている。

また感謝が止まらなくなった。

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