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Xhanfise Keko『Tomka and His Friends』アルバニア、対独サボタージュ少年団

東欧の子供映画を観よう!企画。ジャンフィセ・ケコ(Xhanfise Keko)はエンヴェル・ホッジャ政権下で唯一のアルバニア人女性映画監督だった。子供映画を得意としており、中編と長編を合わせて生涯で20本以上の作品を遺した他、現在のアルバフィルム・ティラナの原型となる"新アルバニア"映画スタジオ(Kinostudio "Shqiperia e Re")の創設にも参加するなど、アルバニア映画史の中心的人物だった。また、子供映画というジャンルは当局に全くマークされていなかったということもあり、様々実験的な手法を組み込むことが出来たらしい。本作品も街を走る少年たちの移動ショットから幕を開け、双眼鏡の主観ショット、子供の一人が現状を歌い出す、など想像力豊かで自由な映画作りをしている。また、アルバニアのキアロスタミと呼ばれているのも納得できるほど子供描写が上手い。子供たちとのセッションを通じて本人自身の性格を役柄に落とし込んでいくケコのメソッドによって、5人いる主人公集団の性格やその時時の感情が、ひと目で分かってしまう。

トムカたち4人の少年は街外れにある砦跡で、恐らく駐留していたイタリア軍が放棄した武器弾薬を漁るのが最近の楽しみだ。他のグループと競い合って様々な洞から手榴弾や弾帯を回収し、石やビー玉のような感覚で宝物としているのだ。そんな中、降伏して撤退したイタリア軍に代わってやって来たのがナチスドイツ軍だった。そして彼らは少年たちの遊び場である川辺の広場をキャンプ地として占領し、住民たち(主に遊び場を失った少年たち)のヘイトを稼ぎまくる。どうにかして仕返ししてやりたい。
一方、トムカは偶然出会ったイタリア人パルチザンのアントニオを家に匿ったり、夜中に父親の下を尋ねてくる叔父さんを不思議がったり、山の方で活動するパルチザンに衣類を提供する母親の行動を屋根裏から盗み見たりしたことで、自身の中にアルバニア人としての自覚が芽生え始める。という、子供が主人公の映画だが、子供でも悪政に反抗できる!それに性別なんか関係ない!という結構過激な話だった。

また、本作品は動物たちも魅力的に撮られている。トムカたちが大切にしている小さい白黒犬やナチスの飼うデカい黒犬はそれぞれの陣営を象徴するような行動をしており、サボタージュに邪魔な黒犬を排除することが少年たちの第一目標となる。このとき、黒犬に毒入りの餌を与えようとするのだが、食べようとして食べないという焦らしプレイを延々としたり、食べた後のたうち回るのを延々と見せてくるので、"犬のオーバーアクトを見られる唯一の作品"などと呼ばれていて爆笑した。

・作品データ

原題:Tomka dhe shokët e tij
上映時間:80分
監督:Xhanfise Keko
製作:1977年(アルバニア)

・評価:70点

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