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フィナ・トレス『追想のオリアナ』ベネズエラの"エル・スール"は女性の普遍的な戦いを描く

1985年カンヌ映画祭カメラドール受賞作、フィナ・トレス長編一作目。オリアナが亡くなった。その報を受けた姪のマリアは、幼少期に少しだけ滞在したオリアナの屋敷を相続したことを知って、フランスからベネズエラへと飛ぶ。結婚せずに田舎の館に引きこもり、現地人の召使と共に生活していたオリアナ。晩年には模様替えどころか掃除すらさせなかったほど過去に拘った屋敷で、オリアナは何を思って過ごしていたのか?過去と変わらない屋敷を歩き回るマリアは、つい先日のことのように滞在時の記憶を思い出す。そこにオリアナの幼少期も乱入して、同じ形状の屋敷に三つの時代の記憶が混在することになる。片田舎で知らない叔母と二人きりという環境が圧倒的につまらないので、暇つぶしも兼ねた子供の好奇心によって少女マリアはオリアナの隠したい秘密に土足でズカズカ入っていく…という、ビクトル・エリセ『エル・スール』みたいな、私の苦手なタイプの構成…しかし、同作よりも普遍的な"女性への抑圧との戦い"を描いており、その点において三つの時代が同居するという意味も出てくる。また、同作ほど記憶に残るショットはなかったが、ジャン=クロード・ラリューによる陰影を強調した撮影は素晴らしい。特に序盤で埃被った屋敷を訪れるシーンの、まるで記憶の闇に埋もれたかのような真っ暗な部屋のショットが良い。あと、毒親のバカでかい肖像画の前に、生前大嫌いだった花を生けてあるのが好き。

・作品データ

原題:Oriana
上映時間:88分
監督:Fina Torres
製作:1985年(ベネズエラ, フランス)

・評価:70点

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