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フォンス・ラデメーカーズ『The Dance of the Heron』夫を再び振り向かせるために

追悼グンネル・リンドブロム。『かもめの城』の翌年、『Huger』と同年の1966年に製作されたオランダ映画で、リンドブロムも珍しくオランダ語を話している(吹き替えだが)。監督フォンス・ラデメーカーズはポール・ヴァーホーヴェン以前のオランダ映画界を牽引した人物で、1987年に『追想のかなた』でアカデミー外国語映画賞を受賞している。そんな彼がフーゴ・クラウスの同名戯曲を映画化したのが本作品。共演はフランス人俳優ジャン・ドザイーというかなり国際色豊かな配役で、国外配給を意識した作品のようにも見える。物語はオランダ人夫婦が夫の母親とともにユーゴの海岸にある別荘に遊びに来るというもの。夫エドワールは若い妻エレナの一度の不貞から彼女を信じることが出来ずに無下に扱い、彼女は夫からの愛を取り返そうとオランダ人観光客を間に入れて誘惑し、夫を嫉妬させる。グンネル・リンドブロム、またこんな役やってんのか!

全体的にもっさりした舞台劇という感じで、ロケーションも全く使えずに勿体ない映画ではあったが、"私行くよ?いいのね?"と言って夜の街へ繰り出していった妻のことを考えながら自殺を考える夫と、それにアドバイスをしながら"こんなに背が高くなったのね"と言う夫の母親の情景は中々心に迫るものがあった。また、翌朝帰宅した妻に自殺を見せようと準備している時に、気怠げなメイドと目が合う無言の数秒の滑稽さが異常。ラストの風にスカートをはためかせるグンネル・リンドブロムの佇まいは出演作でも指折りの名シーンであり、少なからず収穫はあったように思える。

英題の"アオサギの舞い"とは、劇中で披露される民族舞踊である。あんなに楽しそうに踊っているリンドブロムを見たのは2年前の『ガールズ』以来なので、ちょっと嬉しかった。

・作品データ

原題:De Dans van de Reiger
上映時間:92分
監督:Fons Rademakers
製作:1966年(オランダ)

・評価:60点

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