20230412

 『アナザーラウンド(DRUK)』を観た。マッツ・ミケルセンのダンスが話題になったことで記憶している。デンマークの高校教師が仲の良い同僚たちと血液中のアルコール成分が〇・〇五パーセントである状態が一番人間として幸福な状態であるという哲学者の提言を実践しようとして、全員がアル中に陥ってしまうというコメディタッチながらも、家族関係や閉塞的な社会風情などを描くヒューマンドラマだった。冒頭からキルケゴールの言葉を引用していて、キルケゴールはクライマックスで重要なモチーフにもなるところからも極めて哲学的命題にフォーカスしていたと思う。なにより、わたしの父もアル中で幼い頃はベッドに入った頃に酔っ払って帰宅し、わたしと弟に無理やり絡むという状態があって個人的に思うところも大きかった。この映画でも描かれるが、結局アルコールは依存症になる可能性が極めて高く、そうなると社会生活に悪影響を及ぼすリスクの方がメリットよりも極めて大きいという結論にこの映画でも至る。父は今でも毎日飲んでいるが、路上で寝たりしていた頃のことを思えば、いくらかまともになったと思う。幼い頃は父の抱えていたものについて知る由もなく、ただの酔っ払いのイメージしかなかったが、わたしもあの頃の父の年齢を超え、父がどういう経緯でアルコールに依存していったのか、今なら少しは想像できる。結局、こうした問題に時間が必要なことはそういうところに起因するのかもしれない。

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