見出し画像

はじめてカスタマージャーニーマップに向き合った日に読む話

こんにちは、コニカミノルタジャパンの名畑です。

「カスタマージャーニー」ってマーケティングを少しでもかじったら絶対に出会います。

学校の授業や、新卒のワークショップで、みんなの知っているあのおいしいコーヒー屋さんでの体験や家庭で役に立つ生活必需品などをテーマに、グループディスカッションで、付箋にたくさん書き出したり、マップにまとめる際にお客さんの表情アイコンや感情グラフなど書き足したり、自分や友人のエピソードを思い出しながら、楽しいワークだなあと思ったことを覚えています。

それなのに、いざ、BtoBマーケ担当になってすぐには、カスタマージャーニー描かなきゃとは、思わなかったんですよね。漠然と「あの楽しいやつは、それはそれ」と思っていたというか。

同じように、本当にビジネスに役立てられるマップを描けるのは一部の専門家だけでは?そもそもBtoCとは違うし意味あるの?と思って手をつけられていない方も多いのではないでしょうか?

さて、今回は、みなさまの“やって意味あるのかわからないから手を動かせない”を“やってみるか”に変えたいコラム第2弾、カスタマージャーニーマップ作成編です。

まだ、ペルソナを作っていない方はまずはこちらから

※すぐに手を動かして作成したいやる気100%の方は、こちらをぜひお手元に。

👉 ペルソナ・カスタマージャーニーマップの作り方(PDF形式)
※クリックいただくとPDFが別ウインドウで開きます


BtoBマーケティングのカスタマージャーニーマップ、なぜつくる?いつ使う?

カスタマージャーニーマップを使うタイミングは、企画をするときです。顧客視点に立った施策やコンテンツの企画を行っていくためにつくります。

こんな風にしてコンテンツを作っていないですか?

カスタマージャーニーマップをつくることでこう変わります。

ペルソナ・カスタマージャーニーマップは、戦略的に顧客視点に立った施策やコンテンツの企画のために必要不可欠なのです。

ワークショップをやってみよう

カスタマージャーニーマップの作成には、数人が集まって付箋に意見を書き出しながら整理していくワークショップの形式で進めることをおすすめします。

カスタマージャーニーマップを作る流れ

各項目ごとの目安時間をいれていますが、はじめてワークショップを行う場合には、半日ほど確保しておけば問題ないと思います。

意見を出し合う時間は短すぎず長すぎず、盛り上がって時間が足りないような場合には延長しても良いですが、意見が出ないからとだらだら続けてもあまり意味がありません。ここで完璧にまとめることがゴールではないので、一度区切りましょう。

ワークショップに必要な環境・メンバーについて

リアルの場で複数名集まっての実施を推奨しています。ワークショップに必要な環境は上記のとおりです。

また、ワークショップに参加するメンバーですが、実際にコンテンツを企画作成するメンバー(マーケター含む)だけでなく、インサイドセールス、営業、カスタマーサクセスなどの、営業でお客様と直接会話の機会があるメンバーに参加を募ると良いと思います。
お客様から実際に言われることをワークショップの場で共有してもらうことで、リアリティのあるマップが描けますし、ワークショップをとおしてメンバー間で共通認識を持つことができます。

ワークショップへの参加が難しい場合には、事前にマーケターがヒアリングをしておいたり、作成後のマップを見てもらったりして、必ず共有するようにしましょう。

それでは、さっそくワークを始める前に、ワークショップのグランドルールです。

ワークショップ開催の心構え

  • 字は誰が見ても読めるように丁寧に書きましょう

  • 1つの付箋に対して1つのメッセージを書きます

  • 人の意見を否定せず、楽しく意見を発散していきましょう

  • 同じ意見が出ることもありますが、なるべく新しい意見を出すように心がけましょう

  • 建設的な意見出しにしていきましょう

  • 話は簡潔にお願いします

  • 切り口を変えて考えてみたり、皆さんの意見にも耳を傾けてみましょう

  • 正解、答えがあるものではありません。

複数名でディスカッションを行うには当たり前のことかもしれませんが、議論がヒートアップしてつい、ということがあるので、ワークショップのファシリテーターは最初にきちんと提示して、あくまで楽しく意見を発散する場であることを、印象づけておくと良いと思います。

1.ペルソナの設定 20分

ペルソナはカスタマージャーニーマップ作成ワークの前に作成しておくと良いと思います。事前に作成してある場合には、メンバーで読み合わせて、改めてメンバー間のペルソナの認識にずれがないか確認しておきましょう。
作成が古い場合、その場でアップデートの議論となることもあります。

ペルソナ設定の解説はこちらでしていますので、本章では割愛します。

2.テーマの設定 20分

ペルソナが手元にある、メンバー全員が共通のペルソナを思い描ける状態でスタートです。
まずは、カスタマージャーニーマップが対象とするテーマと範囲を決めます。

・対象とする商材・サービスは何にしますか?
・その商材・サービスをめぐるジャーニーの「スタート」と「ゴール」のペルソナの状態はどういうものですか?

スタートとゴールの設定について、顧客は「課題を抱えた状態」でスタートし「解消された状態」がゴールになることが多いです。

「〇〇ができなくて困っている」「上司からプロジェクトを任された」といった課題を抱えた状態でスタートし、これが解決された状態がゴールとなることが多いです。ゴールについては「ツールが導入され〇〇が解決された」「売上が〇%上がった」というように客観的に計測可能な内容を設定しましょう。

また、「スタート」から「ゴール」までのおおよその期間も認識をあわせておきましょう。上記のとおり「課題を抱えた状態」でのスタートであるということは、必ずしも商品やサービスを知っているところからのスタートになるとは限りません。つまり、スタートからゴールまでの期間は製品を知ってから購入するまでよりも、長くなると考えられます。自社と接点を持つ前の顧客行動、製品購入後の顧客行動にも考えを巡らせましょう。

ただし、認知から導入、契約更新、アップセルまでというように、最初から顧客ライフサイクル全てを網羅しようとすると複雑になるため、5ステップ程度の期間になるように考えてみましょう。

3.顧客の行動を洗い出す 30分

次に、2.で設定した「スタート」と「ゴール」をそれぞれ付箋に書き、スペースの両端に置きます。その間でペルソナがとる行動を書き出しましょう。

・ペルソナはどんな行動をとりますか?

付箋1枚に1つの行動を書きます、例えば「Webで○○というキーワードで検索する」「担当営業から見積もりを取得する」などです。

ここでは、とにかくたくさんの顧客行動を書き出すことが重要です、整理する工程は次のステップになるので、この時間は、似たようなアイデア、同じアイデアがたくさん出ても良いので、とにかく書き出すことに集中しましょう。

もし手が止まってしまうようであれば、一度メンバーでアイデアを共有する時間を取ったり、記入した付箋を全て並べてディスカッションした後に追加していくと意見出しが活性化します。

付箋1枚に1つの行動を書きますが、できる限り具体的に書きましょう。

例えば「調べる」という行動であれば、「〇〇というキーワードで検索しヒットしたページを調べる」「SNSで口コミを調べる」など「何で・どういうふうに」と深堀して具体的に書き表しましょう。

同じ行動であっても、スタートからゴールの間の位置によって意味合いが異なっていたり、重要度も変わってきます。

4.顧客の行動ステージを設定する 15分

次に、3.で書き出した付箋を「スタート」と「ゴール」の間に時系列で並べて行きます。同じ内容の付箋はまとめたり、同じタイミングで行われる行動は縦に並べて、グルーピングします。

時系列に並べて行くとある程度まとまった「ステージ」があることが分かります。並べた行動から「ステージ」毎に名前をつけましょう。

・行動はどんなグループに分かれますか?
・グループの時系列にどんな名前をつけますか?

例えば、「Webで〇〇というキーワードで検索する」「〇〇EXPOなどの展示会へ行く」という行動群には「情報収集」というようなステージ名が良さそうです。

そうして、「スタート」から「ゴール」までの間の行動を「ステージ」に分けて繋げていきます。

模造紙やホワイトボード上で作業している場合は、ステージ毎に区切り線を引いておくと分かりやすいです。一通り整理がつくと、ある程度全体像が見渡せるようになります。そうすると、あるステージから次のステージまで飛躍しすぎている、などの発見があります。実際の顧客行動をイメージし、足りていない行動やステージがあれば追加し、穴を埋めましょう。

ステージは必ずしもスタートからゴールまで直線的に進みません。「情報収集」「比較検討」のステージをぐるぐる繰り返したり、途中で「課題発見」し最初のステージに戻ったり、スタートからゴールまでのステージは必ずしも直線的に進まないことがあります。
行動をグルーピングしステージの名前をつけたら、ペルソナがたどるステージのイメージを全体でディスカッション、共有すると良いです。視覚的に分かるように、模造紙やホワイトボードに補助線を引いたりしておきましょう。

5.顧客の感情の起伏を想像する 20分

4.で洗い出した顧客の行動付箋は上の方に寄せて、スペースを作ってください。

次に、各ステージで、各行動に伴って、ペルソナが抱える感情を書き出します。その感情が「ポジティブ」「ネガティブ」「ニュートラル」のどれか分かるように、付箋の色を分けたり、端に「ポ」など目印をつけたりしておくと後に整理しやすくなります。

・ペルソナはどんな感情になりますか?

「困った」「嬉しい」といった感情だけでなく、「製品の種類が多くて自社にマッチするものが分からずに困っている」「稟議がとおり予定どおりプロジェクトが進められそうで嬉しい」というように、書き表していくと、後段のSTEPで対応策を考える際のヒントになります。

思いつかない時には、そのステージの全体をみるのではなく、一つの付箋に注目してその時の感情を記載していくと書きやすいです。様々な行動をひとつひとつ注目しながら感情を記載しましょう。

まずは、特定の感情に偏らないようにアイデア出しは進めていただきたいのですが、実は「ネガティブ」感情こそ、対策をとって「ポジティブ」感情に変換させられる大チャンスです。アイデア出しが滞ってきたら「ネガティブ」感情に目を向けてみましょう。「ネガティブ」感情を解決することを念頭におくと、コンテンツ制作を行うヒントになります。

6.顧客接点と自社の行動を明確にする 20分

顧客の行動と感情を洗い出し、スタートからゴールまでのステージが整理できた状態でカスタマージャーニーマップ自体は完成です。次にこのジャーニーに沿って、各ステージ毎の顧客の課題やネガティブ感情を解消する打ち手(=対応策)を考えます。これがマーケティングの施策となります。

・自社と顧客のすでに持てている接点は何で、どんな対応ができていますか?
・まだ持てていない接点やできていないがすべき対応はどんなものがありますか?

その前に、カスタマージャーニーを整理し終えたところで、各ステージでの顧客との「接点」を整理しておきます。接点は顧客目線で考えます。すでに持っている接点、その接点に対して対応できている内容をまずは書き出します。次に、カスタマージャーニーを見渡して、現在は持てていない接点があれば追加して現状と理想のギャップを可視化して、メンバーで認識あわせしておくと、次のステップがスムーズに進められるかと思います。

時間がない場合は、スキップして次の「対応策を検討する」ステップに時間をかけましょう。

7.対応策を検討する 30分

最後に、企業視点で「打ち手」を考えます。

例えば、顧客のネガティブ感情が強くなっている部分に注目し、ポジティブ感情に変わってもらうために自社ができることを考えます。

他にも、マップを縦に見て、各ステージ毎に課題となっているものを見つけ、対策を考えたり、マップを横に見て、次のステージに進むために大きな壁となっているものを見つけ、その段差を埋める施策を考えたりします。

こういった課題がマップから見つけ出せない場合、本当に課題が「ない」のか、行動や感情に「書き漏らし」がないか改めて見返しましょう。

この時考える対応策は「行動」です。「受注率が低いので上げる」は行動ではなく、「上げるために何をすべきか」を考えます。

発想が小さくならないように、この段階では実際に「できること」ではなく、マップから読み解ける「すべきこと」を挙げだします。実現性は次の計画立案時に整理します。

おわりに

お疲れ様です。1.~7.までの長いワークをとおして、ホワイトボード、模造紙いっぱい付箋がついた状態で終了しているかと思います。あともう少し、記憶が新鮮なうちに、データ化してまとめておきましょう。

👉 フォーマットをこちらに用意しています(Excel形式)
※クリックいただくとダウンロードが始まります

この勢いで、コンテンツ作成の計画表も作成してしまいましょう。
理想を挙げだして終わっていては意味がありません。実現可能な計画に落とし込んでいったん区切りです。

コンテンツ作成の計画表は洗い出した「対応策」毎に実現難易度や対応優先順位をつけて、実施判断、制作スケジューリングを行います。

顧客の検討状況を読み解ける「キラーコンテンツ」は優先順位を高めて対応すると効果的でしょう。
例えば、サイトの訪問数だけでは一概に興味関心度合いは言い切れませんが「見積もりシュミレーション」コンテンツがあれば、このコンテンツへアクセスしているということは、価格の情報収集段階であり、導入意向がある(or高い)ということが読み解けそうです。

このように、カスタマージャーニーマップは施策立案に直結するアイテムですので、半期に1回、1年に1回、ペルソナとセットで見直し、アップデートすることが必要です。

施策に行き詰ったとき、メンバー間で意見が割れたときに拠り所となるマーケターのお守り的アイテムがペルソナとカスタマージャーニーマップなのではないでしょうか。

ご相談・お問い合わせ

コニカミノルタジャパンではマーケティングの自社実践によるナレッジ・ノウハウを活用し、お客様のBtoBマーケティングの戦略策定や伴走支援マーケティングオートメーション導入マーケティングサイト制作支援など幅広くご支援を行っています。
マーケティング組織の運用や成果を出すための施策実行に課題を感じている方はお気軽にご相談ください。

お役立ち資料

マーケティング目線のペルソナ・カスタマージャーニーマップをつくろう!:資料ダウンロード

👉 関連資料のダウンロードはこちらから(PDF形式)
※クリックいただくとPDFが別ウインドウで開きます

マーケティング担当者が知っておくべきこと:資料ダウンロード

※前編・後編の2つがあります。

記事作成者のプロフィール 

名畑 瑠奈 コンサルタント
新卒で大規模サイトリニューアルプロジェクトやサービスページ企画制作などのディレクション業務に約3年従事。
現在はMA領域においてPardotスペシャリストとして大手クライアントのPardot自走支援を担当。
また、Web領域でのコンテンツ制作の経験を活かし、デジタルマーケティング部門のマーケティングチームを兼務、Web施策のディレクションおよび、Webコンテンツ、MA運用のオペレーションサポートを行っている。


この記事が参加している募集

#マーケティングの仕事

6,941件