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「推しの子」 18話 太陽:ぼくらは、今、すごいアニメを見てる

*完全ネタバレありです。というか見た人向けに書いてます・・

昔、「化物語」のオーディオコメンタリーで。
阿良々木暦役の神谷浩史さんが、「アニメは総合芸術だ」という言葉をよく使っておられて。
ぼくの大好きな言葉なんですが。
この「推しの子」というアニメを見てると、ホントにそうだな~と思います。

だって、1期から通して、オープニングもエンディングも(特にエンディングの入り!)。
絵も劇伴も、声優さんの演技も、原画さんの演技も。
時折混ざる、尋常ではない絵のクオリティも。
転生+復讐劇の上に乗っかる、芸能界ストーリーという構造も。
そのリアルすぎる芸能界の裏表事情も・・。
全部一級品だと思ってるんですが。

この18話「太陽」については、もう圧倒的に、演出のうまさ・センスのよさ・熱量の入り具合が飛び抜けてましたね~!!

ということで・・。
今回、ぼくが一番気おされてしまったのは、鬼の仮面をかぶった鞘姫でして。

鞘姫が黒川あかねの心情を演じるシーン

炎の海を見下ろした後、鈴虫が鳴く渡り廊下を歩いて、部屋に正座して、仮面を外すシーンに。
一回目見たときは、何が起こってるのかついていけず、アタマの中が混乱してました。

ここだけ、シネスコサイズっていうんですか?
画面のタテ:ヨコ比が変わっていて、通常と別の意味を持たせてるんですが。
コレ、きっと、東京ブレイドの舞台にはない空想シーンで。
舞台キャラの「鞘姫」が、リアル人物の「黒川あかね」の心情を演じてたんですよね~?

有馬かなの太陽のような演技を見たくて、有馬かなのためによかれと思って演じた自分の演技が、逆に彼女を引かせてしまって。
その取り返しのつかない失敗の状況を、火の海に例えて、静けさの中で落ち込む黒川あかね・・。

そんなリアル世界の人物の心情を、演じる対象であるはずのキャラクターが演じるって・・そんなん、見たこともない!
ここは、2回目を見て自分の中でそんな解釈ができたときに、ゾワゾワッ~と鳥肌立ちましたね~。

それと前後しますが、黒川あかねの舞台の最中の回想で、有馬かなの過去と今の心情をたどった後に。
いきなり、鞘姫の姿でツルギと向き合って、「そんなのダメだよ」と普通のトーンで言い放つシーン。
それまでの有馬かなの明るい表情と穏やかな劇伴がブツっと止まって、二呼吸おいて、怖い顔の鞘姫が現れる・・。
ぼくの体がブルっと震えちゃいました。

体がブルっと震えちゃいました

その後で、黒川あかねの目が星野アイの目になって、「一緒にぶつかってきてよ!」と心の中で叫ぶ。
魔法少女の変身シーンみたいに、クルクル回りながら。
鞘姫が黒川あかねに、そして幼い黒川あかねに変身していくシーンにも、引き込まれました。
前話の鳴嶋メルト君のときもそうだったけど、見てる側が、どんどん黒川あかねに同化していきます。

鞘姫→黒川あかね→ロリ黒川の変身シーン

そして、「押しの子」名物の「引き」が今回もカッコよくて。
「本気のかなちゃんに勝ちたいの」という黒川あかねの絵が、劇画チックになって。
いつものツンタカ♪ツンタッ♪っというドラムのイントロが入り。
いつものデザインのエンディングのパネルの中に「太陽」の文字を見たときに。
またも体がピクッとなっちゃいました。

「太陽」とは、黒川あかね視点で、本当の有馬かなの姿を形容した言葉であり。
黒川あかねの演劇活動を支えてきた言葉だと思うので、重いな~と。
でもその前に、アクアの「有馬は・・輝いてるのに」というセリフにふくれる黒川あかねが、一瞬かわいいのも見逃せません。

有馬かなの話をしてるのだけれども、その語り手はずっと黒川あかね。
その黒川あかねの描写が、これでもか!というほどにえげつなかったですね~。

まあそれと、これも記事の後半で話すレベルのことじゃなくて、スっゴイことだと思うのですが。
「東京ブレイド」という回転舞台の描き方が、半端なかったですよね??

原作のマンガでは、マンガとしての制約として、なかなか舞台自体の表現が難しかったのだろうけれども。
本作では、舞台演劇のアニメをまるまる新しく作ってるでしょ?というレベルで作りこんでる。
コレ、半分、オリジナルアニメでしょ?みたいな・・。

再三、「引き」の構図で舞台全体の様子を描いてたり。
ブレイドやツルギ、匁(もんめ)のセリフをイチから作って、お芝居させてるし。
釣り糸で演技するアクロバットシーンが入ってたり。
観客席が回転するのに合わせた役者の演技があったり・・。

とてもダイナミックで、この舞台自体のアニメを見たくなるほどなんだけど。
こんなん、原作マンガには一つもないもんね~。

制作陣の方々は、ホントに半端ない熱量とアイデアで、「総合芸術」をクリエイトしてくれているのだろうと推察します。
テレビアニメの評価の基準・ハードルを、劇的に上げていると思うし。
この作品は、アニメというカテゴリーから開放されて。
(映画やドラマと区別のない)エンターテイメント作品として、世に出てもらいたいなあ~と心から願っています。

・・ということで、また来週もこんな熱量で記事を書いてるかもしれません。
では、また~。

<見出し画像につき>
黒川あかねが描く、「太陽」な有馬かなのイメージです。


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*当方、本記事にて営利活動は行っておらず、プロモーションのお役に立てればと思っていますが、著作権とかで問題があれば、すみません。即座に対応いたします。

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