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【長編小説】熊の飼い方

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新社会人になり、不安と期待を寄せる青年。 一方で平凡な毎日に飽き飽きした青年。 そんな二人の青年の苦悩と不安を描いた小説。 ※フィクションです。登場人物や団体は架空のものです。
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熊の飼い方 10

熊の飼い方 10

影 5

 鉛筆を置き、天上を見上げる。赤かった世界がいつの間にか闇の世界に変わっていた。ただ人工的な光があたりに溢れているだけだった。ここには何もない。僕の心と同じようだ。この建物は抜け殻だ。そして僕も。人間とは何なのだろう。動物とどこが違うのだろう。食べて、排泄して、寝る。違うことと言えば、働くことと話すことぐらいだ。この働くことと、話すことは自分にとっては作業になっているため、僕は人間という

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