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グライダー

所在なくネットをめぐり
徒に時を持て余してる
裏通りの舗装工事は
忙しなくコンクリを削ってる

過ぎていく月曜の午後
夕陽に間延びしていく影
この部屋も 約束も 理想も
全部いらなくていい気がして

しばらく振りに漕ぎだした自転車は
タイヤの空気が足りなくて
宮前の長い長い登り坂は
ひとしずく 汗が流れた

思い通りのはずの未来
どれくらい漕いでいけるのだろう
ちらつく春の向こうから
はしゃいだ子供がやってくる

プラネタリウムの帰りらしい
なんとなく避けるように
通りすぎる 無邪気な願いが
たった一つだけでも叶えばいい

初めて望む あの街の見晴らしに
何かが変わると期待して
向ヶ丘の少し粗い登り坂は
仄白く息を切らせた

瞳を青空にさらせば
すすけた夢が
視界に付きまとうんだ

見渡す限りに広がる東京は
思ったよりずっと平たくて
時代にはぐれて 等身大に迷う僕を
重ねる場所がないんだ

暮れていく空に 想いをなびかせて
ふわふわと浮いてる 小さいグライダー
北風に 声をはじかれて
ゆらゆらと 揺れてる 茜のグライダー

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