それって、あひるのおもちゃをきれいに並べるだけじゃないの?
みんな忙しく仕事しているが、それって、あひるのおもちゃをきれいに並べるだけじゃないの?
この本で、セス・ゴーディンは言う。
ビジネスサーフィンの時代だ。サーフィンと他のスポーツの唯一の違いは、「足場が動くこと」。サッカーであれ、野球であれ、バスケットボールであれ、足場は動かない。サーフィンは、相手が波だ。動き続けている。
いまぼくたちが置かれている環境は、まさにサーフィン。
あ。サーフィンが何かわからない人のために、図を掲載しておきます。これです。
足場が動く、というのをどう理解するか。
経営の前提が動くということだ。
もちろん、商いは、ビジネスは、人が人に対して行う営み。
当然変わらないものがある。
ただ、観察し、考察し続けなければならないものがある。
それが、「自社の置かれている文脈」だ。
それは何によって得られるかというと、「IN」。
SNSがにぎやかなので、みんなやれインスタだのYou Tubeだのの発信「OUT」に懸命になっているが、OUT、もっというとクリエイションのためにはインプットが重要なのである。しかも、膨大なインプット。
塾生たちに「どうやってるの?」と聞くと、驚くほど少ない。
新聞さえ読まない人がいる。
たとえば、カフェやっている人であれば、日経のこの記事は読んで欲しい。
コメダ、スターバックス、ドトール、ほか、外食産業の損益分岐点などの比較が得られる。
損益分岐点は低いほど経営的には良い。
簡単にいうと、「たくさんお客さんが来ないと儲からない」のが損益分岐点が高い店。「ほんの少し来てくれたら、そっから先は丸儲け」というのが損益分岐点の低い店。
それにしても、70%から90%というのは、これでよくやってるなあ。損益分岐点が高すぎる。このデータはコロナ前だから、現在はもっと高くなっているはずだ。人が集まらないため、シフトが組めないので。
コメダ、ドトール、スターバックス、それぞれ、コンセプトが違うにもかかわらず、その違いを無視し、「カフェだから」と比較表を作っているのはいささか乱暴だ。
「自分のやってるカフェのコンセプト」が似ているか同じところを読み解いていく。
この、「自社の置かれている文脈」の確認を、外からの情報をもとにやると同時に、「読み解き」が必須だ。
たとえば、「ゆったりくつろいでほしい」というコンセプトであれば、コメダとスターバックスが似たコンセプトだ。しかし、この記事にあるコメダは、95%がフランチャイズなので、参考にならない。コメダを参考にしてしまうと、誤る。
参考にするとすれば、スターバックスだ。
スタバは創業以来「直営」にこだわっている。
競合他社からすれば「ばっかじゃないの?」な戦略だ。
フランチャイズにすれば、エリアの商圏(どんな人が住んでいるか、交通量はどうか・・・)に詳しいオーナーが手を挙げてくれる。本部がわざわざリサーチする必要がない。
でも、スターバックスが直営にこだわったのは、「第三の場所」として、ゆったりした時空間を味わってもらう、ということだった。そのためにはスタッフの教育が欠かせない。フランチャイジー・オーナーにとって「今日来たけど、明日来ないかもしれないアルバイト」に教育投資する気になれない。そうなると「スターバックス」ブランドが成立しなくなる。
だから、直営にこだわった。アルバイトにも健康保険を支給した。投資家たちからは最後のさいごまで反対されたのだが。
しかしこの「ばっかじゃないの?」が、長く参入障壁になったのだ。
「投資家は融資してもらった金融機関だけ、家族経営でなんとかやっていきます」というカフェであれば、スターバックスの戦略を成立させている構成要素を解きほぐし(立地、店舗デザイン、ロゴデザイン、メニュー、スタッフ、接客ポリシー、決済手段、リピートのための施策・・・)、抽象化させ、それを自社にどうやれば取り入れられるか考察するのがおすすめ。
その文脈の読解とスターバックスの読み解き、抽象化はそのまま金融機関へのレポートとして使える。いざ、というときの融資増額に役立つはず。
これがビジネスサーフィンの中のサバイバル術だ。
ところがみんなこうやって考える時間を取らない。社長までが代表取締役担当者(笑)として現場で何かやってる。ところがよく見ると、あひるのおもちゃをきれいに並べるだけだったりする。
INに時間を、取りましょう。
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