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「人的資本経営を学校教育で考えてみる」で伝えきれなかったこと(ソノスタ第4回補足)

人的資本経営について考えを深めてみようシリーズの第4回が公開され(てい)ました!(公開から補足を書くのに2ヶ月がかかってしまいましたすみません、、、)

詳しくは以下を聞いていただければと思うのですが、第4回では人を資本としてその価値を膨らませていこうとした際に、学校教育の中ではできていないことや、これからはもっとこういったことをしていった方がいいのではないかといったことが語られています。

自分で話をしていてなんですが、今、聞き直してもとても発見が多く、また私以上に、シゲさんや、マサキさんが熱く語っていて、とても面白い会になったのではないかと思います。

子供を対象とした話をしているのですが、
「興味開発の重要性」
「アウトプットとアウトカムの違い」
「アウトカムを生み出すのは情緒性!」
「人の力を引き出すドライビングクエスチョン」
といったキーワードは子供だけでなく、大人の学びにおいても、非常に重要なポイントになってくるなと思いました。

私も、大変、勉強になった会なので、ぜひ聞いてみてもらえたらと思います。

こちら、繰り返し出てきていた探究学舎さんのウェブサイトも併せてご案内しておきます。



そして、今回も、私が放送の中で伝えてきれなかった点と、改めて伝えたかった点を補足しておきます。

まずは、伝えてきれなかった点について

教育基本法で言及されている教育の目的について

冒頭3分程度の間で、学校教育の目的について以下のようなやりとりがありました。

まさきさん「学校では、定められたカリキュラムを果たすことが第一目的にあるかなと思っていて、能力開花とかキャリアについては入っていないのではないか」

私「入っているかもしれないんだが、全然、主とはなっていないっていう感じですね」

これ、実際、国の定義としてどう表現されているのかについて、ここで確認しておこうと思います。

以下は教育基本法の一番上、第一章に置かれている第一条「教育の目的」と第二条「教育の目標」第三条「生涯教育」からの引用です。

第一条 教育は、人格の完成を目指し、平和で民主的な国家及び社会の形成者として必要な資質を備えた心身ともに健康な国民の育成を期して行われなければならない。

第二条 教育は、その目的を実現するため、学問の自由を尊重しつつ、次に掲げる目標を達成するよう行われるものとする。
一 幅広い知識と教養を身に付け、真理を求める態度を養い、豊かな情操と道徳心を培うとともに、健やかな身体を養うこと。
二 個人の価値を尊重して、その能力を伸ばし、創造性を培い、自主及び自律の精神を養うとともに、職業及び生活との関連を重視し、勤労を重んずる態度を養うこと。
三 正義と責任、男女の平等、自他の敬愛と協力を重んずるとともに、公共の精神に基づき、主体的に社会の形成に参画し、その発展に寄与する態度を養うこと。
四 生命を尊び、自然を大切にし、環境の保全に寄与する態度を養うこと。
五 伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛するとともに、他国を尊重し、国際社会の平和と発展に寄与する態度を養うこと。

第三条 国民一人一人が、自己の人格を磨き、豊かな人生を送ることができるよう、その生涯にわたって、あらゆる機会に、あらゆる場所において学習することができ、その成果を適切に生かすことのできる社会の実現が図られなければならない。

https://www.mext.go.jp/b_menu/kihon/about/mext_00003.html

上記を読むと、我々が冒頭、話をしていたような「能力開花やキャリア形成においては触れていない」というとそれは誤りで、「抽象度の高い表現にはなっていますが、しっかりと定義されている」というのが正しい理解になってきます。

ここと照らし合わせると、冒頭の我々のやりとりは間違ったものになるわけですが、私が伝えたかったのは、定義があるかどうかというよりは、日常的な運用の方でした。

教育基本法ではたしかに定義されていたとして、では、学校における日常的な時間においてこれがどれだけしっかりと意識されて運用されているかというとちょっと別の話になってきます。

これがあの放送で語られている「主とはなっていない」という言葉で私が伝えようとしていたことです。

ちょうど企業経営において、パーパスやビジョン、理念といった要素でしっかりと表現されているのだが、実際、日々の職場でそれが強く意識されていたり、それに基づいて行動が生まれているかというそうではなく、行われていることは短期のKPIの達成率の確認ばかりで、パーパスや理念というのは遠い存在、というものに近いかもしれません。

学校だけでなく、企業でも同じようなことが起こるのは、理想と現実のギャップがいかに大きいかということを物語っているように感じます。

放送中でもいっていますが、現状の学校は、すでに今やるべきことをやるので手一杯というところもあるので、学校だけに任せずに、子供を取り囲む保護者や大人が一緒になっていかに理想に近づけていくかが鍵だなと思います。

前回の放送で一番伝えたかったこと 

そして改めて、私が前回の放送を通じて、一番伝えたかったことを言うと、以下の2つになります。


1つ目


1つ目が、人的資本という切り口から学校教育を見ていくと、学校の中で評価されていることはかなり限定的なものになっていて、また価値が膨らみにくい状態になってしまっているのではないか、ということです。

学校教育では、主に国、算、理、社といういわゆる4教科を中心とし、テストを通じて評価が行われていくことが一般的です。だいたい学期ごとに通知表が発行されて、親がそれに一喜一憂をし、子供もそれを通じて自分の性質を理解し、自分なりの解釈をもっていきます。

もちろん、4教科以外にも体育や図工、音楽など、さまざまな教科も評価されていますし、部活動や学校祭などの行事での活躍の様子も評価項目には入っているわけですが、主要科目以外への評価は、低く扱われてしまいがちです。

主に受験システムの影響が大きいのだと思いますが、一部、親にせよ、先生にせよ、子供にせよ、受験の教科にあるもので成果が出ていると優秀と評価され、それ以外は評価が低くなっていくバイアスを感じます。

また評価を行う際のスタンスも大きなポイントになってくると思います。

主に学校では、ペーパーテストにおける減点主義という形で評価が行われていきます。このやり方をした場合、できる子はモチベーション高く、興味を持つような状態になっていきますが、できない子は興味や自信を奪い取るような状態になりやすいです。

人的資本経営においては、本来であれば本人が持つ何らかの1つ目の価値が土台となる資本となり、そこから次の価値が生まれ、また次の価値が生まれ、というように資本を増やし続けていくことが大事になってくるわけですが、このやり方だと、円滑に資本を高めていくのは難しい部分が多いでしょう。

ポッドキャストでも触れていますが、子供の才能は多様であるという点や、シゲさんが共有してくれた探究学舎が取り組もうとしている「興味開発」という観点からも、人間には(子供だけでなく大人も含めて)興味関心を持てば、さまざまな領域で求められている以上に自分でどんどんと掘り下げていく力があります。

そういった点から考えると、今の学校教育が子供の人的資本を上手に膨らませていけるようになるためには、いくつか修正しなければならない点があるように思います。

また、これはもう何年も前から言われていますし、放送内でも触れられていましたが、ICT技術の発達により、人間に求められる役割は大きく変わってきています。特にここ1年はAIの発達によりこれまで以上に大きく役割が変わってきているといって間違いありません。(悲しいかな、スムーズに変われている人は少数かもしれませんが)
我々が放送で話をしていたように、もしかしたら、これからは人間の情緒をいかに上手に取り扱っていけるかの方が重要性が高まっているのかもしれません。

そういった意味では、4教科のスコアが引き続き重要なのは間違いありませんが、その重要度や優先順位は大きく変わってきているのかもしれませんし、自分たちが評価しようとするもののバイアスに自覚的である必要性を感じています。もっと多くの人が多様なものの見方をしていけるようになっていけると良いなと思います。

また、私がこの放送を通じて、「一度人的資本経営というメガネをかけてみて物事を見てほしい」という表現を繰り返ししていますが、今回の第4回目の対話を通じて、これまで私が見えていなかった重要なものが1つ見えてきました。

それが「アウトカムを生み出すのは情緒性の方ではないか」という点です。

放送でシゲさんがいっていますが、アウトプットというのは成果物(作家であれば書いた文章、作品)を、アウトカムというのは、そこから生み出される影響(作品を通じて届く感動や行動)と考えることができます。

その際、人に影響をもたらすのは論理よりも情緒の方であり、人的資本経営においても重要になってくる社会でいかに人に良い影響を生み出していくかという点で考えるとこれからは情緒性がとても重要になってくるのではないかという点です。

2つ目

そして、もう一つが、人と関わっていく中で、その人の強みとなっていきそうな部分、ここから価値が膨らんでいくかもしれないなと感じた部分については、率先してフィードバックをしてもらいたいという点です。

今回の放送の別の回でも、「いかに適切にフィードバックやフィードフォワードを行っていくかが大事」という話をしていますが、ここにこそ、人的資本を継続して膨らませていく最大の鍵があるように思います。

「○○さんのこういうところ、ほんとすごいですよね」
「私には、そんなやり方はできないなと思います」
「○○さん、こういうの向いているんじゃないですか」

といった言葉を受け取ることで、自分、こんな方向でがんばっていったら良いんだなというのが見えてくるのではないかと思います。

現状、学校空間では、こういうやりとりがたくさん行われている環境もあるだろうとは思いますが、まだまだ自信を持つには、不十分なところが多いのではないかと想像します。

学校の先生だけではなかなかできない部分もあるだろうと思いますので、近所の子供と接する機会があった時などには、ぜひそんなことを意識していただけたらと思いました。

以上、ぜひこの放送を聞いてみていただいた上で、子供でも大人でも、ビジネスにおいても、それ以外の領域においても、人の持っている力やそこから生み出せる価値をどうやったら大きくしていくことができうるのか、という点についてぜひ考えてみていただけたらと思っています。

今日も素晴らしい学びの機会をどうもありがとうございました。

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