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【エッセイ】永遠エトセトラ

ふと、永遠とはなんだろうと考えることがある。

永遠で最初に思い出す作品は、映画『気狂いピエロ』のラストだ。
ランボーの詩『永遠』が静かな波の音とともに流れる。

あの空と海の色合いに、ぽつりぽつりと読まれる詩が重なったとき感じる抑揚なき温度が心地好い。DVDとVHSでは翻訳が違うようで、個人的に「!」が入ってないほうが合っていると思う。

もうひとつ思い出す作品があって、わたしはこっちの表現のほうがしっくりくる。2022年に完結した全4巻の漫画で、年に何度か読み返している。

その漫画では、主人公の家に訪れた人物が主人公にこう語りかけている。

何世代も歩いた廊下も
時代遅れな食器も
シールの跡や
画鋲の穴や 柱の匂いも
庭の木にも
至るところに永遠が宿ってる


毎回このシーンに差し掛かると胸がきゅうっとして、強い郷愁を覚える。
前後の台詞や情景もとても美しい。

自身の体験では、数年前に行った海を思い出す。
日が沈みきる前、夜が少し顔をのぞかせたうす暗い中で、波の音だけがゆるやかに響いていた。歩くには暗いけれど、明かりを灯したくない時間。
あのときの静かな音はわたしにとって「永遠」をあらわす欠片になっている。


思うに永遠とは、生きている中で存在しないとわかったうえで、それでも続いてほしいと願う静かな時間や想いを指すのではないだろうか。

永遠を感じられる瞬間を、少しでも、なにか拵えられたらと思います。





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