清見 苳子
宮沢賢治の詩を朗読しました。
あわくにおうはなびらの白に すっ と赤いすじがのび それはふたつにわかれ 細くさらに細くへと入り組み たちまち はなびらのふくらみを覆う 血管のように 白い肌を侵食し 透けて 滲んで 痛みさえ感じるのだ そうして 用心深く 誘うように 花の中心を隠す ああ 雨があがる 空には垂直の雲 燕がひくく旋回する
静けさが 流れてくる 川のカーブに沿って そうして 橋のケーブルをぬらし 蟻の触角をぬらし 柘榴をぬらし 水の表面をぬらす まだ 夢の中だから わたしは紅い布をまとって あの人に会いにゆける
たしかなものは 光と音 明日噴火する火山 やまない雨 終日寝ころびながら 古の書物と格闘し たどりついた私の考えなど 何になろう だが 生きていれば 腹もへるし 子どもたちはアイスが食べたいと言う よしよし 土砂降りの中 わたしは濁流を超え 夕飯の買い出しに出かける うれしいのだ 今日得た新しい知識と その線上につながっている自分の存在とが
火と 水と するどく光る刃物をあやつり わたしは二人の息子を育ててきた 今 わたしの両側に立ち 兄は煮えたぎる鍋に肉を放り 弟は胡瓜をうすくスライスする こまかな雨のしずかな夜 台所にはひとつあかりが点いて とうにわたしの背を超えた二人の会話は 知らない単語や情報でいっぱいだ アボカドの種をまるくくりぬきながら わたしは黙ってそれを聞いている たぶん わたしが育ててきた というのは間違いで 魔法か それに似たふしぎな力 ふと 気がつけば こどもは大人へと さらり 変化する
ユリにつぼみがつくと、花が咲くときが待ち遠しくなります。 花が咲く、その瞬間を見てみたいと思っていますが、かなってはいません。 あのあでやかな花びらと匂いが、このつぼみのどこにおさまっているのか不思議です。
森に包まれ 鳥の声に耳をすます ティルルルル ツゥイツゥイ ピジューピジュー いくつかある鳴き声を組みあわせ 鳥は鳥の会話をしていることがわかる うつくしい歌のように しかし もっと切実で 鋭い 生きるための呼び交わし 木々に背すじをただし わたしはわたしのことばを考える おだやかに波うつ身体が 内側へとひらかれる 語りかけられた記憶 文字のむこうの見えない相手 耳の奥に蓄積されたたくさんのことば そのひとつを くちびるにのせ 空へとかえす きみに
じめじめとした天気が続くと、きのこが生えてきます。 通勤途中の大きな切り株に、たくさんのきのこが生えていました。 普段より、種類が多いようです。 食べられそうにはみえませんが、きのこを見つけるとなんだかうれしくなります。 いつまでも見ていたくなる、不思議な存在です。
朝起きて窓の外を見たら、雨が強く降っていました。 夜寝る前にベランダに出たら、やっぱり雨がぱらぱらと降っていました。 向こう岸がぼんやりとくもっています。 今日は一日中雨でした。 一日中部屋でのんびりと音楽を聴いたり、家事をしたりしていました。
蒸し暑いと、なにかさっぱりしたものが食べたくなります。 昼ごはんに、冷たいうーめんを食べました。 温麺と書いてうーめんと呼びます。 素麺と似ていますが、原料に油を使っていないので、食欲がないときでもさっぱりといただけます。
窓をあけると、むっとした湿気の多い空気。 梅雨らしい灰色の雲が空をうめつくしています。 少しでもさっぱりしたくて梅ジュースを飲みました。 甘くて酸っぱくて身体が生き返るようです。
次々と雲が湧いて、風に流れてゆきます。 午後の風が、欅の枝を大きくゆらしていました。 ブラインドが波打っています。 自転車に乗っていて、帽子をとばされました。
熟して色づいた梅の実が落ちていました。 あたり一面いい匂いがします。 もうすぐ梅雨に入ると予報がでていました。 梅の木の影が、もうずいぶんと濃くなってきています。
たとえちょっとしたことでも、ほめられて悪い気持ちにはならない。 たとえば、髪形を変えたとき、そのことに真っ先に気づいて 「雰囲気かわりましたね。とっても似合ってますよ」 と言われると 「ありがとう」 とにっこりと笑顔になってしまう。 仕事の成果や作品の出来に 「いいね」 「すごいね」 と言われると 「いえいえ、まだまだです」 なんて謙遜してしまうことも多いが、本当は素直に 「ありがとう、ほめてもらってうれしい」 と受け取ったほうがいいのかもしれない。 相手がお世辞や口先だ
暑い日が続くと、麦茶の出番です。 カフェインが入っていないので、夜も安心して飲むことができます。 煮だすタイプのものもありますが、わたしはお手軽に、麦茶ポットにパックをぽんと入れて、冷蔵庫で冷やして作っています。 麦茶の香ばしい味は、まだ子供だった頃の夏休みの記憶とつながって、懐かしい気持ちにさせてくれます。
終わりのない旋律のように 鳥は高く空につばさをひろげ かやの穂はあらゆる風の方角へとゆれる 表面の光はこまかな散乱と集合 土手の上から同じ流れをながめていても 私の見る世界とあなたの見る世界とは へだたり そして重なり また離れながらゆらぎあって 私は あなたの横顔の輪郭をしっかりと目に記憶する ともに在ることのよろこびには いつも別れの影がうっすらとつきまとってきた 途切れた旋律のあとにひろがる静寂を わたしはひとり歩くのか かすれてゆく記憶をくりかえしよみがえらせな
この暑さにたえきれず、とうとう髪を短く切りました。 襟足をさっぱりと短くしたので、首すじに風が吹くと、とても気持ちがいいのです。 毎年この時期には、中途半端な髪の長さがうっとうしくなって、発作的に髪を短くしてしまいます。 でも職場の人に、新しい髪形をほめられて、とてもうれしかったです。