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『Hanu-Man』

監督:Prasanth VarmaProduced
出演:Teja Sajja、Amritha Aiyer、Varalaxmi Sarathkumar、Vinay Rai など
2024/1/12公開のテルグ映画

インドで話題沸騰中の本作。
チケット予約サイトでは、38万件以上のレビューで10点満点中9.5という高評価を獲得している。

満を持して観てきたが、率直に言うと、名作とB級の紙一重みたいな映画だった。
タイトルの通り、この映画はインド神話に登場するハヌマーンがモチーフになっており、途中でランカ島のヴィビーシャナも登場するといったように、インド神話の現代的解釈という側面が強かった。
だから、古代からの神話に精通したインド人には熱狂的に受け入れられているのだと思う。
しかし映画単体で見ると、そこまで面白いものではなかった。

ヴィビーシャナ

ざっくりとしたあらすじ
スパイダーマンやスーパーマンに憧れるサイコパス少年マイケルは、バットマンが幼いころに両親を亡くしているという理由だけで、自らの両親を焼き殺す。そのままおじさんになった彼は、幼馴染の科学者シリと手を組んで、特殊兵器で悪を成敗する日々を送っている。マイケルはもっと強大な力が欲しいと思っているが、シリはそれにためらいを見せる。
一方、バスも通らないほど山奥にある小さな村。ハヌマーン信仰が残るこの村では、残虐で腕っぷしの強いガジャパティが王として恐怖政治を敷いていた。ある時、ガジャパティに抗議したミナークシが、ガジャパティが送った刺客に襲われるという事件が起きる。幼いころから密かに彼女を慕っていたハヌマントゥは、彼女の危機を察すると一人で暴漢に立ち向かうが、返り討ちにされて崖から川に投げ込まれる。瀕死のハヌマントゥだったが、川底で赤く輝く宝玉を手に入れて、何とか一命をとりとめる。その玉は、太陽が出ている間はハヌマーンの怪力が宿るという不思議な宝玉だった。ハヌマーンの加護を得たハヌマントゥはガジャパティを倒し、村に平和が訪れるが、不思議なパワーをもつ青年の噂を聞きつけたマイケルが最新兵器を伴って村にやって来る。
そして、不思議な宝玉を奪おうとするサイコパススーパーヒーロー・マイケル VS 村の平和を守ろうとする猿神ハヌマントゥのバトルが繰り広げられる!

映画全体にB級感が漂っていた理由は、主に以下の2つ。
・CGやアニメーションがチープ。
・登場人物の言動の動機が分かりづらく、ストーリー展開が雑。

だから、映画というより神話として楽しんだ方が良いのかなという感じ。

アメコミのヒーロー対インド神話のヒーローという構図は面白かった。
うがった見方かもしれないが、既存の大国に挑戦するインドという現代社会の構図がそのまま反映されているようにも思えた。
そして、インドのスーパーヒーローが新しく作られたものではなく、古代の神話がモチーフになっているところも、長く豊かな歴史を持つインドのプライドが垣間見えた気がする。

この作品に限らないが、インドのアクション映画は神話や宗教がモチーフになっているものが多い。
それだけ国民が神話に慣れ親しんでいるわけで、何千年も前に語られた物語が今なお受け継がれているのはすごい。
同様に日本も、豊かな物語を含む神話がたくさんあるわけで、戦後の教育改革以来タブー視されているのかもしれないけれど、何らかの形で『古事記』や『日本書紀』の世界を国民が共有できたらいいと思う。
そうすれば日本の創作物も、日本らしい奥行きが増すような気がする。

マイケルを打ち負かしたハヌマントゥが、ハヌマーンの力を本格的に操れるようになり、ヒマラヤの雪山に封印されていたハヌマーンが眠りから目覚めるところで『Hanu-Man』は幕を閉じた。
本作はすでに、2025年に続編『Jai Hanu-Man』が公開されることが明らかになっている。

さらに本作は、PVCU(Prasanth Varma Cinematic Universe)の第1作目という位置づけになっている。
監督は今後、ヒンドゥー神話をベースにしたヒーロー作品のユニバース化を狙っているらしい。

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