見出し画像

真夏の読み鉄②松山〜宇和島|再訪・双海のおばあちゃんち 

読み鉄旅のつづき。 

9:52、松山を出発

2日目は、宇和島を目指す。
今回はお天気があまりにも良いこともあり、内陸部を走る内子線経路でなく、海岸線を走る「愛ある伊予灘線」を選択。日本屈指の美しい車窓風景が視界の端に映る読書は至高の時間である。

美しい伊予灘の景色が窓いっぱいに広がる。車両のシートとのコントラストがよい。

この路線は普通列車の本数も少なく難易度が高いので、そのまま乗りっぱなしで直行し、早めに到着して宇和島どっぷり満喫プランを予定していた。

だが、下灘駅の1駅手前、列車すれ違い待ち停車中の伊予上灘駅で、私の心にある異変が。

降りたい…
急激に途中下車したくなったのだ。
いやでも!ここで降りてしまうと全ての予定が狂う…いや待てよ…次の宇和島行きの列車は…いやいや…!

はい、降りた。

後先をごちゃごちゃ考えまくる頭のまま、ええい!と駅に降り立った。

10:33、伊予上灘駅で途中下車

伊予上灘駅で、私がそんな衝動に駆られたのにはわけがある。
駅前喫茶の「ポパイ」の様子が気になったのだ。

駅から徒歩10秒

ポパイは、田舎のおばあちゃんの営む商店の2階部分を喫茶店兼ゲストハウスに生まれ変わらせ、双海の地域を盛り上げる!という思いで、お孫さんである若い女性が経営するお店だ。

私は2年前の同時期、立ち上げ時のクラウドファンディングの寄付の返礼として、宿の宿泊券をもらったことをきっかけに訪れた。

以来、この街も、この海も、このお店のことも大好きになったのだった。
そして2年が経過した今、無性にふらりと立ち寄りたくなり、衝動的途中下車に至り、そして不審なミステリーショッパーのように入店してしまった。

開店直後から次々とお客さんが入店し、地元の家族連れっぽい人々も多く訪れ、2年前以上に活気が溢れていた。

いりこだしの中華そば600円。
この味!この味に再会したかったんだ!
双海のみかんジュースとミニパフェ(+550円)

ちょうど読んでいる本の中でも、こんな一節があった。書店主のヨンジュは考える。

最近彼女は「書店が根を下ろすというのはどういう意味か」を考えることに没頭していた。答えが浮かばないので、いつものようにインターネット辞典で「根を下ろす」の意味を調べてみると、だいたいこう理解すればいいらしかった。「ある空間に定着し、生活が安定する」生活が安定する、か。

ようこそ、ヒュナム洞書店へ_p.188

ポパイはこの2年の間にも、着実に一歩ずつ根を下ろしてきたんだろう。

続けてくれて、ありがとうございます。

店主さんにそんな言葉を掛けたかったけれど、なんだか忙しそうだったので、自分の口の中だけでモゴモゴ囁いて駅のホームに戻って行った。

衝動的途中下車、大正解。
私は、私の心に従ったことをちょっとだけ褒めた。

14:19、八幡浜にて乗り換え

八幡浜までは普通列車も結構本数があるが、八幡浜から先に行くとなると、急に難易度が上がるのだ。
そのため、少々予定を変更し、課金して特急列車「宇和海」に乗り換え。

ここまでありがとね普通列車

14:45、宇和島に到着

あっという間に、長年憧れ倒した宇和島に到着した。
早速、宇和島城へレッツ登城。
これで私が訪れた現存天守は9つめ。
藤堂高虎が築城に携わった城は、今治城、大須城、伊賀上野城、篠山城に続き6つめだ。

壁や瓦の質感がさすがの現存天守

現在の天守は、1601年に藤堂高虎が築城したものを、徳川の世に入ってから伊達氏が大幅に改修したものだ。

天守は平和な時代に改修されただけあって、一応防御機能などはあるものの、きちんと玄関もあって、いらっしゃいませ感が漂う。

天守内に小学生の自由研究のパネル展示があり、その考察に「この城は戦うためというよりは、城主がほっとするためのものなんじゃないかと考えた」という記述があり、非常に鋭い!と思った。

だが、外郭は高虎時代のものが受け継がれており、地理の活かし方や縄張はゴリゴリに戦闘を見据えて考え抜かれたものである。

わずか数十年の間に、「戦闘の世」から「太平の世」へ。そんな急激な価値観の変遷を垣間見た気がした。

宇和島の商店街は盆休みで全店シャッター。
また日常的な宇和島も訪れて、ここに住む人たちの営みも感じてみたい。

まだ読み鉄旅は続く…

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?