見出し画像

閉鎖病棟

大学の構内でフラフラしているところを清掃員のおばちゃんに発見され、医務室へ連れて来られた。大量服薬したことを告げると、病院へ直行。
病院で診察を受けたが、何を話したか覚えていない。
気がつくとベッドに横になっていて腕には拘束具が。
用を足すにはおまる。食事は片方の腕の拘束具を外されて。利き手でない左腕で食事をしたことも。
拘束具が外れる頃になってもここがどこかは把握できていなかった。実験室に入れられているぐらいに思っていた。自分は半分ロボットだと信じ込んでいた。
喫煙室があり、始めたばかりのタバコを吸って過ごした。
周りの人たちともコミュニケーションが取れるようになると、タバコ同士をくっつけて火をつけるのが嬉しかった。
なぜか何人かの人たちの悩み相談にのっていた。
毎日古い漫画雑誌のゆうこりんのグラビアを見て元気を出していた。
卓球にも励んだ。今何対何か点数が分からず頭が混乱した。
頭には3人の人格があった。
何か判断するときは目が上転すると許可される具合だった。
売店に買い物に行ったり、図書室に行く日程が決まっていた。漫画を借りていた。
ある時自分の言う通りにならないと暴れた。
お仕置きに尿道に管を入れられて、それが激痛だった。
白い巨塔で描かれていた教授回診もあった。何人もの白衣を着た人たちが行き交いざわざわとしていると教授が現れ一言二言訊ねるのだった。
音楽に救われてもいた。その頃はMDと焼いたCD-Rで音楽を聴いていた。ある時洋楽のミュージシャンに生で話しかけられて感動して泣いた。
ただのボーナストラックだと知るのは随分後だ。
初めて彼女ができた。
検査入院に来ていた荕ジストロフィーの女の子。
強引に彼女になってあげると宣言された。
のちに文通相手になった。電話でも話した。よく泣く子だった。
彼女ができたと同時に閉鎖病棟から出られた。
ここが病院で精神科であることを知ったのもその彼女の発言だった。
買い物、図書館に行った帰りにも精神科である看板が隠されていたので驚いた。
医師から病名を告げられても何も分からなかった。
なぜ大学構内で発見されたかというと、大量服薬から目覚めて、こんなときにも図書館に本返さないと思って、フラフラしながら大学へ行ったから。
この行動がなければ今はないかもと。
なんとも不思議な体験。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?