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祝・コメディ出身、オリヴィア・コールマンがアカデミー賞受賞

イギリスの女優、オリヴィア・コールマンが「女王陛下のお気に入り」のアン女王役でアカデミー賞。日本で公開当日に観るほどのオリヴィアファンである私も驚いた。自分でもびっくりしたらしく、受賞のステージでは「私がオスカー取っちゃった。笑える」と語り、「天才作家の妻」で七回目のノミネート、大本命と見られていたグレン・クローズを気遣うコメントも。

イギリスの映画やテレビでは、メジャーな俳優をありとあらゆる作品で見かける気がする。その点ではハリウッドより日本や韓国に近いかもしれない。オリヴィアも少し前からそういう状態で、ネットフリックスの人気ドラマ「ザ・クラウン」の現在制作中の新シーズンに、主役エリザベス女王で登場予定だ。

ビル・マーレイがフランクリン・ルーズベルトを演じた映画「私が愛した大統領」には、オリヴィアはエリザベス女王の母、エリザベス皇太后の王妃時代の役で出ていた。夫のジョージ六世とともに戦時の支援をとりつけるため訪米するのだが、「アメリカ人てよくわからない」と言わんばかりの不愉快でこころもとない表情が印象に残った。

女王(王妃)役をこなす女優としてはケイト・ブランシェットが思い浮かぶが、前の当たり役が刑事ものだったこともあるし、女優というより役者魂を感じるオリヴィアはヘレン・ミレンのタイプではないかと思う。

はじめにおやっと思ったのは「マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙」でメリル・ストリープ様演じるサッチャー首相の娘役。メリルに引けを取らない存在感と、母親を大事に思いながらも自分のエゴが隠せない、なんとも言えないおかしみのある演技だった。

ケネス・ブラナー版「オリエント急行の殺人」ではジュディ・デンチの伯爵夫人のメイド、ヒルデガード。物静かで地味だが、もちろん心に秘めたものがある女性を演じた。

しかし彼女のすごさを思い知らされたのは名作との誉れ高いドラマ「ブロードチャーチ - 殺意の町」。閉鎖的な田舎町の事件を、都市から来た切れ者らしい刑事と組んで捜査する地元の女性刑事をやっていたのがオリヴィア。初めは、デビッド・テナント演じるよそもの刑事がカッコいいのと対照的な、昔、市原悦子がやっていた「おばさんデカ」的な役割かと思っていたらとんでもない、タフでいて繊細な、複雑な女性の役だった。

私はこのドラマ、WOWOWでやっていたのを録画して観たのだが、何回めかのエピソードを早送りしていて、オリヴィア演じるエリー・ミラー刑事が子供に「○○が犯人なの」と語る場面でうっかり止めてしまい、人生で最も悔やまれる自ら招いたネタバレ。だったのだが、そのときの彼女の演技の素晴らしさに泣いてしまった。

このドラマはアメリカでも「グレースポイント」としてリメークされた。主演のデビッド・テナントは再び主人公のよそもの刑事役だったらしいが、女性刑事役はその当時、「ブレイキング・バッド」の妻役で名を上げていたアナ・ガン。オフリヴィアはたしかにハリウッド的にきらびやかな女優ではないが、私は彼女を使わなかったこのドラマをボイコットするとひそかに誓った。アメリカで「グレースポイント」が話題になったとは聞いていない。

それはともかく、オリヴィアはもともとコメディの人。私は見たことがないが大人気シットコム「ピープ・ショー ボクたち妄想族」に出て有名になったらしい。

最近では最初のシーズンから2年半もたってようやく待望の新シーズン制作が発表になった「フリーバッグ」にもチラチラとイヤーな役で出ていた。新シーズンにも出るのだろうか。大スターなのに出演しているドラマ、映画の数がただ事ではない。

オスカー受賞作「女王陛下のお気に入り」の演技は、体当たりのリアルな熱演だったのは間違いない。でも、映画そのものの味もあって、オリヴィアにしては派手な演技でユーモアに欠ける気がして、私としては彼女の最高作とは思わなかった。というより、七度目の正直でグレン・クローズに取ってほしかっただけかもしれないが。

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