マガジンのカバー画像

小説

51
創作したもの
運営しているクリエイター

#短編

死ぬまでに何度もこの夜をなぞる。|短編小説

ちぎれる光もしたたる翳も逃したくない。簡単に通り過ぎる今ここに、きちんと眼を凝らしたかっ…

52

Quarter Life Crisis|短編小説

 孤独が優しく滲んだ。 あゝ、今日からひとりなんだ。 そう思うと、孤独を不幸にしてはいけ…

Feel Blue|短編小説

 ひどく静かな夜だった。それは、しじまとはすこし違い、ナーバスな聴覚と視覚が生み出す静か…

ドライブインなみま|小説 プリン編

だいたい甘くてやわらかいものは、すぐに口の中から溶けてなくなるから信用ならない。アイスク…

こんにちは、たまご|短編小説

ガラス戸に映った自分の顔を見た。額、眉毛、目、鼻、頬、口。なんの変哲もない毎日見慣れた顔…

透き通る月|短編小説

 死のうと思った。今どき心中だなんて笑ってしまいそうだけれど、私はこの人と──伊月さんと…

さようなら、バナナ|短編小説

黄色い願望は僕の心を乱暴に鷲掴み、握り潰そうとする。 「どうして来るの!」 姉ちゃんは路地裏に出て来るなり、真紅のくちびるを歪ませて僕に投げつけるように呟いた。その煌びやかな手にはハイブランドの財布と携帯とバナナのイラストが描かれたチープなポーチを持っていて、そのアンバランスさが妙に姉ちゃんらしくて良い。僕は姉ちゃんから目を逸らしながら、 「だって…姉ちゃんがお金置き忘れてるから…。」 と、低温で頼りなく呟くと、 「え?あ!そうだった!?ごめんごめん、コレ今日のご飯

琥珀色に黄色を落として|ショートショート

黄色い香りは征服感に満ちているから、私は咳払いをしてそれを掻き消そうとしたのに、それは一…

シズクのこころ|掌編小説

駅の南口へ向かって黒服たちがヌーの大群のようにザクザクと行進していく。 その大群は、僕の…

バナナと林檎と黄桃に、あとは魔法|掌編小説

倦怠感が纏わり付く体を乗せた自転車は止まった。 道路工事中 この先、舗装補修工事につ…

ナニモノでもない鳥たち|掌編小説

「最近さあ、ハヤってんの?"ナニモノかになりたい"ってやつ。」 遥は病院の屋上の高いフェ…

手の中で燃え尽きた|掌編小説

降水確率が50%の空を見上げながら、ワイシャツの第一ボタンを外して、ネクタイを軽く緩めた。…