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のらねこ日記 ㊹

お嬢さまのネコ

  私が大学生の時、違う科に、『お嬢さま』がいました。
  流行りのファッションではなく、ベーシックな、スーツやワンピースを着ていて、ショートヘアにベレー帽と、他の女子とは、一線を画した佇まいでした。
  なんで、私が彼女と話すようになったのか、全く覚えていないのですが、
彼女は、某有名女子校出身で、お父様が外国航路の船長さん(たぶん客船)と聞き、『ひみつのアッコちゃんのお父さんも船長さんだったなぁ。まんま、少女マンガ設定だ』などと思ったものです。
  彼女の家にも、猫さんがいるようで、時々会話の中に出てきました。どうやら、ペルシャかなにかの長毛種らしく、『やっぱりお嬢さまのお家には、ペルシャ猫よね』と勝手に想像していました。
  ある夏の日、お嬢さまが言いました。
「最近、暑いからうちの猫、すっかり食欲をなくしていて、かわいそうだからと、母がヒラメのお刺身を与えたら、すっかり気に入っちゃって、それしか食べなくなってしまったの」
  ヒラメのお刺身など食べたことのない私は思わず『ミー太郎は、煮干しでも喜んでいたなぁ』と、遠い目をしてしまいました。

  ちなみに、うち第二世代ニャンコのケイちゃん、ポン太、ミミコは、キャットフードだけで、人の食べ物は、与えていなかったので、人の食べ物を欲しがったり、盗み食いは、ほとんどなかったのですが、一点だけ、ポン太さんをトリコにしたものがありました。
  それは、毛がに。
  毛がにを切ってお皿に盛り、ラップをかけておいてたら、気がつくとラップがめくれて、毛がにの足が床に落ちていました。その近くには、ポン太さんが鼻をフンフンさせながら座っていました。
  美味しそうな匂いなのに、毛がにの
トゲトゲに手も足も出ないポン太さんでした。
  そして、かに大好きの母は、
「猫には、もったいない!」と、ポン太さんにかにを与えることはありませんでした。

手も足も出ません



 


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