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【連載】独裁者の統治する海辺の町にて

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過疎の漁師町がある政治結社組織に統治された。否応なく組織に組み込まれた中橋康雄は少女凛子と組んで親友の神学者登坂士郎を殺害する。組織の統治支配の恐怖のなかで康雄と凛子はどうなるの…
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#独裁者

独裁者の統治する海辺の町にて(11)

独裁者の統治する海辺の町にて(11)

太田清吾は反町長派のリーダー的存在だった。といってもその派閥は3人だけだ。そいつらも太田が殺されると、競って町長派になった。
「いやらしいおじさんだったわ」
太田は自邸の寝室のベッドで裸のまま仰向けで死んでいた。絨毯にはワイングラスが横たわり、こいつも血を流していた。
「聞く?」凛子はあどけない仕草で誘った。おれは無視して、先を急いだ。
「それから門倉か?」
「だーれ、それ」
「津守岳(つもりだけ

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独裁者の統治する海辺の町にて(10)

独裁者の統治する海辺の町にて(10)

「止めて!」
例の倉庫にむかって湾岸を走っているとき、後ろから凛子が叫んだ。
バイクを止めると、あいつは後部座席からコンクリートの防護柵に飛び移り、そのまま浜辺に降り、海の方へ駆けていった。
おれは慌てて後を追った。
月の光が海の中のあいつを浮かび上がらせた。
砂浜に着衣が脱ぎ捨てられていた。
「風邪引くぞ」 おれは戻ってきた凛子に言った。
「はじまった」 あいつは悔しそうに言った。
おれは、とま

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独裁者の統治する海辺の町にて(9)

独裁者の統治する海辺の町にて(9)

時間になったので、おれは倉庫前で待っていた凛子をひろった。
バイクの叩きつけるような音が夜の湾岸道路に響く。
「康雄にぃ、・・・・・・・」
後ろからおれの腹に腕を回していた凛子が何か言った。
「なんだ」 おれは問い返したが聞こえるはずがない。
「ねぇ、ねぇってば」
あいつは、腕に力を入れて身体を密着させた。
堅さのまだ残る胸の膨らみが背中を圧し、
くすぐるような快楽がおれを襲った。
今から人殺しを

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独裁者の統治する海辺の町にて(8)

独裁者の統治する海辺の町にて(8)

凛子に会ったのは2年ぶりだった。
おれはこの町に戻ったその日の夜に士郎の家に行った。父の死に関する情報と母の状況を聞くためである。その頃は凛子はすでに、組織の養成所に入っていたがその日はたまたま土曜で帰宅日だった。

「どうだい」九鬼は無表情に言った。
「なにがです」おれは、はぐらかした。
「変わっただろう」
細身の身体はそのままだが、その肢体にはしなやかな妖艶さが漂っていた。
「背が伸びましたね

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