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【連載】独裁者の統治する海辺の町にて

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過疎の漁師町がある政治結社組織に統治された。否応なく組織に組み込まれた中橋康雄は少女凛子と組んで親友の神学者登坂士郎を殺害する。組織の統治支配の恐怖のなかで康雄と凛子はどうなるの…
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2023年8月の記事一覧

独裁者の統治する海辺の町にて(19)

独裁者の統治する海辺の町にて(19)

おれが部屋に入ったことにも気づかず士郎は双眼鏡で海を見ていた。窓際の簡易机にはノートが開いている。
「洋上監視員にでもなるつもりか」
士郎はノート閉じると振り返った。
「来てたのか?」
「10分前からここに立っている」
「すまんな」
「ここからはよく見えただろうな」
「知ってるようだな」
「情報としてはな」
「二日の午前4時20分に沖の方へ曳いていったよ。7艘だった」
「誰にも言ってないよな」

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